長年、実物を直接知らないのに慣用句として使っている言葉、ありませんか?普段は気づかないのですが、使った後に相手が怪訝な顔をして、ジェネレーションギャップを感じてしまうこともしばしば。あるIT企業に勤務するお母さんが、お子さんにかけた言葉への反応でジェネレーションギャップを感じた経験をTwitterに綴りました。

 このツイートをしたのは、新しいスモールコミュニティサービス「yoor」を運営しているIT企業、シーサー株式会社に勤めるIT系ミズキさん。ある朝、お子さんに話しかけたことがきっかけで、「下駄箱」という言葉がジェネレーションギャップを生じさせていることを知ったとのこと。

 その時の状況をうかがうと「小学生の息子が忘れ物をしたので、後から家を出る保育園時の娘に『保育園の後に小学校の下駄箱へ行ってくる』と伝えたところ、娘から『下駄箱ってなに?』と言われてしまったのです。そこでやっと、今まで保育園で早く靴をしまって欲しくて『下駄箱!』と私が言っても、見向きもしなかった原因に気づき、ツイートすることにしました」とミズキさん。

 自分の言葉がお子さんに通じていなかった、と驚いたものの、同時に「私もハンガーのことを『えもんかけ』と言っている祖母と同じ立場であることにふと気づきました」「『下駄箱ってなに?』と尋ねる娘の姿は、かつて私が『えもんかけってなに?』と祖母に尋ねた時の雰囲気にそっくりでした」と、かつての記憶を呼び起こされたといいます。

 このツイートの場合、「下駄箱」という言葉を聞く機会が少なかったため、「脱いだ履き物を入れる場所」のことだとお子さんは気づかなかったようです。今は「靴箱」とのこと。

 室内に入る時、それまで外で履いていた物を収納する場所は確かに靴なら「靴箱」。「下駄箱」は文字通り本来は下駄。しかしながらひとくくりで「靴箱」「下駄箱」さらには「シューロッカー」なんて言い方をします。また「下足箱」という呼び名も。ちょっとお高めの料理店に行って履物を脱いだ際、入り口にいる「下足番」さんに預けて引き換え札をもらう、なんてこともあります。

 実際にはもう別のものになっているのだけれど、これまでの慣用から同じ言葉で呼ばれている例は、たくさんあります。電車の座席の上にある荷物棚は、古くは網になっていたのですが、最新の電車では網を使っておらず、金属棒や強化ガラスになっても昔の呼び名である「網棚」を使ってしまう人も多いのでは?

 もう今はそうじゃないのに……とジェネレーションギャップを感じてしまう言葉は数々ありますが、別の呼び方や昔の呼び方を知ることは、その言葉が使われた背景や時代を知るきっかけとなります。逆に、ジェネレーションギャップを感じた方は認識のアップデートに繋がります。

 子どもの気づきや視点は大人が驚くほど鋭いもの。せっかくなので、こういう機会があれば互いに「なんでそういう表現をするの?」と語り合ってみるのもいいかもしれません。

<記事化協力>
IT系ミズキさん(@Mi_Zu_Ki_H)

(咲村珠樹:高校国語教員免状取得)