JA共済は全国の10代~50代を対象に、農業に関する調査を実施。するとZ世代の約45%が地方暮らしを希望、4人に1人が「農業をやってみたい」と回答したそうです。

 さらに農業のイメージは、かつての3K「キツい・汚い・危険」から「やりがいがある・やくにたつ・ゆめがある」の3Yに変化。農業ジャーナリストの小谷あゆみさんも「ハードルは低くなっている」と語ります。

 今回のアンケートは「春の農作業安全確認運動」にあわせておこなわれたもの。現在は地方移住や田舎暮らしが注目されており、10代~50代の男女1万人に地方暮らしに対する意向を聞くと、3人に1人以上(37.4%)が「地方に移住したい・地方に住み続けたい」と答えています。

 さらに年代別で見ると10代が48.9%と最も高く、15歳~27歳のZ世代も45.1%と高くなっていることが明らかに。地方暮らしや農業という仕事への憧れがうかがえます。

3人に1人以上(37.4%)が「地方に移住したい・地方に住み続けたい」

 理由としては農業未経験者の農業へのイメージが変化していることがあげられます。1万人の中から農業経験はないが農業に興味があると答えた600人に、今の日本の農業に対するイメージを質問。

 すると、89.2%が「農業は地域活性化に役立っている」、83.0%が「日本の農業は日々進歩していると思う」、66.7%が「農業に興味を持っている人が増えていると思う」など、農業に対してポジティブなイメージを持つ人が多くなっていることが分かりました。

農業に対してポジティブなイメージを持つ人が多くなっている

 続いて農業に5年以上従事している100人に、農業に携わってきた上での実感を聞いてみたところ、「やりがいがある」(38.0%)、「地域に貢献」(34.0%)、「社会の役に立つ」(31.0%)、「かっこいい」(28.0%)、「夢がある」「喜びがある」(同率27.0%)などポジティブなワードが上位に。

夢がある3Yな職業と考えている

 かつては3K(キツい・汚い・危険)のイメージが強かった農業ですが、現在は3Kを実感する人は少なく、夢がある3Yな職業と考えているようです。

 農業ジャーナリストとして全国各地の農業の現場を取材し、「べジアナ」として活動している小谷あゆみさんは、若い世代が地方暮らしや農業に注目している理由は大きく分けて2つだといいます。

 それは「地方暮らしというライフスタイルへの憧れ」と「ビジネスの視点で見る農業へのチャレンジ」。

 経済が停滞している中で育った今の若い世代は、モノを所有することよりも「誰かの役に立つこと」に価値を見いだす傾向がある。また、「アグリビジネス」と呼ばれるように農業は経済の視点からも見直されていて、就業人口が少ないからこそチャンスも多い状況。農業経営の第三者継承システムも整備され、地域や行政の支援も厚いので、「新規参入のハードルは低くなっている」と語ります。

■ 事故やケガのリスクも

 一方で、農業に5年以上従事している人の7割が農作業中のヒヤリハットを経験。農林水産省の発表によると、令和3年の農作業事故死亡者数は242人というデータも。この現状について「知っていた」と答えたのは、農業未経験者では4.0%、農業従事者でも31.5%にとどまっています。

農業に5年以上従事している人の7割が農作業中のヒヤリハットを経験

 そこでJA共済では、当事者の視点から農作業の事故を疑似体験できるVR映像コンテンツ「農作業事故体験VR」を開発。全国の研修会やイベント、農業関連団体による講習会などでVR動画を活用した学習プログラムを展開し、安全対策の重要性を伝えています。

 農業はやりがいがあって可能性の大きな仕事ではあるものの、どんな仕事もリスクはつきもの。「農業の現場を知らないと、事故やケガのリスクは想像しにくい」と小谷さん。例えば刈払機を使う場合、一見何もなさそうな草むらでも小石や固い枝などが隠れていて、それらが高速で回転する刃に当たると、跳ね返って顔や目に当たり、ケガをする恐れも。

 農作業経験者であってもイレギュラーなことが起きると心の余裕がなくなり、事故につながることもあります。小谷さんは事故やケガも起こりうるリスクとして、「常に自分ゴトとして当事者意識を持つことが肝心」と訴えます。

 小谷さん自身も刈払機の農作業事故体験VRを体験したことがあるそう。実際にケガが起こる様子を見て怖さを実感し、それ以来、家庭菜園でも刃物を扱う時はすごく意識するようになったといいます。「農業に関心がある方は、農作業中の事故についても、情報収集をしてみてはいかがでしょうか」とコメントしています。

情報提供:全国共済農業協同組合連合会