アメリカ海軍の空母ドワイト・D・アイゼンハワーが2020年8月9日(現地時間)、母港のバージニア州ノーフォークへ帰還しました。1月17日にノーフォークを後にして大西洋から地中海、ペルシャ湾にインド洋を巡る7か月あまりの遠征航海では、アメリカ海軍で初めて100日以上無寄港で赤道を越える「アイアン・シェルバック」を達成しました。

 空母アイゼンハワーと、その空母打撃群を構成する巡洋艦サン・ジャシント、巡洋艦ヴェラ・ガルフ、駆逐艦スタウト、駆逐艦ジェームズ・E・ウィリアムズ、駆逐艦トラクスタンは、艦載機部隊CVW-3をともなって1月17日にノーフォークを出発。まず複合訓練ユニット演習(COMPTUEX)を実施してから、遠征航海任務に入りました。

 大西洋を横断し、ジブラルタル海峡を経て地中海に入ったアイゼンハワーは、フランス海軍の空母シャルル・ド・ゴール、アメリカ海軍の空母ハリー・S・トルーマンと相次いで共同訓練を実施。スエズ運河を通過して紅海を抜け、インド洋に入って中東・アフリカ地域の平和と安定を維持する哨戒活動に入りました。

 この間、新型コロナウイルスの感染が世界的に広がったこともあり、アイゼンハワーと巡洋艦サン・ジャシントは寄港しての補給を行わず、外部との接触を最小限に抑えた航空機や補給艦による洋上補給のみで遠征航海を乗りきりました。5月14日には、連続100日以上無寄港のままで赤道を通過する「アイアン・シェルバック」をアメリカ海軍の艦艇として初めて達成しています。

 アイゼンハワー空母打撃群(CSG-10)司令官、ブレンダン・マクレーン少将は「将兵たちはその度胸、プライド、そしてプロ意識を私に見せつけてくれました。今回の逆境に直面しても、創意工夫や柔軟性、そして自給自足の精神で粘り強さを発揮してくれ、空母打撃群がこの遠征航海における困難な課題にも適応し、克服できるという能力の証明となりました」と、無寄港で航海を乗りきった将兵たちに賛辞を送っています。


 艦載機部隊CVW-3に所属するVFA-32、VFA-83、VFA-105、VFA-131、VAQ-130、VAW-123、HSC-7、HSM-74の各航空機は、中東地域でアメリカ中央軍が展開する対テロ作戦「フリーダムズ・センチネル(自由の守護者)」にも参加。166回、1135時間の任務飛行を実施しています。

 また、ホルムズ海峡でもCVW-3は、地域の平和と安定を維持するための飛行任務を実施。今回の遠征航海で合計1万466回、2万1995時間以上の飛行を無事故で終えました。

 CVW-3司令官のトレバー・エステス大佐は「この困難な遠征航海の間、アイク(アイゼンハワーの愛称)とCVW-3のチームは、これ以上ない努力ぶりを見せてくれました。航空機搭乗員と水兵らがこの7か月、無寄港で汗を流し続けたそのプロ意識は、涙が出るくらいです。遠征を終えたチームのメンバー全員が、家族や友人たちとリラックスした時間を過ごしてくれることを心から願っています。最後に、私がチームのみんなに対し、日々どれほど感謝しているか知ってほしいですね」と、7か月もの間洋上で過ごしつつも、無事故で任務を完遂した部下たちを労うコメントを発表しています。

 ノーフォークの岸壁で実施された記者会見で、アイゼンハワー艦長のカイル・ヒギンス大佐は「乗組員それぞれを称賛するのには、いくら言葉を尽くしても足りないほどです。若者たちは(新型コロナウイルス感染拡大という)誰も経験したことのないような状況に突入し、そこで海軍水兵だけが可能な方法で対処してくれました……そして最終的に逆境を克服してくれたのです。私は彼らとともに働くことができて、本当に感謝しています。彼らは私たち海軍をこれまでにないほど高い戦闘力の集団にしてくれました」とコメント。困難な状況に見舞われた遠征航海を振り返っています。



 空母アイゼンハワーらは今回の航海で、地球2周半以上に相当する6万海里(10万8000km)あまりを航行。僚艦の巡洋艦サン・ジャシントは8月9日、巡洋艦ヴェラ・ガルフ、駆逐艦ジェームズ・E・ウィリアムズ、駆逐艦トラクスタンは8月10日にノーフォークへ帰還しましたが、駆逐艦スタウトはもうしばらく洋上に留まり、任務を続ける予定です。

<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy

(咲村珠樹)