おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

子どものうちから知っておきたいSNS情報リテラシー 未来の自分のために

 小学生向けのSNS情報リテラシー講座がとある小学校で、6年生向けに行われました。保護者参加も可能であったこの授業を見てきたという人が、その内容についてツイッターで発信、ネットユーザーたちに考えさせられると話題になっています。

  •  「小学校に6年生向けSNS情報リテラシーの授業を見てきた。実際のトラブル事例も盛り込んだ結構ガチな授業だった。『会社の人事採用の人は検索しますよ。迷惑行為のある人採用すると思いますか?』締めの『未来の自分を泣かさないで』という言葉は心に残った」というツイートを投稿したのは、小学生の親である、みるみる3世さん。そのツイートを皮切りに、数ツイートにわたって授業の風景をツイートしていますが、特に心に引っ掛かったのがこのツイート。

     「講師の先生『ネットをするな、という授業ではありません。ネットは包丁と同じです。うまく使えばとても有益です。世界も広がります。使い方を間違えると傷つけたり傷ついたりします。命にかかわる事も起こるかもしれません。なるべくポジティブな言葉を使って、楽しくやりましょう!』」

     この授業は、和歌山市立少年センターの「情報モラル教室」が市内の小~高校の生徒や保護者、子ども会などを対象に行っている活動のひとつ。とある小学校で行われたこの教室は、保護者も自由参観できるもので、保護者からも評判も良かったのだそう。

     そしてこのツイートを見た人たちからは、「これ年齢問わず最低一度は必修で受けるべき内容」「小学生だろうと前提条件満たしたらまず致命傷まで殴り倒すのが今も昔もネットだからなあ、これまじ大事」「小3ぐらいかなせなあかんわな~」「こういう講座はネットネイティブではない中高年世代こそ受けておくべきではなかろうか」といった意見が続々と集まり、関心の高さが伺えます。

     インターネット社会はこの20年くらいの間に、飛躍的に変化していきました。一部のパソコンユーザーが使うにとどまっていたパソコン通信が、今や誰でも気軽にアクセスできるインターネットへと進化。そして個人発信も、掲示板~ブログ~SNSと変化していき、利用者も小学校低学年から使い始めているといった例も増え、低年齢化しています。

     しかし、デジタルに興味のない大人たちがデジタルネイティブな子どもたちに対して、その知識が追い付いていないがゆえに指導や対策が取れていないのが実情。今の大人でも、子ども時代に家庭用ゲーム機やホビーパソコンが普及し始めたときには、その上の親世代からあまりいい顔をされなかったのと同じようなことが繰り返されているようです。

     ゲーム機を通してみんなでワイワイとゲームを楽しんで友達との友好を深めたり、反対にソフト欲しさに犯罪行為に走る人も出たり。今のSNS社会でも同じようなことが言えましょう。

     SNSを通じて、同じ環境や境遇の子たちとつながることによって自分の居場所を得られるというのは、仮想空間内でも自分の存在を認めてくれる場所として時には必要になります。しかし、インターネットという空間は一度発信して問題とみなされたり話題になったりすると、その記録は複数の場所に保存され、いつまでも残り続けます。

     デジタルタトゥーという言葉がありますが、いわゆる問題行為や問題発言で「炎上」状態となったときは、たとえ匿名でも、発言者の住所や氏名など、個人情報を特定されてしまいます。そして、その問題行為と個人情報が結び付けられた形で、まるで消えないタトゥーのごとく、ネット上にずっと残り続けます。ネット上において、「匿名」という言葉は完全な匿名ではなく、容易に個人を特定できる、「ただの仮の名前」に過ぎないのです。

     先のツイートの話の中で、「会社の人事採用の人は検索しますよ。迷惑行為のある人採用すると思いますか?」「未来の自分を泣かさないで」という言葉は、ここにかかってくるのです。面白半分でふざけたつもりの動画が、社会的な批判を浴びて個人を特定され、警察沙汰にもなり、会社としての信用をも落とす……。

     小学生にはまだピンと来ない言葉かもしれません。しかし、中学生や高校生にもなると、将来の事について具体的に考え始める時期になってくる子も多いです。そんなころに、ついでき心で犯罪まがいのふざけを全世界に公開してしまうということは、その将来を潰すことにもつながりかねないのです。

     また、SNS上で自宅付近の写真や動画を投稿した結果、投稿者個人の特定につながり、いじめや嫌がらせの対象となったり、子どもを狙った犯罪のターゲットにもつながっていきます。子どものSNS使用で一番危険なのは、個人の特定から犯罪に巻き込まれる可能性が高くなることです。

     時々、中高年と思われるアカウントが問題発言を起こしてツイッターで物議をかもすこともあります。なかには、攻撃的な言葉ばかりをまき散らす人もいます。正当な批判・批評であれば、そこから建設的な議論につながることもあるでしょう。しかし、特定の人を誹謗中傷したり、自分の意見だけを押し付けるような発言は、ことを荒立て、権威ある人でもその権威や信用は失墜することもあるのです。

     一度崩してしまった信用は簡単には戻りません。顔の見えない仮想空間内だからこそ、お互いを思いやり、不用意な言葉を慎み、問題行為とみなされそうな悪ふざけを投稿しないように、充分注意して取り扱う必要があります。

     自分が問題の当事者にならないように、また、簡単に稼げるなどの誘惑にのって問題に巻き込まれることの無いように、全世代のネットユーザーが情報リテラシーに対して意識を高める必要があるでしょう。

    <記事化協力>
    みるみる3世さん(@Mirumiru1972)

    (梓川みいな)

    あわせて読みたい関連記事
  • フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造
    インターネット, 社会・物議

    フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウント…

  • 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み
    エンタメ, 芸能人

    松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み…

  • アカウント1の投稿
    インターネット, 社会・物議

    【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記…

  • アカウント1の投稿
    インターネット, 社会・物議

    【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記…

  • pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策
    インターネット, 社会・物議

    pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

  • 炎上をモチーフにした日本初の体験型展示イベント「炎上展」
    イベント・キャンペーン, 経済

    「バズりたいけど燃えたくない」 SNS世代必見「炎上展」、池袋で開催

  • チョコレートプラネットが炎上発言を謝罪 2人揃って頭を丸める
    エンタメ, 芸能人

    チョコレートプラネットが炎上発言を謝罪 2人揃って頭を丸める

  • 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった
    インターネット, おもしろ

    邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くな…

  • 起業家・岡崎雄一郎さん
    インターネット, 社会・物議

    短命に終わった「レンタル怖い人」 運営者・岡崎雄一郎さんに舞台裏を聞いた

  • お笑いコンビ・アインシュタインの稲田直樹さんの公式X
    インターネット, 社会・物議

    アインシュタイン稲田の“潔白”が証明された日 暴露文化とSNS拡散が残したもの

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分けが装置爆誕
    インターネット, おもしろ

    エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分け装置が爆誕

  • トピックス

    1. 派手なピンクに「マヂでアゲ」……道端に突如現れた「ギャルすぎる工事看板」が話題

      派手なピンクに「マヂでアゲ」……道端に突如現れた「ギャルすぎる工事看板」が話題

      「とても茨城県」というつぶやきとともに、Xに投稿された一枚の写真。そこには、一般的な工事現場のイメー…
    2. この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      学生時代、入りたくても入れない「聖域」のような場所だった職員室。その風景を再現し、自由に探索できる展…
    3. フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造

      フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造

      SNS上には今日も、「○○が当たる!」といったプレゼント告知があふれています。いまや日常の景色と言っ…

    編集部おすすめ

    1. 善意の通報が“誤報”に変わるAI時代 女川町のクマ騒動が示した危険性

      善意の通報が“誤報”に変わるAI時代 女川町のクマ騒動が示した危険性

      宮城県女川町が11月26日、公式Xで発信した「クマ出没情報」が、後に「生成AIによるフェイク画像」に基づく誤通報だったことが判明。通報者自身…
    2. エビの代わりに「パイの実」投入!ロッテ公式が送るエビチリアレンジに目を疑う

      エビの代わりに「パイの実」投入!ロッテ公式が送るエビチリアレンジに目を疑う

      ロッテは自社商品の各ブランドサイトで、アレンジレシピを公開しています。その中に「パイの実」をエビチリソースと卵で炒め合わせた「チリ玉パイの実…
    3. 100tハンマー

      伝説のコンビを追体験 40周年「シティーハンター大原画展」上野で12月28日まで開催

      「シティーハンター」連載開始40周年を記念した原画展「シティーハンター大原画展~FOREVER, CITY HUNTER!!~」が、11月2…
    4. 宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      11月22日午前、X(旧Twitter)のトレンドに「宙組公演特別メニュー」が一時浮上し、ファンの間で大きな話題となりました。きっかけとなっ…
    5. ミラノで開催「IQOS Curious X Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      ミラノで開催IQOS X SELETTI「Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      フィリップ モリスが、イタリアでイベント「Sensorium Worlds」を開催。今回は、この壮大なイベントの模様とともに「IQOS To…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト