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【悲報】俺氏ECサイトで「前払い詐欺」にひっかかる→弁護士に相談した結果

 インターネットの普及により我々は生活が非常に便利になった反面、様々なトラブルに巻き込まれるようにもなりました。たとえば、SNSなどでのトラブルや、オンラインショップなどでのトラブル。

 かつて「ワンクリック詐欺」や「架空請求」など、悪質な詐欺がありましたが、現在も完全になくなったわけではありません。今回はそんな詐欺の中で「オンラインショップ」における詐欺に筆者自身が遭遇してしまいました……しょぼん。

 と、落ち込んでもいられないので「俺氏ECサイトで『前払い詐欺』にひっかかる→弁護士に相談した結果」と題し、弁護士への相談結果とともに紹介いたします。

  • ■ オンラインショップにおける「前払い詐欺」とは

     筆者が遭遇したのは、オンラインショップにおける「前払い」による詐欺です。

     簡単にいうと「お金を振り込んだのに商品が届かない」という手口です。そんな簡単に振り込むなんて、筆者自身の脇が甘いんじゃないか!?と思われるかもしれません。ひっかかってしまった以上確かに脇が甘かった、としか言えません。この手の多くの詐欺は簡単に見破れるからです。

     にもかかわらずなぜ振り込んでしまったのでしょうか。まずは経緯を追って説明いたします。

    ■ 事の経緯について

     まずとある商品を「あるオンラインショップ」で購入しました。他のオンラインショップでは販売しておらず、品切れでどこでも購入できなかったので飛びついてしまいました。

    前払い詐欺の商品ページ

     価格は9250円と、それほど高額でもなく、他のオンラインショップで提示されていた価格帯とほぼ同等。逆にめちゃくちゃ安いわけでもない。なので、何の不自然さもありませんでした。

     注文をする前にアカウント登録があったので、指示に従いアカウント登録を行いました。

    前払い詐欺の個人アカウント情報

     なお、カード決済が使えないという不便さはありましたが、他ではすでに販売していない商品だったので、売り切れることを懸念してまずは注文。

     すると最初にアカウント登録の御礼のメールが到着しました。

    前払い詐欺の最初のメール

     ちなみに、通常ならばすぐに「注文完了のメール」が来てもおかしくないのに、何故か遅延して届きました。この件に不信感はあったのですが、在庫の確認をするため等ではないかと、勝手に推測。

     その後1時間ほどしてメールがようやく到着し、一安心。

    前払い詐欺の注文のメール

     今回は銀行振込ということなので、次に届くであろう口座情報をしばらく待つことに。するとすぐに口座情報はとどきました。だがしかし……何故か名義が「会社名」ではなく「個人名」だったのは不自然。

    前払い詐欺の振込口座について

     会社名ではないのは、個人事業主が、銀行口座を登録する際に個人名で登録したものだろうと、考えとりあえず振り込みを行ってしまいました。するとその1日後、ちょっと不審なメールが届いたのです。

    ■ 翌日、担当が変わり、口座が限度額に達する

     翌日メールが届いたのですが、担当者が変わり、その担当者いわく「送金口座が限度額に達した」とのこと。

     また、メール文章の日本語もかなりカタコトで、担当者は日本人ではない模様。いかにも怪しいのですが、海外の方が頑張って運営をしているのだろうと、いいように捉えてしまいました。

     ただ「送金口座が限度額に達した……」というのは、どうも腑に落ちない。そんな事があるのだろうか?とは思いつつも、人気サイトなのだろうと勝手に良いように捉えたのです。もちろん、それこそが今回の問題の原因だったことは後ほど気づくわけです。

     さらに、「振り込んだお金は戻ってくる」と言うので、その件も踏まえ安心してしまいました。

    前払い詐欺の振込口座の限度額について

     矢継ぎ早にメールが届き、別の口座に振り込んでほしいとのことで違う口座が案内されました。案内された口座は、筆者は聞いたこともない謎のローカル銀行(この銀行自体は存在する)で、運営元の住所とはまるで違う場所の銀行でした。

     だがそれでも筆者は「複数人で運営しているのだろう」と勝手に解釈し、素直に振り込むことに。

    前払い詐欺の振込口座について

     その後、運営者からは一切連絡がなくなり、こちらからメールを送っても返信は途絶えたのです。この時点で「やられた」と気づくのですが、時既に遅しといった感じ。

    前払い詐欺に連絡催促をする

     連絡がつかなくなり、事前に振り込んだお金も帰ってこず。確認のため、別のアカウントで同一商品をもう一度買ってみて、おなじような手口でメールが来るか確認してみました。

    ■ 別のアカウントで連絡をしてみる

     別のアカウントを登録し、注文してみます。クレジットカード決済ではないので、今度は銀行口座に振り込まなければ被害はゼロ。

     しばらくすると例の「送金口座が限度額に達した……」のメールが着信。またかよ……。

    前払い詐欺に同じ注文してみた結果

     この時点でこのサイトが詐欺であることが濃厚となりましたが、せっかくなのでこの担当者にメールを打ってみることにします。内容としては「お金はいくらでも払うので、電話で話したい」という内容。

     そしてこちら側もあえてメール文章をカタコトの日本語にして送ってみた。

     すると「先週、会社が新しい住所に移転したばかりのため、電話ができない」という内容。かたくなにメールのみでのやり取りを要求してきます。

    前払い詐欺に質問してみた様子

     以上、やり取りの内容ではありますが、ネット上ではこのようなオンラインショップでの「前払い詐欺」は多数報告されているようで、殆どの場合お金は返ってこない模様。

     残念ながら今回も帰ってくることはないでしょう。では、このような被害に遭わないためには具体的にどうすればよいのか。

     詳しい話を弁護士に聞いてみました。

    ■ 弁護士に話を聞いてみた

     今回の詐欺について静岡県浜松市にある「くらた法律事務所」の倉田敬利弁護士に話を聞いてみました。

    Q. インターネット通販で詐欺にあった場合、取り戻すことは可能なのでしょうか。

    可能性がゼロではありませんが、支払った代金の回収が極めて困難な場合も多いのが実情です。

    決済にクレジットカードが用いられた場合には、詐欺と気づいた時点ですぐにクレジットカード会社に連絡し、決済を止めてもらう対応が考えられます。しかし、インターネット通販で詐欺をしようとする者は、決済手段として銀行振込みを選択することが多いです。

    このような場合、振込先口座の金融機関に連絡し、預金口座を凍結してもらい、被害額返還の手続を取る方法もあります。しかし、口座が凍結される前に預金が引き出されてしまえば、被害回復を図ることはできません。詐欺を行うような者は、往々にしてすぐに預金を引き出します。

    このように支払った代金の回収は極めて困難な場合が多いので、まずは詐欺被害に遭わないように万全の注意を払うことが大切です。

    Q. 被害に遭わないようにするため、この種の詐欺に関しては、どのような対策がありますか。

    インターネット通販を利用する際は、取引相手がしっかりとした事業者か慎重に吟味する必要があります。まずは、サイトに怪しい点がないかです。

    (1)サイトのURLが不自然。
    (2)サイトのフォントに通常使用されていない旧字体が混じっている。
    (3)機械翻訳したような不自然な日本語が混じっている。
    (4)事業者の住所が地番まで記載されていない・電話番号がなく連絡先がEメールしかない。
    (5)支払方法が銀行振込のみといったサイトは注意が必要です。

    また、一般に流通している価格より大幅に安く販売されている場合などは、購入する商品が模倣品でないか十分注意する必要があります。

    Q. 万が一被害に遭ってしまった場合、どのように対応すればよいでしょうか。

    この種の被害は、時間との勝負になります。取引について詐欺が疑わしくなった場合には、支払後でも悩まず、すぐに各地の消費生活センターや警察等に相談しましょう。

    また、消費者庁が設けている消費者ホットライン(188番)に電話すると、身近な消費生活相談窓口を紹介してもらえます。

    クレジットカードを利用した場合には、クレジットカード会社に連絡を入れることも大切です。

    - - - - -

     ありがとうございました。怪しい点といえば、今回問題となったサイトは(1)~(5)すべてで清清しいほど当てはまります。ですので、事前に気づくことが可能なレベルではあります。

     今回筆者としては、どうしても欲しい商品に目がくらみ正常な判断ができなくなっていた。この点が自分自身の問題点であり、相手側もそんな心理にうまくつけ込んだのかと思われます。

     また筆者は今回、弁護士のアドバイスに基づき、該当の銀行に調査を依頼することにしました。銀行は電話相談窓口(ホットライン)をもうけていることが多いので、一応連絡すると良いとのこと。詳細を電話で伝え、後日連絡を待つこととなりました。

     筆者がひっかかってしまった今回のような手口はまだまだたくさんあり、さらに至るところに似たような怪しい日本語のECサイトが乱立しています。皆様も本件を教訓に十分に注意していただければと思います。

    <記事化協力>
    くらた法律事務所・倉田敬利弁護士(Twitter:@fs6lc5m26ZCCG1Q)

    <参考>
    悪質な海外通販サイトのトラブル対応(国民生活センター)
    通販サイトで購入した商品が届かず、販売業者と連絡が取れない(国民生活センター)
    金融犯罪にあった場合の連絡先(一般社団法人 全国銀行協会)

    (たまちゃん)

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