アメリカ陸軍とノースロップ・グラマンは2019年8月29日(現地時間)、ペトリオットPAC-3迎撃ミサイルが巡航ミサイルの迎撃試験に成功したと発表しました。上空から飛来する弾道ミサイル迎撃用に設計されたPAC-3ですが、低い高度を水平に飛ぶ巡航ミサイルにも対応できることが証明されました。

 試験は、ニューメキシコ州ホワイトサンズのミサイル試験場で行われました。巡航ミサイル役は、同等の速度で飛行できる無人標的機(ターゲットドローン)が務めています。

 ドローンは巡航ミサイルの動きをシミュレートし、レーダー波の地面反射(グラウンド・クラッター)に紛れて探知されにくくするため、地形に合わせて低高度で飛行します。迎撃側は、陸軍航空ミサイル統合防衛戦闘コマンドシステム(IBCS)の指令センターを核にした部隊が、飛来するドローンを探知し、迎撃ミサイルとしてPAC-3を発射する、というシナリオです。

 探知するレーダーは、ペトリオット迎撃ミサイルのシステムに組み込まれているレーダーと、小型のAN/MPQ-64センチネル対空レーダーが2基。ペトリオット迎撃ミサイルのランチャー(発射機)は2基使用されています。



 これらレーダーとミサイルランチャーは、ICBSのシステム上で統合運用され、レーダーで探知された目標は、高度や速度などのデータをもとに3D画像として表示されます。オペレータは、より視覚的にわかりやすい形で目標を見ることができるのです。

 複数のレーダーで目標を捉えることで、レーダー波の地面反射の影響を排除し、飛来する目標を的確に捕捉した迎撃側は、PAC-3ミサイルを1発発射。見事に巡航ミサイルをシミュレートしたドローンを撃墜しました。

 IBCSの開発に携わっているノースロップ・グラマンのミサイル防衛システム部門ゼネラルマネージャー、ダン・バーウィール担当副社長は「今回の試験は、ネットワークで目標を捕捉するという次世代コンセプトを実現させる、IBCSの能力を示す重要なものです。試験成功は、IBCSの戦力化が近づいたというだけでなく、IBCSがより早い段階で迫り来る脅威を排除することが可能である、という優位性を含む、戦闘能力の変革を確信させるものです」とコメントしています。

 アメリカ陸軍のミサイル・宇宙プログラムで責任者を務めるロブ・ラスチ中将は「8月の試験は、IBCSがセンサーと火器管制が一体となって、脅威によるストレスを打ち破る重要な役割を担えることを証明したといえるでしょう。IBCS能力を付加されたペトリオット部隊は、現在習熟訓練中です。もうすぐ兵士たちは、来年(2020年)夏に予定されている運用試験と実射訓練に備え、それぞれの戦闘シミュレーションを通じてシステム運用を学ぶ段階に入ります」と、ICBSの戦力化が近いことを示唆しました。

 攻撃兵器の高度化に伴い、防衛する側もそれぞれが独立して対応するのではなく、ネットワーク化したシステムで対応することが求められます。高度にネットワーク化された防衛システムの構築が、これから重要になってきそうです。

<出典・引用>
ノースロップ・グラマン プレスリリース
Image:Northrop Grumman/U.S.Army

(咲村珠樹)