およそ100年前に起きた第一次世界大戦は、動く映像によって克明に記録された初めての戦争でした。その膨大な記録映像を再編集し、カラー化と3D化によって新たに生まれ変わった映画「彼らは生きていた」が、2020年1月25日から東京・渋谷で公開されます。
人類史上初となる世界規模での戦争となり、日本も参戦した第一次世界大戦。機関銃や毒ガス、戦車に迷彩服など新しい技術や、塹壕戦といった新しい戦術が戦場に投入されたことでも知られていますが、同時に従軍カメラマンにより、動く映像記録が数多く残された戦争でもありました。
戦後、イギリスでは第一次世界大戦を記録した映画が封切られ、映画館は大入りになったという記録も残っています。スクリーンに映る兵士たちを見て、復員した人は自分の姿を、そして戦死者の遺族は家族の姿を探したといいます。
映画「彼らは生きていた(原題:They Shall Not Grow Old=不老の兵士たち)」は、第一次世界大戦終結(1918年)を迎えるにあたり、イギリスで実施された第一次世界大戦回顧プログラム「14-18NOW」とイギリス帝国戦争博物館(IWM)が共同製作したドキュメンタリー作品。帝国戦争博物館に所蔵されている膨大な量の記録映像を再編集し、デジタル着色してカラー化するだけでなく、3D化した作品です。
大ヒット映画「ロード・オブ・ザ・リング」などを手掛けた本作のピーター・ジャクソン監督は、2200時間以上にも及ぶ白黒サイレントの上、経年劣化のために不鮮明となっている100年前の記録映像を修復、着色、3D化する作業に400人以上のアーティストを動員。
当時の撮影カメラは手回しやゼンマイ動力で、秒間記録コマ数が一定ではありません。これを現代の毎秒24コマの速度に調整するため、足りないコマを前後のコマに合わせて作成し、挿入するなど最新のデジタル技術が駆使されています。
当時の映画は音声の同時記録ができなかったので、サイレント(無音)の映像となっていますが、これにBBCが所蔵していた600時間以上ある当時の従軍経験者のインタビュー音声や、兵士たちの話す口の動きを読唇術のプロが解析し、セリフや効果音を追加。これらにより、100年前の戦争が生々しくよみがえりました。
ジャクソン監督は記録映像を復元するにあたり、歴史の専門家を招いて考証を実施。兵士1人ひとりの階級をはじめ、衣服や装備品の色、一瞬しか映らない小物についても、それが何なのか確認しただけでなく、当時の戦場にロケハンして数千枚もの資料写真を撮影し、色再現に役立てたといいます。
100年前のあの日、あの場所で彼らは生き、笑い、戦い、そして死んでいった。3Dカラー化され、より生々しさが増したことで、戦場に生きた兵士たちの姿は原題の通り「決して歳をとることはない(They Shall Not Grow Old)」姿で、スクリーンから語りかけてくるようです。
日本より先に公開されたイギリス、アメリカでは評判を呼び、映画レビューサイト「ロッテントマト」の満足度を示すトマトメーターでは100%の「フレッシュトマト」を達成。観客スコアも91%を記録しています。ドキュメンタリー映画「彼らは生きていた」は、2020年1月25日より東京・渋谷のイメージフォーラムのほか、全国で順次公開される予定となっています。
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情報提供:アンプラグド
(咲村珠樹)