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今年で発足30周年のJリーグ 出不精の筆者がスタジアムでの生観戦にハマった訳

update:

 1993年の発足から今年で30年の節目を迎えたJリーグ。かつては10だったクラブ数は現在では60にまで増え、規模は間違いなく大きくなっているものの、当初と比較してテレビ中継がめっきり少なくなってしまったため、しばらく試合を観ていないという方も多いのではないかと思います。

  •  最初にはっきり言います。ワールドカップでサッカー日本代表の試合を観て面白いと感じた方、熱くなれた方は、近隣のJクラブの試合を観に行くことをオススメします。

     かくいう筆者も昨シーズンの終盤、地元のJリーグクラブである「鹿児島ユナイテッドFC」の試合を生観戦したことをきっかけに、今ではすっかりクラブの虜に。

     オフシーズンの練習を見学したり、試合がない時でも常にクラブの情報を追うようになったりなど、自分でもよくここまでハマったなぁと思うほど。

     一体なぜ短期間でここまで心酔するに至ったのか、今回はサッカー観戦初心者の筆者がその魅力について語っていきます。

    ■ 規模は拡大するもテレビ中継が減ってしまったJリーグ

     Jリーグは現在、J1、J2、J3の3カテゴリー制になり、6県を除いた全国各地に加盟クラブが存在しています。もちろんクラブごとに規模は異なるものの、それぞれが地域に根付いた運営活動を行っているため、たとえ下のカテゴリーであっても街中でクラブのロゴやのぼりなどを見かける機会が増えてきているはず。

     しかしながら、Jリーグは海外トップのサッカーリーグと比較すると、プレーのレベルはどうしても落ちてしまいます。せっかく観るなら、ワールドクラスの選手がしのぎを削る、ハイレベルな試合を観たいという考えは、サッカーファンであれば当然のこと。

     また、強豪国であるドイツ、スペインを破ったことも記憶に新しい、昨年のFIFAワールドカップにおいても、日本代表選手のほとんどが、海外のクラブ所属。サッカーを観るのは好きだけど、知っている選手がいない、少ないというのも、Jリーグが魅力的に映らない理由のひとつでしょう。

     加えて、冒頭にも書いたように、発足時から年を追うごとに、テレビ中継がなくなってしまいました。今では地上波で放送されるのはシーズン開幕戦や天皇杯決勝など、注目度の高い試合を含めて年に数回程度。リモートで試合を観るには、DAZNを始めとする有料放送を契約しなければならなくなってしまったことも、接点が減った要因ではないでしょうか。

    ■ 筆者がJリーグ観戦に赴いたきっかけ

     筆者も、「サッカーは好きだけど、生観戦はしていなかった」人口のうちの一人。

     居住地である鹿児島は、学生スポーツは盛んながらも、プロスポーツについては「不毛の地」と揶揄されることもあるなど、不思議とスポーツ文化が根付かなかった土地柄。ですから、そもそも日常的にスタジアムに足を運んで、プロの試合を観戦するという文化がないのです。

     加えて「鹿児島ユナイテッドFC」が所属するリーグは、国内3部に位置するJ3リーグ。2019年に一度J2に昇格するもその壁は厚く、わずか一年で降格。再びJ3に戦いの場を移し、現在に至ります。

     筆者ももちろん以前から存在は知っていて、試合結果や順位はチェックしていたものの、前述のような理由に加え、当時は試合が開催される週末が忙しいサービス業に従事していたこともあり、現地で生観戦をするには至っておりませんでした。

     このように、決して土壌が整っているとは言えない状況の中でしたが、2022年10月、初めてスタジアムに足を運ぶことになります。そのきっかけは、ベタですが「再びJ2リーグ昇格へのチャンスがあったから」です。

    鹿児島ユナイテッドFCのホーム「白波スタジアム」

     2022シーズン、鹿児島ユナイテッドFCはシーズン折り返し時点で、昇格圏に付ける好調をキープ。「今年は昇格出来るかも」という気運が高まっていましたが、夏以降ケガ人が続出したことや、主力選手の疲労の蓄積などもあり、シーズン終盤にきて失速。昇格圏から外れてしまう危機に見舞われました。

     スマートフォンを片手に、試合結果に一喜一憂する日々。「それならば、地元クラブのために、現地で応援するしかない!」と友人と結託し、第29節、隣県宮崎のクラブ「テゲバジャーロ宮崎」との一戦を見届けるために、鹿児島ユナイテッドFCのホームである「白波スタジアム」に赴きます。

    白波スタジアムの外観

    白波スタジアムの外観

    ■ スタジアムで待っていたのは「熱狂」

     そこで、筆者を待っていたのは、一言で表すならば「熱狂」でした。この熱に当てられ、筆者はクラブに熱中することになります。

     まず驚いたのは、スタジアムに足を運んだサポーターの多さ。この日の来場者数は5000人超えと、シーズン中のJ3リーグの動員数としては異例ともいえる事態。シーズン終盤、昇格圏に上がれるかどうか、という状況でしたから、やはりいてもたってもいられない方が多かったのかもしれません。

    スタジアムの外には大勢のサポーターたち

     試合開始前から、スタジアムの外にはあふれんばかりの人、人、人。グッズ売場には長蛇の列ができ、ベンチでは多くの人がスタジアムグルメをおいしそうに食べている……。こうした光景に、コロナ禍で忘れかけていた「お祭り感」を思い出し、胸が高鳴ったことは今でもはっきりと覚えています。

    スタジアムグルメも魅力のひとつ

     その後、入場手続きを終え、スタジアムに入った瞬間に目に飛び込んできたのは、緑が美しい芝のピッチに、目の前に桜島を望む展望。鹿児島民にとって、桜島は見慣れた存在であるはずですが、スタジアムから見る桜島は、なんだかいつもと違う表情。まるでスタジアムを見守っているような、また違った魅力がありました。

    スタジアムから臨む桜島

    色鮮やかな緑のピッチ

     そして何と言っても、コアサポーターたちのチャントやコールといった、声出し応援の大迫力たるや!ビジター席以外の全来場者が、チームを応援しているような一体感は、まさにプロスポーツのホームゲームならでは。

     たとえJ3といえども、その圧倒される光景に一瞬で心を鷲掴みにされ、気付けば入場時にもらった応援ハリセンが一日でボロボロになるまで叩きまくり。筆者が「鹿児島ユナイテッドFC」にハマった瞬間でありました。

     ちなみに、当日の試合は1-2のスコアで敗戦。先制ゴールを挙げながらも、逆転を許してしまうという結果が悔しくて悔しくて。熱烈な応援があれば勝てる、というほどスポーツは甘くありません。しかし、もうこの時点で「鹿児島ユナイテッドFCが勝利するところが見たい」と、早くも次のホームゲーム観戦を決意していたのです。

     続いて訪れた11月13日の「FC岐阜」戦では、終了間際のゴールで1-0の劇的勝利を収めます。ゴールの瞬間はスタジアムが割れんばかりの大歓声に包まれ、筆者も思わず立ち上がってガッツポーズ。初めて味わう勝利の瞬間は、やはり何物にも代えられない興奮と喜びがありました。

    スタジアムを埋め尽くすサポーター

    ■ スタジアム観戦のポイントは「雰囲気を楽しむ」こと

     と、筆者の例を挙げましたが、もちろんこれが全ての人に当てはまることでないのは百も承知です。しかしながら、昨年開催されたFIFAワールドカップカタール大会での盛り上がり方を見るに、「国内でJリーグ自体がもっと注目を集めてもいいコンテンツである」と筆者は感じます。

     スタジアムを繰り返し訪れる理由は人それぞれで、「好きなクラブを応援したい人」「推しの選手を応援したい人」「マスコットキャラクターが好きな人」「スタジアムグルメが好きな人」「とにかく盛り上がりたい人」などさまざまでしょう。そんなニーズに応える環境が整っているのです。

    スタジアムの外に設置された選手の看板

    鹿児島ユナイテッドFCのスタジアムグルメ

     観戦したいけど、詳しいルールが分からない……という方も、ご安心ください。観戦にサッカーのルールを知っている必要はありません。相手のゴールにより多くボールを入れたほうが勝ち、ということだけ理解しておけば大丈夫です。

     かの「本田圭佑」選手もワールドカップ後、自身のYouTubeで、スタジアムでの観戦を迷っている方に対し「サッカーは見なくていいです、雰囲気を楽しんでください」と提言。「90分間見ようとするとしんどくなるんで、遊びに行く感覚で、リラックスして楽しんで欲しい」とアドバイスをしていました。

     J3リーグでも1000人前後、J1リーグともなると1万人以上という大勢によって作られるスタジアムの雰囲気は、私にとって最高のエンターテインメント。これがシーズン中は毎週末に開催されているのですから、平日の仕事もはかどるようになるというものです。笑

     おひとりさまでも、家族連れでもOK。もしも週末の予定が決まっていない方は、ぜひ一度スタジアムに足を運んでみてはいかがでしょうか。きっと何物にも代えられない熱狂と興奮が味わえると思いますよ。

    (山口弘剛)

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  • 山口 弘剛‌Writer

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    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

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