アメリカ海軍航空システム・コマンドとボーイングは、EA-18Gグラウラー電子戦機の能力近代化改修(GCM)計画が、ワシントン州ウィドビーアイランド海軍航空基地で始まったと2021年3月19日(現地時間)、明らかにしました。今後5年かけて、アメリカ海軍が保有する160機のEA-18Gに対し、次世代型電子戦ポッド運用能力を付加するなどの近代化改修を実施します。

 現在、EA-18Gグラウラーが搭載して運用するAN/ALQ-99電子戦ポッドは、元来EA-6Bプラウラー用に開発されたもの。1970年代の運用開始から50年近く経過し、その間の技術的進化を考えると、性能はすでに時代遅れとなってきています。

AN/ALQ-99電子戦ポッドを搭載したEA-18G(Image:U.S.Navy)

 このためアメリカ海軍は、現代および将来の電子戦を戦い抜ける次世代型の電子戦ポッドを開発し、EA-18Gに装備して能力の近代化を図ることに。機体メーカーのボーイング、電子戦ポッドを開発するノースロップ・グラマンとともに、計画を進めてきました。

AN/ALQ-249(V)1電子戦ポッド(Image:U.S.Navy)

 能力近代化計画の柱となるのが、次世代型電波妨害装置(NGJ)のAN/ALQ-249(V)1と、両主翼端に装着されたAN/ALQ-218電子戦システムの改良型。AN/ALQ-249はポッド型の装置となっており、従来のAN/ALQ-99と同様に主翼下に装着されます。


実機搭載試験の様子(Image:U.S.Navy)

 海軍航空システム・コマンドのF/A-18とEA-18G関連計画オフィスで、EA-18Gのシステム統合部門を率いるクリス・ギアハート中佐は「この能力近代化改修はEA-18Gにとって初めての大きなアップグレードで、グラウラーが電磁波関連の優位性を維持し、2040年まで現役にとどまるため将来予定される近代化の基礎となります。今回の改修で電子戦能力が大きく向上し、アメリカおよび同盟国の前線における打撃力をサポートしてくれるでしょう」と語っています。

次世代型電子戦ポッドを装着したVX-23のEA-18G(Image:U.S.Navy)

 ワシントン州シアトル近郊のウィドビーアイランド海軍航空基地に到着した改修1号機となるEA-18Gは、機体メーカーのボーイングなどによって機体構造や各種ミッション・システム機器の改修が実施されます。

EA-18Gに搭載されたAN/ALQ-249(V)1(Image:U.S.Navy)

 ボーイングの戦闘・攻撃装備プロダクトサポート担当副社長、マーク・シアーズ氏は「世界有数の電子戦プラットフォームとして、海軍との強固なパートナーシップに基づき、この改修計画を開始します。この改修により、EA-18Gは現在および将来の脅威に対して適応できるようになるでしょう」とのコメントを発表しました。

次世代型電子戦ポッドを装着したVX-23のEA-18G(Image:U.S.Navy)

 改修は基本的にウィドビーアイランド海軍航空基地に新設された施設で行われ、アメリカ海軍当局とボーイングが緊密に連携して進められる予定。改修ラインの本格稼働は2021年6月ごろを見込んでいます。

<出典・引用>
アメリカ海軍航空システム・コマンド ニュースリリース
ボーイング ニュースリリース
Image:U.S.Navy/Boeing/Northrop Grumman

(咲村珠樹)