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「鈍行」って通じない!?鉄道にひそむジェネレーションギャップの言葉

 2022年は、日本で初の鉄道(新橋~横浜)が開業して150年という節目の年。この間に鉄道路線は全国に広がり、世界でも有数の鉄道大国になりました。

 普段の生活で鉄道を使っている人も少なくないと思いますが、世代や育った環境によって、鉄道に関係する言葉に違いがあるみたい。終点まで各駅に停まっていく列車を指す「鈍行(どんこう)」という言葉、もう通じなくなっているようです。

  •  急行や特急といった優等列車ではない、各駅に停車する列車を指す「鈍行」という通称が通じない、とツイートしたのは、お料理作家のじろまるいずみさん。それによると、42歳の人は知っていたものの、28歳と25歳の人は耳慣れぬ単語に固まっていたとのこと。

     この反応に「お恥ずかしいのですが、『知ってるのが普通なんじゃ……』と断言してしまいました(笑)。すぐに思い直して『知ってるかどうかTwitterに投下してみる』と宣言して投下したのですが、結論から言うと、知ってる人は知ってる、知らない人は知らないって感じでしたね(笑)」とじろまるさん。

     この言葉、どうやら世代と同時に育ってきた環境にも関係しているようです。

    ■ そもそも、なんで「鈍行」?

     じろまるさんも小さい頃、初めて聞いて「え?うどん粉?」と聞き返したという「鈍行」という言葉。鉄道事業者で使う正式な列車種別ではなく、あくまでも俗語として定着したものです。

     鉄道が開業した当時、すべての列車は終点まで各駅に停車していました。しかし、路線がどんどん伸びていき、遠隔地まで列車で行けるようになると、途中の各駅に停まっていると所要時間がかかり過ぎてしまいます。

     そこで、一定以上の利用客が見込める駅や、ほかの路線との乗り換え駅といった主要な駅だけに停車し、残りは通過する遠隔地への速達サービスを提供する列車が誕生しました。終点まで急いで行く「急行」列車です。

     ここで、利用客は急行列車と通常通り各駅に停車する列車を区別して呼ぶようになりました。目的地へ早く着く「急行」に対し、鈍足の列車といった意味で「鈍行(どんこう)」という俗称が定着していきます。

     鉄道事業者の側では当初、速達性の高い優等列車を「急行」や「特急」と区別して乗客に知らせ、通常の列車については「〇〇行き」としか案内しないことがほとんどだったようです。この影響からか、各駅に停車する列車の種別は「普通」や「各駅停車」と事業者間で異なっているのが興味深いところ。

     現在では鉄道事業者の方でも「〇〇行き普通」や「各駅停車〇〇行き」という乗客案内をしているため、わざわざ「鈍行」という言葉を使う人も少なくなってきた印象。特に「急行」や「準急」「快速急行」「準特急」など、列車種別の多い私鉄では「各駅停車」の呼称を使っているケースが多く見られるようです。

     個人的には「鈍行(列車)」という言葉に国鉄の香りを感じます。私鉄でも京浜急行は独特で、各駅に停車する列車のことを「普通車」と呼ぶのを駅のアナウンスで聞くことができますね。

    ■ 今はなんでも「電車」?

     鈍行と同じく、あまり聞くことのなくなってきた言葉に「汽車」があります。ある一定の年代以上では、鉄道で通学することを「汽車通(学)」と呼んでいたことを思い出すのではないでしょうか。

     この「汽車」は、もともと蒸気機関車が牽引する列車を指していましたが、いつの間にか列車の総称、特に「電車」と区別して使われるようになった言葉。昔の国鉄では、長距離を結ぶ「列車」と、地域内の移動を担う「電車」が区別されており、場合によっては走行する線路も異なる場合がありました。

     JR東日本を例にとると、今でも列車の「常磐線」と電車の「常磐線快速電車」が区別されており、公式サイトでの運行情報も別々に案内されています。また、京浜東北線の大宮~横浜は東北線(宇都宮線)・東海道線の「電車線」という扱い。

     現代では、汽車も「電車」という言葉で置き換えられている感じ。日本の鉄道は電化率が高く、電車が走っていることが多いため、鉄道車両全体を「電車」と総称する人も多くなっています。

     言葉は時代の移り変わりに従って変化していきます。現代はちょうど「鈍行」が「普通」や「各駅停車」に、そして「汽車」が「電車」に飲み込まれつつある時なのかもしれません。使われなくなるのは残念ですが、変化を目の当たりにしていると考えると、なかなか出会えない貴重な機会にも思えてきます。

    <記事化協力>
    じろまるいずみさん(@jiromal)

    (咲村珠樹)

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