アメリカ海軍は2020年10月15日(現地時間)、アラビア海で哨戒中の駆逐艦ウィンストン・S・チャーチルが漂流中のイラン漁船に対し、人道支援を行なったと発表しました。これは1974年に締結された「海上における人命の安全のための国際条約」に基づく行為です。
アメリカ海軍の発表によると、多国籍連合艦隊の一員としてアラビア海を哨戒中だった駆逐艦チャーチルは、イラン国旗を掲げたダウ船(中東の伝統的な帆船。現在はエンジン動力が主)を発見。ダウ船からは発光信号で、緊急事態に陥っていることが伝えられました。
船舶無線で問い合わせたところ、ダウ船はバッテリー故障でエンジンが始動できず、漂流状態になっていることが判明。食料と水が不足している旨が伝えられました。
駆逐艦チャーチルは、臨検などに使用される小型ボートを出し、ダウ船が航海可能な状態にあるか損傷部位の確認を実施。そして乗組員たちに水と食料を提供しました。
バッテリーの型を問い合わせたところ、あいにく駆逐艦チャーチルには搭載されていないもの。近隣のオマーン沿岸警備隊にバッテリーの手配を依頼し、巡視船が現場に到着するまでの間、当該海域にとどまってダウ船を保護することになりました。
この種の人道支援は、1974年に締結された「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)」に定められているもので、遭難した船舶に対し、必要な支援をすることが義務付けられています。船乗りたちは「板子一枚下は地獄」という共通認識があるため、遭難時に支援を行うのはシーマンシップの基本でもあります。
アラビア海に展開している多国籍連合艦隊は、海賊行為や密輸など、公海上における違法な活動を防止するために哨戒活動を実施しています。同時に、遭難した船舶をいち早く発見し、救いの手を差し伸べることも重要な任務なのです。
<出典・引用>
アメリカ海軍 プレスリリース
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)