おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

アメリカ空軍が輸送機への攻撃能力付加を検討 試験は第4段階へ

 ロッキード・マーティンは2020年10月28日(現地時間)、アメリカ空軍が研究している輸送機への攻撃能力付加について、2500万ドル(約26億円)で新たな段階へ進める発注を受けたと発表しました。これは計画の第4段階にあたり、輸送機を使用しての地上攻撃をシステムレベルで検証するとしています。

  •  爆撃機は爆弾やミサイルを搭載して目標まで運び、戦闘機はミサイルや機関砲弾を搭載して飛行します。この面を見れば、軍用機は基本的にすべて「輸送機」といえ、アメリカ空軍の計画は通常の輸送機にも攻撃能力を持たせられないか、というものです。

     この発想は新しいものではなく、アメリカ空軍ではC-5A輸送機からICBMのミニットマンを空中発射する、という実験を1974年に行ったことがあります。この時はあくまでも実験だったのですが、空対地ミサイルの長射程化にともない、ふたたび輸送機に攻撃能力を付加する発想が現実味を帯びてきました。

     輸送機は、戦闘機や爆撃機より多くの搭載力を有するものの、速度や防御力は劣るのがウィークポイント。しかし、反撃を受けることのない遠距離からの攻撃であれば、そのウィークポイントも問題になりません。

     このため、有効射程の長いJASSM-ERのようなミサイルであれば、輸送機で大量に発射することが可能ではないか……との発想から立案されたのが「パレット式弾薬(Palletized Munitions)」と呼ばれるものです。


     この方式では、輸送用のパレットに複数のミサイルを装着して輸送機に搭載。通常の物量投下の要領で弾薬パレットを投下し、空中で発射させます。アメリカ空軍では、すでにMC-130JやC-17を使用し、模擬弾薬パレットの投下試験に成功しています。

     ロッキード・マーティンで、先進攻撃システムのディレクタを務めるスコット・キャラウェイ氏は「パレット式弾薬構想は比較的新しいものですが、計画は迅速に進んでいます。アメリカ空軍研究所の戦略開発試験局とロッキード・マーティンは、新しい予算案を30日という記録的な速さでまとめ上げました。この先進的な能力をいち早く実戦化するため、より素早い試作と日程短縮を図っていきます」とコメントしています。

     この計画の最終的なゴールは、通常の物量投下と同じようにミサイルを発射できる、モジュラー式のシステムを作り上げること。輸送機の乗員に新たな技術を習得させることなく、遠距離から大量の弾薬を目標に投射できるようにしたい、とのことです。

    <出典・引用>
    ロッキード・マーティン ニュースリリース
    Image:USAF/Lockheed Martin

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 弾道ミサイル対処訓練を行う護衛艦あたごの乗組員(画像:海上自衛隊)
    宇宙・航空

    弾道ミサイルに対処する日米共同訓練「レジリエント・シールド2023」

  • 航空自衛隊のC-130Hを敬礼で見送るサンタ(画像:USAF)
    宇宙・航空

    航空自衛隊C-130が参加 人道支援任務「クリスマス・ドロップ作戦」

  • 衛星通信アンテナを展開するアメリカ海兵隊員(画像:USMC)
    宇宙・航空

    アメリカ国防総省 極超音速兵器を探知する人工衛星網構築計画を明らかに

  • B61-12核爆弾の模擬弾を搭載したF-35A(画像:USAF)
    宇宙・航空

    アメリカ空軍F-35A 核爆弾投下試験を実施

  • カタール向けのF-15QA(Image:Boeing)
    宇宙・航空

    カタール向けF-15最新モデル「F-15QA」正式公開 パイロットの訓練も開始予…

  • スイス空軍の次期戦闘機に採用されたF-35A(Image:スイス連邦防衛・国民保護・スポーツ省)
    宇宙・航空

    スイス空軍次期戦闘機にF-35Aを36機調達 ペトリオット対空ミサイルも5セット…

  • ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられるGPS IIIの5号機(Image:SpaceX)
    宇宙・航空

    測位精度が3倍に向上 次世代GPS衛星「GPS III」5号機の打ち上げ成功

  • 「レッドフラッグ・アラスカ21-2」のブリーフィングに参加する航空自衛隊のパイロット(Image:USAF)
    宇宙・航空

    航空自衛隊F-15 日米共同訓練「レッドフラッグ・アラスカ」に参加

  • イスラエル空軍のF-35パイロット(Image:イスラエル空軍)
    宇宙・航空

    4か国のF-35が集合!イタリアで共同訓練「ファルコン・ストライク」実施中

  • パリ上空を飛ぶB-52とラファール(Image:フランス航空宇宙軍)
    宇宙・航空

    アメリカ空軍B-52 周回飛行「アライド・スカイ」でヨーロッパ諸国戦闘機と訓練実…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で
    エンタメ, 舞台

    宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

  • 「3色の鳥・ゆうちょバス 年金受取口座」篇
    エンタメ, 芸能人

    岡田将生さんが再び“謎の男性”に ゆうちょ銀行「ゆうちょバス」CM第2弾が放送へ…

  • 「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾
    アニメ/マンガ, 放送・配信

    「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT …

  • 宝塚宙組「PRINCE OF LEGEND」公演、25日の東京公演が急きょ中止
    エンタメ, 舞台

    宝塚宙組「PRINCE OF LEGEND」、25日の東京公演が急きょ中止

  • 住まいを選ぶ際の考慮
    社会, 経済

    「春と秋、こんなに短かったっけ?」約9割が実感する“二季化”と住まい選びに与える…

  • テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か
    インターネット, サービス・テクノロジー

    テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダ…

  • トピックス

    1. 絵柄がデフォでピンボケな……いつかやってくる未来に備える「老眼トランプ」が登場

      絵柄がデフォでピンボケな……いつかやってくる未来に備える「老眼トランプ」が登場

      どんな人間にもいつかはやってくる老眼。なんだか手元が見えづらいな……という状態を体験できるトランプが…
    2. 「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      人気アニメ「呪術廻戦」に酷似したスマホゲーム「特級呪術師」が配信され、SNSで物議を醸しました。公式…
    3. 「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      東映は12月25日、11月に発表していた新番組「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」について、202…

    編集部おすすめ

    1. 宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚歌劇団は12月26日、宙組が東京宝塚劇場で上演している公演について、主要な出演者の体調不良により公演の実施が困難な状況が続いているとして…
    2. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    3. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    4. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    5. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト