おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】237回 カッコーの娘たち/樹村みのり

 「うちの本棚」、今回ご紹介するのは樹村みのりの『カッコーの娘たち』です。

 三人姉妹のそれぞれの生き方を描いた作品で、樹村みのりのライフワークともいえる母娘関係にも言及した作品です。

  • 【関連:母親の娘たち/樹村みのり】

    カッコーの娘たち/樹村みのり カッコーの娘たち/樹村みのり

     表題作『カッコーの娘たち』は、父が亡くなり、母も長期の入院が必要になったことから三姉妹がそれぞれ親類の家に引き取られることになったのを、カッコーの托卵になぞらえてのタイトル。『母親の娘たち』『海辺のカイン』に先立って母娘関係に言及した作品ともいえるが、ここではまだ娘たちの成長に重点を置いたストーリーとなっている。とはいえ次女のビリーが、展子となり麻子になっていったのは確かだろう。三姉妹がそれぞれ別の環境で暮らしていくことで生じていくすれ違いと絆を描いているのだが、当初は長女が語り手として主人公になるような印象を受けるが、中盤から次女を中心としたものになっていく。三女は幼いため両親の記憶がほとんどなく、長女はそれなりに両親を理解していて、次女だけが中途半端な記憶から、母娘関係のトラウマえ抱えていることから、後半はそのテーマが語られることになる。もっとも本作では母親が精神を病んでいるという設定もあって『母親の娘たち』や『海辺のカイン』で描かれた母娘関係とは少し違うのではあるが。

     それにしても、樹村みのりは人の性格や生きざまを対比するのが達者な作家なようだ。本作でも三姉妹がそれぞれ違った環境におかれるとはいえ、三人三様といえる生きざまが描かれていて、NHKの朝ドラを見ているような感覚になってしまう。というか、こういう作品を実写化してくださいよ(笑)。
    『40-0』はタイトルからもわかるようにテニスを題材にしているが、スポーツ漫画ではない。テニスを通じて知り合った青年と少女の恋物語であり、樹村みのりにしては直球の恋愛ものである。本作は樹村みのりの「月刊ミミ」初登場作品である。
    『海の宝石』は、見ず知らずの少女が「あなたのご主人を殺しに来ました」と登場するミステリアスな出だしだが、『海辺のカイン』でこの出会いのシーンはリメイクされている。
    『ニィおじちゃんの優雅な「苦笑」』は、コメディタッチのホームドラマ、と言えばいいか。樹村みのりらしい作品のひとついえるだろう。
    『わたしの宇宙人』は樹村みのりのラブコメディ! 樹村みのりというと重いテーマの作品を思い浮かべてしまうのだが、一般的には本作や『ふたりが出会えば』『菜の花畑の向こう側』などコメディ調の作品で知られているのではないかと思う。それはそれでいいのだけれど、重いテーマのシリアスな作品も、もっと広く読まれて欲しいし、入手しづらい作品の再刊行などもして欲しい。

    初出:カッコーの娘たち/講談社「月刊ミミ」昭和53年4、6月号、40-0/講談社「月刊ミミ」昭和52年2月号、海の宝石/講談社「月刊ミミ」昭和52年9月号、ニィおじちゃんの優雅な「苦笑」/昭和54年1月号、わたしの宇宙人/小学館「ビックコミック・オリジナル」昭和52年5月1日増刊号

    書 名/カッコーの娘たち
    著者名/樹村みのり
    出版元/講談社
    判 型/新書判
    定 価/350円
    シリーズ名/講談社コミックスmimi(936)
    初版発行日/昭和54年3月15日
    収録作品/カッコーの娘たち、40-0、海の宝石、ニィおじちゃんの優雅な「苦笑」、わたしの宇宙人

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】239回 菜の花畑のむこうとこちら/樹村みのり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】238回 ジョーン・Bの夏/樹村みのり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】236回 母親の娘たち/樹村みのり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】235回 海辺のカイン/樹村みのり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】234回 悪い子/樹村みのり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】233回 雨/樹村みのり

  • 星に住む人びと/樹村みのり
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】232回 星に住む人びと/樹村みのり

  • 土井たか子グラフィティ
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】231回 土井たか子グラフィティ/樹村みのり

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 東京ディズニーランド&シー、9億人目のゲストをお迎え

      東京ディズニーランド&シー、9億人目のゲストをお迎え

      東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを合わせた累計入園者数が1月6日、9億人に到達。運営するオリ…
    2. クマ出没マップ 「FASTBEAR」

      AI集約のクマ出没マップ「FASTBEAR」公開 全国の出没情報をまとめて可視化

      全国のクマ出没情報を地図上で可視化する「FASTBEAR(ファストベア)」の公開が、12月26日に発…
    3. 2026年も大漁!年賀状「隠しデザイン」を本気で探した結果

      2026年も大漁!年賀状「隠しデザイン」を本気で探した結果

      ついに幕を開けた2026年。1月1日の朝といえば、ポストをのぞいて新年のあいさつを受け取る──そんな…

    編集部おすすめ

    1. TOKYO FM、SNS上の「サイバー攻撃」指摘を調査 分析用データの一部流出が判明

      TOKYO FM、SNS上の「サイバー攻撃」指摘を調査 分析用データの一部流出が判明

      株式会社エフエム東京(TOKYO FM)は1月6日、サイバー攻撃や大量の個人データ流出を指摘するSNS投稿について事実確認の結果を公表しまし…
    2. EmEditor公式サイトの不正改ざん問題で続報 「攻撃者の高い執念が感じられます」

      EmEditor公式サイトの不正改ざん問題で続報 「攻撃者の高い執念が感じられます」

      テキストエディター「EmEditor」を提供するEmurasoftは1月4日、公式サイトに関するセキュリティインシデントの続報を公表しました…
    3. 日本自閉症協会、「デジタル自閉症」という表現に反対 誤解や偏見助長を懸念

      日本自閉症協会、「デジタル自閉症」という表現に反対 誤解や偏見助長を懸念

      一般社団法人日本自閉症協会は1月5日、比喩的に使われている「デジタル自閉症」という言葉について、反対する声明を発表しました。協会は、この言葉…
    4. 動画収益は復興支援へ インフィニット、能登半島応援アニメをYouTubeで全2編公開

      動画収益は復興支援へ インフィニット、能登半島応援アニメをYouTubeで全2編公開

      アニメーションプロデュースの株式会社インフィニットは1月1日、「能登半島復興応援企画」短編アニメーションを、YouTubeにて全2編公開しま…
    5. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト