絞められたニワトリのような見た目と、お腹を押すことで「ギャアアアア!」という、変な鳴き声で叫ぶという、インパクト抜群のおもちゃ、通称「びっくりチキン」。テレビ番組やYouTubeなどで見たことがあるという方は多いのではないでしょうか?

 そんな「びっくりチキン」を、造形作家の安居智博さん(@kami_robo_yasui)が大改造。気の抜ける表情はそのままに、スラっと伸びた手足と、筋骨隆々のボディ。ファイティングポーズを決める姿は、まるで特撮やアニメヒーローのよう。そのギャップに思わずクスッとしてしまう作品に仕上がっています。

 過去にも「お風呂に浮かべるアヒルのおもちゃ」や「鼻メガネ」「シャボン液の容器」などの馴染みのおもちゃを、カッコいいヒーローに作り替えてきた安居さん。

 今回の「びっくりチキン」は、自身の作品集となる書籍「100均グッズ改造ヒーロー大集合: 切ってつないでトンデモ変身!」(平凡社)の出版を記念して、「大ネタにチャレンジしよう!」と意気込んで制作した作品とのこと。

過去にもユニークな作品を多数制作しています

 実はびっくりチキンの存在は、以前からずっと気になっていたそうですが、安居さんを以てしても「こんなふざけた顔してる人形、自分に扱いきれるだろうか……」と、ネタとして扱うことを避けていたのだとか。

材料

 しかしながら、作品はそんな葛藤を思わせない見事な出来栄え。総数9個のびっくりチキンからなるヒーローは、元のフォルムを忘れてしまうほどに美しいプロポーションに変化しています。

 関節には安居さんの作品の特徴でもある「ヤスイ締め」がフル活用されており、アクションフィギュアのようなポージングが可能に。そのまま「キン肉マン」や「THE MOMOTAROH」といった往年のジャンプ漫画に登場しても違和感のないレベルです。

そのままマンガや特撮番組に登場しそう

 作品制作の中でも、特にこだわったと話すのは「手(握りこぶし)のフォルム」。

 制作にあたり、「元々縦に長いシルエットのびっくりチキンなので、印象のギャップを強く生じさせるためには、手の存在感を高める事が重要」と考えた安居さん。

 びっくりチキンの足の指を丁寧に切り分けたのち、一関節ずつ瞬間接着剤で貼り合わせ、人間の握りこぶしに見えるよう加工を施したそうです。

制作に使用したびっくりチキンの数が計9個にのぼります

 「苦労したけど、なんとか上手くまとまったんじゃないかな、と思っています。そのまま見ている時よりも鳥肌の気持ち悪さが強調されたのが良かったですね(笑)」

 制作後の感想を、このように語った安居さん。制作前は心配を抱えていたようですが、見事に生まれ変わったびっくりチキンは、納得の出来栄えとなった模様。

 もしもこんなヒーローが本当にいたら……格闘術に加え、必殺技は「びっくりボイス」?名前は?決めゼリフは……?と、ついつい妄想が捗ってしまいますね。

<記事化協力>
安居 智博さん(@kami_robo_yasui)

(山口弘剛)