おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

若い人は知らない? 今は製造されていない「水銀式体温計」

 風邪を引いた時など、体温計測に使われる体温計。今や店頭ではデジタル式のものばかりが売られていますが、小さい頃にアナログな水銀式の体温計を使った記憶のある方も多いでしょう。

 そんな「水銀式体温計」の画像をもとに、使い方を知っているか否かで世代を判別できるツイートが投稿されました。

  •  水銀式体温計の画像とともに「これのメモリの下げ方を知ってる人、こちら側の人です」とツイッターに投稿したのは、トロンボーン奏者の道本和生さん。「不便ですが便利です」と続けられていることから、まだ愛用していることがうかがえます。

     道本さんにうかがうと「デジタル体温計を疑っていますので(笑)。デジタルも持っているのに、アナログの信用度はなにものにも代えがたいと思っています」とのお言葉。実は筆者も、体温を測る際は水銀式体温計を愛用しているので、我が意を得たりという感じがしました。

     デジタル式の体温計は温度センサーと演算装置で構成されており、短時間で結果が出る「予測式」は温度の上がり具合から予想される温度を表示。実測式は温度の数値が安定する、規定の時間に達した時点での数値が表示されます。また、耳の奥からの赤外線をもとに温度を表示するものも。

     これに対し、水銀式体温計は体温で水銀の体積が膨張することにより、先端が到達した部分の目盛りを読んで測定値を判断します。デジタル式の数値がどのように算出されたか、過程が見えないのに対し、水銀式は構造・原理が単純な分、一目で分かるので安心感がある方式といえるかもしれません。

     体温の上がり具合が視覚化されて見やすい反面、水銀式体温計はガラスの中に有害な水銀が封入されているので、破損させやすく後始末が大変。これもあって「水銀による環境汚染の防止に関する法律(水銀汚染防止法)」に基づき、2021年1月1日より水銀式体温計の製造・輸出入が禁止となりました。

     2022年11月現在では店頭在庫もほぼ払底し、歴史の中へと消えていきつつある水銀式体温計。ご家庭に残る既存のものは使い続けても大丈夫ですが、廃棄する際は廃棄物処理法に則った対応が必要なので、各自治体の窓口へ問い合わせてください。

     道本さんがツイートで示した水銀式体温計は「実家にあったものなので、どれくらい前のものかは分かりません」とのこと。筆者が愛用している水銀式体温計も、少なくとも30年は使っているような気がします……物持ちがいいんですねぇ。

     また、道本さんにとって水銀式体温計は特別な思い入れもある様子。「同じ山口県出身である柏木幸助が国産初の体温計として明治に売り出した経緯から勝手な愛着をもっています」と、郷土の偉人をしのぶ品でもあるようです。

     このツイートには、使っていた当時の思い出を語るリプライも寄せられました。「皆さん水銀体温計での失敗も含めて色んな思い出をお持ちだなとほっこりしました。と同時に、自分自身の忘れかけていた子どもの頃が思い起こされました」と道本さんは話します。

     最近では、水銀式に代わる新しいアナログ式の体温計が開発され、一部のお店では入手が可能なようです。水銀の代わりに安全な液体金属(合金)のガリンスタンを使ったもので、使い勝手は水銀並みとのこと。水銀式の破損が気になる方は、こちらの商品を検討するのも、ありかもしれません。

    ※初出時、誤って「水銀の堆積」と表記しておりました。正しくは「体積」です。お詫びして訂正いたします。

    <記事化協力>
    道本和生さん(@tromichi1213)

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 実家の一室をレトロゲームショップ風に改造 本物の什器も揃えた昭和男児の夢空間
    インターネット, びっくり・驚き

    実家の一室をレトロゲームショップ風に改造 本物の什器も揃えた昭和男児の夢空間

  • Googleの「インターネット古参会 入会資格審査」がちょろすぎる件
    インターネット, おもしろ

    Googleの「インターネット古参会 入会資格審査」がちょろすぎる件

  • 万博に「ポケットカメラ」持参 ミャクミャク像を撮影した一枚がノスタルジーあふれる仕上がりに
    ゲーム, ニュース・話題

    万博に「ポケットカメラ」持参 ミャクミャク像を撮影した一枚がノスタルジーあふれる…

  • マクセル「UD」シリーズのカセットテープが令和に復活 懐かしのデザイン採用
    商品・物販, 経済

    マクセル「UD」シリーズのカセットテープが令和に復活 懐かしのデザイン採用

  • テキストサイト「侍魂」
    インターネット, サービス・テクノロジー

    伝説のサイト「侍魂」の行方に注目 ぷらら「プライベートホームページ」終了がもたら…

  • 懐かしの給食メニューを完全再現 「平成こじらせ部屋」のYouTube企画がすごい
    インターネット, おもしろ

    懐かしの給食メニューを完全再現 「平成こじらせ部屋」のYouTube企画がすごい…

  • 斬新すぎるオムアート アニメや企業のロゴをケチャップで再現
    インターネット, びっくり・驚き

    斬新すぎるオムアート アニメや企業のロゴをケチャップで再現

  • 画像提供:me_young_sitter/ジュース瓶研究さん(@me_young_sitter)
    インターネット, おもしろ

    当時の記憶もよみがえる…… 山で30年前のファンタの缶を発見!

  • 「ミンキーモモ」のミンキーステッキが大人向けなりきり玩具に 本格仕様で変身シーンも再現可能
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    「ミンキーモモ」のミンキーステッキが大人向けなりきり玩具に 本格仕様で変身シーン…

  • 「昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉」の昭和レトロエリア「新玉川テラス」
    企業・サービス, 経済

    埼玉の温泉施設に「昭和レトロ」テラスがオープン ”タイムスリップ”な写真撮影が可…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる
    エンタメ, 映画

    「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる

  • ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設
    企業・サービス, 経済

    ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

  • 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」
    エンタメ, 芸能人

    嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現…

  • カレーシチューに、フレンチサラダ、本当にまずかった脱脂粉乳他(2300円)
    イベント・キャンペーン, 経済

    昭和の“たのしい給食”が期間限定で復活 脱脂粉乳まで再現した「絶滅危惧食フェア」…

  • 新商品「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ>」
    商品・物販, 経済

    焼きあごの香ばしさと細カタ麺の共演 「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ…

  • 北海道産のチーズを2種類使った秋冬限定フレーバー「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」
    商品・物販, 経済

    北海道産チーズのW使い!「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」がこの秋登場

  • トピックス

    1. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    2. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. 床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      頭をぐりぐり動かしながら、床の上を滑っていく1匹のワンちゃん。飼い主さんが「モップ機能つき生ルンバ」と呼ぶビションフリーゼ・せとくんの動画が…
    2. 工場労働者2138人、1万時間の作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場労働者2138人、1万時間の手作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場向け自動化ロボットの研究開発を行うテクノロジー企業、Build AIが、工場労働者2138人による合計1万時間の作業映像をオープンソース…
    3. お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      「解体しながら飲む」が合言葉。童話でお馴染みの「お菓子の家」を、そのまま大人向けに置き換えたような、その名も「つまみの家」がXに登場しました…
    4. 作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業中に「猫」と「たき火」の癒やしを感じながら集中できる……そんな新感覚のゲーム「たき火と猫」のSteamストアページが公開されました。本作…
    5. アカウント1の投稿

      【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ※この記事は前編からの続きです。前編では、Temuを名乗る複数のアカウントを調査する中で見えてきた構図をお伝えしました。ここからは、Temu…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト