子どもを連れて交通機関を使うのは、親にとってはとても疲れるもの。ぐずり泣きは赤ちゃんにとって当然の表現ですが、親にしてみれば「周りにうるさい思いをさせている」と委縮してしまいがち。そんな親子を密かに守る結界師に、志願者が続々と出ています。

 「赤ちゃんがふたりも電車にいたので、すすすすっと近くに陣取り、案の定ぐずり始めたあかちゃんたちの泣き声を堪能しながら、盛大に微笑み渾身の『かわいいわぁ』を出して車内に結界を張る仕事をした。今日はいい仕事した」と、自身の仕事ぶりへの満足感をツイッターに投稿した、ネットユーザーの野生のパフェ研究家さん。

 このツイートには「私も結界師です」という同業者(?)からの声や、「今までなかなかできなかったけど、やれるようになりたい」という結界師見習いからの声、「結界に守ってもらったから今度は守る側になりたい」「母は結界師だったのか……見習いとしてがんばります」といった宣言が。男性からも、密かに憧れていますとカミングアウトの声が。

 野生のパフェ研究家さん自身も、働く母。そしてその表の仕事とは別の仕事が、ぐずった赤ちゃんを周りの「うるさいなぁ」という視線から守る、結界師。先輩結界師の皆さんから親子ともに守ってもらえた、救われた、という気持ちを次の世代へと伝えるべく密かに結界師として暗躍しています。

 この仕事を上手く遂行するポイントは、さりげなく赤ちゃん連れに近づくこと、それとなく赤ちゃんの様子を見たり、目があったら視線を合わせて笑顔を送ること、そしていざぐずったときには、若干オーバー目かなと思うくらいの「可愛いわねぇ!」を盛大な微笑とともに赤ちゃんに話しかけること。

 かくいう筆者も、赤ちゃん連れと居合わせた時には結界師の仕事を無意識にやっていたのかも……と思い当たることが度々。乳幼児とすれ違ったり同じ方向に向かって歩いていると、どういう訳か高確率で乳幼児と目が合うんです。スーパーでコッソリカートに乗っている子どもに変顔して面白がらせて遊んでいることも。これは親御さんに気づかれるとさすがに恥ずかしい気持ちもちょっとあったりしますが……ニコニコしてくれたのでヨシ!

 そういえば、私も地下鉄やバスをよく使っていた時はいろいろな人に助けてもらっていました。結界師の皆さんに子どもをあやしてもらったり、うっかりエレベーターがない改札をベビーカーのままくぐってしまい途方に暮れていたら、サラリーマン風の人が「ベビーカー下までおろしますから」と、ひょいと畳んでスタスタと運んでくれたりとか……。お礼を言いまくった挙げ句、イケメンぶりにときめいてしまいました。

 そんな、全国各地で活躍している結界師の皆さんは、これからも任務を遂行していくことでしょう。そして、この仕事は子ども好きなら誰でもその場で活動できる、履歴書要らずのフリースタイル。

 緊張しながら肩身を狭くして子どもを連れている親が、少しでもホッとできる気持ちになれる環境は、少子化社会には必須の環境。子どもの声が苦手な人、疲れて耳障りに感じてイライラする人、音に敏感で泣き声が耳に刺さって辛い人、いろんな人がいます。でもみんな赤ちゃんの時から泣きながら大人になってきた、だから、「お互い様」。それだけは忘れないでおきたいですよね。

<記事化協力>
野生のパフェ研究家さん(@parfaitthestudy)

(梓川みいな)