石の上でうずくまり、どこか遠くを見ているカエル。実はこれ、焼き物で作られた彫刻作品なんです。陶土を使い、生き物と自然、その始まりと終わりを形作っている「陶芸彫刻家」、中嶋草太さんに作品作りや作品に込めたメッセージをうかがいました。

 小さい頃から生き物が好きだったという中嶋さん。陶芸を学び始め、自身の作品性を模索する中で、長い時間をかけて生き物が積み重なり生成されてきた土を素材として使い、土に還っていく動物、土から生まれる植物などをモチーフに、循環を大きなテーマとして作品作りに取り組んでいます。

自然に溶け込むカエルの焼き物(中嶋草太さん提供)

 作品における表現は様々。複数の粘土を練り合わせたり、場所によって使い分けたりするのはもちろん、自然物の自然な風合いを出すため、土の色味や、粘土にする前の粉状になった原土をすり込んで表情を作り出すこともあるのだとか。

 釉薬も、全体的に施釉するのではなく、テクスチャーとして素焼きの肌に部分的に使うことが多いとのこと。造形時は粘土造形と同じように中身の詰まった状態で行うそうですが、そのまま焼成すると表面と内部とで温度差が生じて変形や破壊が起こるため、造形後に一部を切り離し、内部をくり抜いて窯に入れています。

 今回、Twitterに投稿されたカエルの作品は、沖縄県で開催されたイベント用に作られたものだそうで、沖縄に生息しているオキナワイシカワガエル、ハナサキガエルなどがモチーフ。体の模様は素焼きしたのちに下絵具や酸化金属を使って彩色されています。「普段はアマガエルをモチーフに選ぶことが多いですね」と中嶋さん。

自然に溶け焼き物のオキナワイシカワガエル(中嶋草太さん提供)

 中嶋さんの作品には、生命の終わりの形である骨をモチーフにした作品も目立ちます。こちらもとても焼き物とは思えないほどのリアル感。

動物の頭骨をモチーフにした作品(中嶋草太さん提供)

 骨は薄い部分も多く、焼き物として表現するには難しい面も。こうした部分の造形について、中嶋さんは次のように語ってくれました。

陶土で造形中(中嶋草太さん提供)

 「場所によってはかなり薄い箇所も出てくるので薄く成形するタイミングなどは気を使っています。徐々に乾燥させつつ、柔らかすぎず、硬すぎずのベストなタイミングで削り出します。表面の素材感も一つ一つ手作業でこだわって制作しています。骨の密度感など実際に作品を見ていただく際に隅々まで楽しんで頂けたら嬉しく思います」

焼成した状態(中嶋草太さん提供)

 リアルに焼成された作品は、単体で鑑賞するものだけでなく、樹木や種など別のモチーフと組み合わされても表現されます。もちろん、これも焼き物で作られ、生と死が幾度も繰り返される自然の循環を思わせます。

 「今後もこの展開での発展を目指しております」と語る中嶋草太さん。2022年12月9日~11日(一般公開:10日・11日)に石川県金沢市のハイアット セントリック 金沢で開催される「KOGEI Art Fair Kanazawa 2022」に作品が展示予定となっています。このほかにも作品の画像は、TwitterやInstagram(atarime415)で見ることができます。

<記事化協力>
中嶋草太さん(@atarime0415)

(咲村珠樹)