イギリスに展開しているアメリカ海兵隊のF-35Bが、共同訓練に参加するため2020年9月22日(現地時間)にイギリス海軍の空母クイーン・エリザベスへと移動しました。アメリカのF-35実戦飛行隊が、イギリスの空母に着艦するのはこれが初めて。同じくイギリス空軍のF-35B飛行隊とともに、北海でのNATO共同訓練に臨みます。
今回、イギリスに展開しているF-35Bは、アメリカ海兵隊のVMFA-211「ザ・ウェークアイランド・アベンジャーズ」に所属する6機。イギリスのF-35B飛行隊である第617飛行隊「ダムバスターズ」の拠点、マーラム空軍基地へと9月3日に到着し、これまでイギリスの環境に習熟するための訓練を実施してきました。
そしていよいよ、VMFA-211がイギリスへやってきた理由である、NATOの多国間共同訓練「ジョイント・ウォリアー2020」が始まります。VMFA-211の6機とともに、イギリス空軍第617飛行隊に所属する8機のF-35Bが、母港ポーツマスを出港した空母クイーン・エリザベスに着艦しました。
空母クイーン・エリザベスにとって今回の共同訓練は、2021年に予定されている初の遠征任務に備えた総仕上げともいえるもの。それは第617飛行隊も同じで、すでに実戦任務を経験しているアメリカ海兵隊からノウハウを吸収する、またとない機会となります。
アメリカのロバート・ウッド・ジョンソン駐イギリス大使は、今回の訓練について「両国の特別な関係を示す実働的な機会です。両国軍は国を守るため、肩を並べて訓練し、戦うのです」と、大西洋を挟んだ両国の関係を深める機会だと語っています。
空母クイーン・エリザベスで、アメリカにはないスキージャンプ式の発艦を初めて経験するVMFA-211隊長のジョセフ・フレシャワー中佐は「我々はあらゆる面において、空母クイーン・エリザベスに乗艦するイギリスのクルーたちと任務にあたる準備ができています。イギリスの人々と展開する今回の訓練を楽しみにしています。同盟国の新たな空母打撃能力錬成、という重要な役割を果たせることを光栄に思います」とのコメントを訓練にあたり発表しています。
イギリス空軍第617飛行隊長のマーク・スパロー中佐は、訓練を前に「今回の訓練では、アメリカとイギリス双方の人員が船と一体となり、来年に予定される初の実任務航海に備え、空母打撃群として一体化した戦力となる、という次の重要なステップを経験することになります」とのコメントを発表。来年に備えた重要な訓練という認識を示しています。
イギリス海軍空母航空団の司令官、ジェームス・ブラックモア大佐は「私たちはアメリカ海兵隊から、F-35Bの海上運用について多くを学んでいます。彼らはより長い運用経験を有しており、そこから来るアイデアや訓練法を共有することができます。しかしそれだけではなく、大西洋を挟んだ同盟国が互いの空母から航空機を運用でき、必要に応じて戦闘が可能だということを実証する機会でもあります。このようなレベルでの統合運用力は、危機や紛争、戦争において柔軟な対応を可能とするものです」とコメント。同じF-35Bを運用する両国の相互運用性を高めることが、国際安全保障上の柔軟な対応力を育成することにつながるとしています。
アメリカ海兵隊とイギリスのF-35Bを搭載した空母クイーン・エリザベスは、スコットランド沖の北海で実施されるNATOの多国間共同訓練「ジョイント・ウォリアー2020」に参加し、10月にポーツマスへ帰港する予定となっています。
<出典・引用>
イギリス海軍 ニュースリリース
イギリス空軍 ニュースリリース
アメリカ海兵隊 ニュースリリース
Image:Crown Copyright/USMC
(咲村珠樹)