おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

ADHDのためのアプリ「ルーチンタイマー」 作ったのは「自分が困ってたから」

 発達障害について、少しずつテレビでも特集が組まれるなどして認知が進んでいっています。発達障害の中でも多い「ADHD」のためのスマホアプリが今、にわかに注目されています。今回は開発者に話を聞きました。

  • ■ すぐに気が散ってやらないといけないのにできないのがADHD……

     ADHDは、注意欠陥多動性障害の略称。その名の通り、注意力が平均的な人よりも散漫になりやすく、目についたもの、気になったことの方にすぐ気がそれてしまい本来やるべきことが果たせない状態。気がそれやすいために、あちこち動き回って落ち着かず、衝動的な行動が多いのがADHDの人の共通点です。

     ADHDの中でも、衝動性が特に高い、多動性が高い、衝動性も多動性もあまり強くはないが極度に注意力が散漫になりやすい、といったさまざまな特性がありますが、本来やるべきことを遂行するためには、この特性は大きな障壁となります。

     この特性を抱えている人は、遅刻をしやすい、片付けが極端に苦手、課題や提出物がうまく捗らずに遅れて提出する、あるいは提出しなくて済むような悪い回避行動(捨ててしまう、嘘をつくなど)にはしり勝ちです。そのため、周囲の環境に合わせた行動が苦痛となる人も多くいます。

    ■ ADHDを持つ人が欲しいのは、「声掛け」

     一日の生活は、時に分刻みの行動で構成されるところがあります。朝の支度や学校や職場から帰った後にするべき行動など、ライフサイクルによってそれぞれ変わってくるものの、平均的な人であればその分刻みの行動パターンを自分の中でルーチン化し、時計を見ながら行動することができます。

     しかし、ADHDがあると、朝起きて顔を洗う前に目の前のスマホに目が行き、そのままベッドから出ることができずに朝の支度が遅れる、食事の時にテレビがついていたらそのまま時間を忘れて見入ってしまう、といったことで社会生活に支障をきたすことになります。

     その「脇道にそれてしまう」状態に効果的なのが、時間ごとにやるべきことを声掛けしてもらうこと。「ルーチンタイマー」は、ADHD当事者が設計、デザインをしています。

    ■ ADHDと気づいてからアプリを手掛けるにいたるまで

     このアプリを企画・デザイン・グロースしているのは、自身がADHDの当事者であるNanaさん。Nanaさんは、寝坊をしたわけでもないのになぜかいつも遅刻をしてしまう、という状態が小学校から大学までの間、ずっと続いていました。朝の支度のルーチン作業がなかなかうまくいかず、毎朝慌ててダッシュで登校するという状態が続くことは、Nanaさんにとっての大きな困りごと。

     支度をしようと行動し始めても、他のことに気がそれてしまい、結局バタバタと家を飛び出してしまうという生活がずっと続いていました。Nanaさんは大学在学中にADHDと診断され、そこで同じような生きづらさを抱えている人たちと出会い、生き辛さを共有したのでした。

     大学生当時のNanaさんは、アプリやWebサービスの開発に興味を持っていました。「ITで日常のこまったことや悩みを解決している開発者たちと関わるうちに、わたしもこの見えにくい生き辛さをアプリの力で解決したい」、Nanaさんは同じような生きづらさ・困りごとを持っている人たちと、自身のこれまでのことを重ね合わせたことで、アプリの開発へと進んでいくことになります。

    ■ 怒られずにせかされずに済む、アプリの「ルーチンの読み上げ機能」

     「ルーチンタイマー」は、発案したNanaさんが企画・デザインを行い、プログラム開発と要望のあった機能の実装を、Nanaさんの婚約者でもある大将さんが担当。2019年3月にiOSアプリとしてリリースされ、以来少しずつアップデートを重ねて現在に至るわけですが、使ってみた人たちからは、「シンプルで使いやすい」「ダラダラしがちな自分にピッタリ」といった評価を受けています。さらに、ユーザーのひとりがツイッターにてこのアプリを紹介したところ、発達障害界隈を中心に大きく話題となりました。

     ADHDの特性が強い子どもは、使ったものを元に戻す、宿題がいつまでも終わらない、学校などからの提出物をため込んでしまうなど、親から見ると、つい口酸っぱく怒ったりせかしたりすることばかりが目につきやすいのですが、アプリ内の「ルーチンの読み上げ機能」を使うことで、今自分がやるべきこと、その次にすべきことを分刻みで設定でき、毎日使えるようにタイマーをかけられるため、いちいち親が口酸っぱくイライラしなくても済む設計。

     もちろん、自分で特性を理解してアプリを自分で使える年齢であれば、親元を離れて生活するときでも読み上げ機能でルーチンをこなしていけるようになれます。

     スマホの時計アプリなどの他のタイマー機能は、アラーム音と入力された文字が出るだけなので、アラームが何を意味して鳴っているのか忘れてしまうこともあります。しかし、タイマーにセットした文字を一つ一つ音声で読み上げてくれることで、「何かアラームが鳴ってる」から、「今はこれをする時間なんだ」とやるべきことが明確になります。また、途中で気が散ってしまってもすぐに戻れるように一定のタイミングで残り時間を読み上げる機能もあるので、軌道修正がしやすいのも特性持ちにとってはありがたいところです。

     やるべきことをつい忘れてしまう、手順がわからなくなってしまうというADHDの特性に、この読み上げ機能が効果を発揮しているわけです。複数のタスクがあると混乱してしまいがちなADHDの特性にとって、やるべきことをやるべき順番に声で知らせてくれるというのは、他のことに気がそれっぱなしになることを防ぐことができますね。

    ■ 今後の展開について

     現在はiOS版のみですが、11月中にはAndroid版もリリース予定とのこと。また、ユーザーから要望があった機能を今後もアップデートを重ねていく予定だそうです。

     iOSとAndroidの両方が出そろうことで、さらに多くの人が使えるようになります。今後は、営業で外回りに行くときにも、1件あたりの時間と移動時間などのタスクをセットするといった使い方など、時間管理を効率よくできるようになりそうですね。

    https://twitter.com/RoutineTimer/status/1109460340159315969

    <記事化協力>
    Nanaさん(@nana_freecolor)
    大将さん(@taishoizm)
    ルーチンタイマー公式ツイッター(@RoutineTimer)

    (梓川みいな)

    あわせて読みたい関連記事
  • 「デジポリス」を装った偽アプリ確認 ニセ警察詐欺の新たな手口に注意
    インターネット, 社会・物議

    「デジポリス」を装った偽アプリ確認 ニセ警察詐欺の新たな手口に注意

  • 「Duolingo」がコンビニに? 渋谷に期間限定ポップアップストア「DUOMART」オープンへ
    イベント・キャンペーン, 経済

    「Duolingo」がコンビニに? 渋谷に期間限定ポップアップストア「DUOMA…

  • 三笠書房ホームページより
    インターネット, 社会・物議

    ビジネス書『職場の「困った人」』が出版前からSNSで炎上、イラスト担当が謝罪

  • 「いつも同じ服着てない?」と言われないために…… 服装管理アプリ「KORE着た」がリニューアル
    商品・物販, 経済

    「いつも同じ服着てない?」と言われないために…… 服装管理アプリ「KORE着た」…

  • JR東日本のアプリが神アプデと話題 東海、西日本の運行状況も見られるように
    企業・サービス, 経済

    JR東日本のアプリが神アプデと話題 東海、西日本の運行状況も見られるように

  • 「ドラゴンボール」だけかと思いきや……謎のアプリ「ドラゴン伝説アニメ戦士の戦い」はいろいろな作品をごちゃ混ぜにした衝撃の珍ゲームだった
    ゲーム, コラム・レビュー・取材

    「ドラゴンボール」だけかと思いきや……謎のアプリ「ドラゴン伝説アニメ戦士の戦い」…

  • Chainsaw Man : Mortal .Fighter
    ゲーム, コラム・レビュー・取材

    どう見ても「チェンソーマン」な低評価ゲームをプレイしてみたら……理不尽&手抜きな…

  • 万華鏡の眼
    ゲーム, コラム・レビュー・取材

    スマホゲーム「バンバンサバイバー」には「NARUTO」のキャラが登場する?パクリ…

  • 「カロリAI」で食事の写真を読み込ませた画面。AIが分析して材料や量、カロリーを推定する
    インターネット, サービス・テクノロジー

    カロリー管理続かない人が作った「カロリAI」が話題に 管理をスマート化して“自分…

  • 作業通話アプリ「mocri(もくり)」が約5年の運用に幕 SNSに感謝と惜別の声
    インターネット, サービス・テクノロジー

    作業通話アプリ「mocri(もくり)」が約5年の運用に幕 SNSに感謝と惜別の声…

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分けが装置爆誕
    インターネット, おもしろ

    エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分け装置が爆誕

  • トピックス

    1. ニキータ・ビア氏の投稿

      X、API改定しリプライ浄化 報酬目当ての投稿アプリを出禁

      SNS「X」が、ここ最近リプライ欄を埋め尽くしていた「意味不明な“ヨイショ”投稿」に、ついにメスを入…
    2. 覚悟して食べた昆虫食 セミ・ゴキブリ・カブトムシの中で一番おいしかったのは?

      覚悟して食べた昆虫食 セミ・ゴキブリ・カブトムシの中で一番おいしかったのは?

      東京・吉祥寺を歩いていたところ、思わず二度見してしまう自動販売機に出会いました。売られていたのはジュ…
    3. 昭和・平成世代の記憶 ビデオテープ巻き込み事故、令和に蘇る

      昭和・平成世代の記憶 ビデオテープ巻き込み事故、令和に蘇る

      「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」という言葉にならない絶叫と共に、Xに投稿された1枚の写真。そこには、ビ…

    編集部おすすめ

    1. 生成AI「Grok」を巡りXが安全対策を強化 編集部が体験した監視の実態

      生成AI「Grok」を巡りXが安全対策を強化 編集部が体験した監視の実態

      昨年12月末、画像編集機能を搭載したことで物議をかもした、X(旧Twitter)の生成AI「Grok」。そのGrokをめぐり、Xの公式安全対…
    2. ねるねるねるねアイスバー

      テーレッテレー♪ねるねるねるねがアイスに変身 “あたりつき”40周年記念商品を発売

      クラシエ株式会社(フーズカンパニー)は、発売から40周年を迎えるロングセラー菓子「ねるねるねるね」を記念し、「ねるねるねるねアイスバー」を2…
    3. 福岡市、生活保護をめぐるSNS情報を否定 投稿者の開示請求へ

      福岡市、生活保護をめぐるSNS情報を否定 投稿者の開示請求へ

      福岡市は1月13日、SNS上で拡散されている「福岡市で生活保護を断られた母子3人が亡くなった」とする動画や投稿について、「事実ではありません…
    4. クレーンゲーム機「クラウン602」

      タイトー、幻のクレーンゲーム機を全国指名手配 有力情報に賞金10万円

      ゲームセンターの片隅に、あるいは閉店した商店の倉庫に、ひっそりと眠っているかもしれません……。タイトーが今、全国に向けて“指名手配”している…
    5. ぐるなび、個人情報流出を否定 SNS投稿巡り調査結果公表

      ぐるなび、個人情報流出を否定 SNS投稿巡り調査結果公表

      飲食店情報サイト「ぐるなび」を運営する株式会社ぐるなびは1月8日、同社の個人情報流出を巡るSNS上の投稿について、公式サイト上で「調査の結果…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト