食卓に並ぶことも多い食用魚としてお馴染みのサケですが、その一生は実にドラマティック。

 サケは川で生まれたあと、海へ旅立ち、3~5年ほど経ったのちに生まれた川に帰って産卵をします。そして次の世代へと命をつなぐと、やがて息絶え一生を終える。という生命の循環を行うことからたびたび学校教育にも取り上げられています。

 そんなサケの一生をよりわかりやすく、パノラマ式のペーパークラフト作品にして紹介したのが、1031(いちまる)さん。現役の理系大学生でありながら紙創作のジオラマ作品を手掛けており、主に水辺の生き物をテーマにした作品を多く制作しています。

 1031(いちまる)さんは「生き物の躍動感を伝えられる作品」を創作の根幹としており、新たな作品のテーマを思案していたところ、今回の「サケの一生をめぐる過酷な旅」を表現しようと思い立ったのだそう。

 1031(いちまる)さん自身、小学生の頃にサケの放流イベントがあり、卵から育てて放流に参加した経験から、サケが生まれた川に戻ってくるというドラマには強い思い入れがありました。

 サケの一生をテーマにするにあたり、世代が受け継がれていく様子も再現したいと思い、考え付いたのがこの円柱状のパノラマ型。

産卵を終え息絶えるサケ

 時の流れとループを表現するという形を思い付き、約一か月の制作期間を経て完成しました。結果として視覚的にもわかりやすい作品になり、1031(いちまる)さん自身もとても満足しているとのこと。

卵を狙うウグイ

海ではサメに狙われる危険性も

 作品の中でも特にこだわったと話すのは「その一生の過酷さをいかにして表現するか」ということと「(この作品に限りませんが)泳ぐ魚の浮遊感を出すこと」だそう。作品にはサケだけでなく、産卵直後の卵を狙うウグイや、孵化間近の卵を狙うカワガラスとハナカジカ、稚魚を狙うアメマスやウミネコ、海で若魚を狙うネズミザメなど、各成長段階でサケが常に他の生き物に狙われる様子が細かく表現されています。

サケが本当に泳いでいるかのような躍動感

 また、浮遊感については糸や支柱を使わずに海藻や岩などに魚の一部分を接着することで、不必要な要素をできるだけ排除して、水中に魚が泳ぐ様子を再現。そのためには海藻などの背景素材を適切に配置する必要があり、この作品でもとても苦労したそうです。

 こうした多くのこだわりから完成した作品は、ペーパークラフト作品とは思えない出来栄え。作品をぐるっと一周させた様子を動画おさめツイッターに投稿すると、瞬く間に大きな反響が寄せられました。

 普段何気なく口にすることが多いサケですが、この作品を通して今一度、「サケの一生」が見せる生命の美しさに触れてみてはいかがでしょうか。

<記事化協力>
1031(いちまる)さん(@Itimaru1031)

(山口弘剛)