飲食店での客による迷惑行為。以前から度々問題視されてきてはいますが、昨今では迷惑客自らそのようすを動画や写真に記録し、SNSにアップ。「いいね」を集めるための承認欲求からくる行動でしょうが、結果として行為が非難され大炎上となるケースはあとをたちません。

 いっぽうで、SNSにあげずとも「迷惑行為」を行う客は、表に出ないだけで、まだまだたくさん存在します。今回そんな被害にあった店側が逆に、その様子をSNSにアップ。投稿した店側には苦渋の決断があったといいます。今回は投稿を行った店主に、詳しい経緯をうかがいました。

■ 「食べもしないのに」コショウを大量投入する迷惑行為

 投稿したのは、茨城県水戸市で「名古屋コーチン鶏」のラーメンを提供する「中華そば」屋「いっけんめ」。公式Twitter(@toriCafeIKKENME)では普段、ラーメンの写真はもちろん、看板ネコの写真が投稿されるなど、いたって普通のTwitter運用が行われています。

 そんな、中華そば「いっけんめ」では、最近客からの“ある迷惑行為”に頭を悩ませていました。

「こちらのコショウは撤去致します。理由は察して頂ければいいです」

客の迷惑行為にあい、胡椒を撤去する投稿

 問題を表にだすきっかけとなったのは、上記のツイート。3月24日に投稿されたものです。投稿には瓶に入ったコショウの写真が添えられていました。なお、瓶入りコショウは撤去したものの、新たに缶入りコショウ(ブラックペッパー)を設置したそうです。

 この投稿に利用客からは「一体何が起きたのか」と心配の声が寄せられる一方、「まだ そんな輩がいるのですか」「食べ物で遊ぶ人がいるからですね」と、自ずと察する声も寄せられていました。

 その後2日たった3月26日、次の投稿が行われました。

「誤解を招くので公開します。中年男性が食べもしないのにコショウの蓋を取り全部入れ、従業員に酢を要求し、出したら1瓶入れて退店。後からチェックして判明したのでキャップタイプのコショウは撤去。缶タイプのコショウのみの対応としました。今後は必要以上の調味料はお出ししません」

 24日の投稿では、心配した客からの声が多くよせられていました。中には誤解もあったのでしょう。そこで店主は「問題を全て明かす」ことを決意。上記の投稿が行われたのでした。

客の迷惑行為の写真をアップする中華そばや店主

 投稿には店内に設置された防犯カメラの静止画も添えられていました。画像にはツイートにもあるとおり、瓶入りコショウの蓋を外して、中身を全てラーメンどんぶりに入れる男性客の姿が。なお、男性客の姿は個人を特定できないよう、全体にモザイクがかけられ、手元とどんぶりのみが確認できる状態で掲載されています。

 コショウなどの辛み調味料は人によって好みが分かれるため、大量投入する人がいるにはいます。ただし、このケースでは店主のツイートにあるとおり「食べもしないのに」行われています。あとには、大量にコショウと酢が入ったどんぶりが残されていました。

■ なぜSNSに迷惑行為の写真をアップしたのか

 店側がこのような投稿をするという、珍しい展開ではありますが、その結果「さらなる誤解」も生じており賛否両論のようです。今回はなぜこのような行動に出たのか、中華そば「いっけんめ」店主に話を聞いてみました。

―― 今回被害写真を公開した理由についてお聞かせください。非常に珍しいケースだと思いました。

 まず、お客さんを問い詰めたり、晒したりする狙いはございません。

 ただ業界を通してこのような問題があるということを知っていただき、事前に防ぎたいという狙いです。残念ながら今の段階で防ぐ方法がなく、残念な気持ちでいっぱいです。

―― 他のお店でも同じようなことがあるのでしょうか?

 はい、非常に残念ではございますが、我々の業界ではこのような問題が多々生じており困惑しております。

 最近では、寿司屋さんだったり、カレー屋さんだったり多くの飲食店で「いたずら」行為が多発しております。話題となっていますが店が声を上げられず、話題とならないケースがまだまだたくさんあります。その現状を知ってもらいたいです。

―― お客さんからの反応はどうでしたでしょうか

 やはり投稿をしたことで賛否両論ありました。ただ我々としてはこのような状況であることを知っていただき、業界全体の問題であるということを知っていただきたいです。

 声を上げているのはほんの一部であるということを理解していただきたいという思いです。

■ 被害をうけても店が声を上げられずに泣き寝入りするケースが多い

 実は中華そば「いっけんめ」では以前にも、ラーメンの中に「つまようじ」をぶちまける迷惑行為の被害にあっています。その行為に頭を悩ませていたさなかに発生した今回の問題。

 あくまで「問題を知って欲しい」「普段声を上げていないだけで実はこうしたことがあるというのを知って欲しい」という願いからの注意喚起でしたが、中にはそう受け取らずに「店側の私刑」と捉えた人もいたようです。

 筆者は今回電話インタビューで店主から話をうかがいました。その中で感じたのは、店主にとって「被害をSNSにアップ」するという決断は容易ではなかったということ。感情にまかせて投稿したわけではないことは、最初に瓶入りコショウを撤去する、と報告してから2日空いていることでもわかります。

 それでもアップすると決断した理由の中には、「問題を知って欲しい」という理由の他にも、「迷惑行為が周知され」「結果的に減っていくこと」という熱い願いがありました。

 コショウをぶちまける、つまようじをぶちまける、という迷惑客側にとっては周知されたところで「痛くもかゆくもない話」かもしれません。

 しかし状況を知らせることで、少なくともその他大勢の周りの意識を変え、視線を増やすことはできます。

 迷惑客以外の普通の客にとっては「迷惑行為でお店が困っている」「こんな迷惑行為がある」と知れば、もしおなじような行為をしている客を見かけたときには、店員さんに知らせるなりの方法で協力できることがあるかもしれません。

 とはいえ、迷惑行為を完全にゼロとさせることは、現状難しい問題。しかしながら「これは迷惑行為だ」と叫び続けることで、時間はかかっても少しずつでも減らすことはできるのではないでしょうか。

 ちなみに迷惑行為を見かけたからといって、客が直接注意するのは危険。別のトラブルに発展する可能性があります。お店の中の出来事は、店側の管轄。問題をみかけたらまずお店の方に報告するようにしてみてください。

<記事化協力>
中華そば「いっけんめ」(@toriCafeIKKENM

(たまちゃん)