おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

レッドブル・エアレース千葉大会 チームブライトリングが記者会見

いよいよ5月16・17日に迫ったレッドブル・エアレース千葉大会。レースを控え、チームブライトリングの記者会見が東京都内で行われました。

  • 【関連:飛行機レース世界選手権『レッドブル・エアレース』ついに日本開催!グッスマも協力】

    チームブライトリングのパイロット達

    チームブライトリングのパイロット達

    登場したパイロットは、昨年のシリーズチャンピオン、ナイジェル・ラム選手、今年からトップカテゴリーのマスタークラスに参戦しているフランソワ・ルボット選手、そしてアジアから唯一マスタークラスに参戦している室谷義秀選手。会見はトークショー形式で進められました。

    会見はトークショー形式

    会見はトークショー形式

    昨年のシリーズチャンピオン、ナイジェル・ラム選手は2回目の来日。前回は2013年、ブライトリング・ジェットチーム(民間最大のアクロバットチーム)の日本ツアーに帯同してのものでした。

    ナイジェル・ラム選手

    ナイジェル・ラム選手

    翼端のウイングレット(翼の誘導抵抗を低減する働きがあり、旅客機では燃費向上を目的とするが、レース機では速度性能の向上を目的とする)が特徴的な機体、MXS-Rを駆るラム選手。数シーズンに渡ってこの機体を育て上げ、昨年の第3戦マレーシアで悲願の初優勝を遂げた後は、安定した成績を重ねてシリーズチャンピオンを獲得しました。中断(2011年~2013年)前の2010年シーズンも含め、シーズン通して安定した成績を収めているのが最大の特徴です。

    「昨年は幸いチャンピオンになれたけれども、どれも僅差のレースでした。今シーズンは更にタイトなレースになるでしょう。大変だけれども、精一杯頑張りたいと思います。体調については、まだ日本に着いて22時間しか経っていないので万全とは言えませんが、レースまでにはしっかり仕上がります。千葉のトラックは海岸沿いに長く伸びていて特徴的ですが、基本的な要素はどこも変わらないと思っています。ただ、シンプルなレイアウトなので、非常に僅差の争いになるでしょうね。」

    今年からマスタークラスに昇格したルボット選手はフランス空軍出身(元大尉)。名門戦闘飛行隊である1/2「シゴーニュ(コウノトリ)」飛行隊のミラージュ2000パイロット、アルファジェット(フランス空軍のアクロバットチーム「パトルイユ・ド・フランス」使用機でもある)の操縦教官を経て、2002年にパトルイユ・ド・フランスと対をなすフランス空軍アクロバットチーム「L’équipe de Voltige(EVAA)」に参加。2007年~2008年には隊長も務めました。2013年のエアロバティックス(様々なアクロバット飛行で構成される「空のバレエ」)世界選手権の優勝者でもあります。

    フランソワ・ルボット選手

    フランソワ・ルボット選手

    「今年からマスタークラスに昇格して、昨年のチャレンジャークラスよりやることが多く、まだビギナーといった感じです。大きなステップとなるシーズンだと思っています。マスタークラス昇格に当たって、新たな人員をチームに迎えたのですが、素晴らしいメンバーに恵まれました。体調に関しては……ここに並んでいる3人は、同じ『チームブライトリング』とはいえ、ライバルでもあるので『万全です』と言うしかないでしょう(笑)」

    チャレンジャークラスでは、レース主催者側が用意した機体、エクストラ300によるワンメイクレースだったのですが、マスタークラスでは自分で機体を選ぶことができ、エンジンとプロペラを除いては機体の改造も可能です。ルボット選手は、エッジ540V2を選択。これは同じマスタークラスに参戦中のマイク・グーリアン選手から譲られたものだそう。

    フランスでは「ズール(Zool)」というニックネームで知られているルボット選手ですが、これは名前の「ルボット(Le Vot)」をほとんどのフランス人が「ボー(Veau)」(フォン・ド・ボーのボーで「子牛」の意)と発音してしまう(通常、フランス語では語尾のTは発音しないことが多い)ので、軍でニックネームを決める際、英語の辞書で「子牛」に関するいい訳語はないかと探していたところ、同僚がたまたま開いたページで「動物学(Zoology)」が目に入り、その略で「Zool」となったとのこと。

    「ちょっとしたミスが元になったんですよ。それで25年(笑)。ただ、先程日本語で『ズル』って言葉を知ったので、日本語では『ズルい』と思われるんじゃないかとも思ってます」。
    これを受けて、ラム選手が
    「彼が『ズル』しないように見張っとかないといけないね(笑)」
    とジョークを。
    室屋選手は、2009年のレッドブル・エアレース参戦開始当時から、いつか日本で開催したいと夢見ていたということで、様々な(法的・行政的な)規制をクリアして開催が決定してか、感慨無量と話していました(これは開始当初からチェックしていた筆者も同じ気持ちです)。
    「ウチのチームは、日本戦から新型機を投入しようということで準備を進めてきました。4月17日に(室屋選手の本拠地である)ふくしまスカイパークに着きまして、そこからテストを重ねてきました。エッジ540V3にさらに手を入れ『V3.5』ぐらいまで進化させています」

    室谷義秀選手

    室谷義秀選手

    「千葉のコースは、実は今までに4回くらいエアショウで飛んでいるんです。なので、場所を知っていてリラックスして飛べるアドバンテージはあるんじゃないかと思っています。そのことについては、他の2人がいますので解らないように日本語で言いますけど(笑)」

    室屋さんの新しい機体、エッジ540V3は、通常の状態から空気抵抗を低減させる為に、エンジンカウルやコクピット周りが絞り込まれ、すっかりシルエットが変わるくらいの進化を遂げています。これを通称として「V3.5」と呼んでいるのですが、その情報にルボット選手は
    「V3って聞いていたんですが……V3.5と聞いてちょっと驚いています」
    ラム選手も
    「以前の機体(エッジ540V2)でも速く、手強い選手だったので、新しい機体でどれほど速くなるのか……。ただ、どうして(自分のMXS-Rのように)ウイングレットをつけなかったのかな?(笑)」

    ラム選手と室屋選手

    ラム選手と室屋選手

    レースではライバルですが、そこから離れれば同じ「空を愛するもの」。グーリアン選手が以前の機体をルボット選手に譲ったように、選手同士の交流も盛んです。先日、ラム選手は室屋選手を自宅に招待したそう。それを聞いたルボット選手が
    「僕はまだ招待されてないなぁ……」
    というと、ラム選手は
    「イギリスのワイン(イギリスでもワイト島やウェールズ産のワインが知られています)は、フランスのほどおいしくないからね(笑)」
    と、まだ招待してない理由をジョークに包んで話すなど、打ち解けた感じが印象的でした。

    笑顔の3選手

    笑顔の3選手

    注目のレースは16日~17日。今のところ、予選日となっている16日に雨の予報が出ているのが心配ですが……。17日の決勝は、同日20時からNHK・BS1で放送予定です。

    ▼レッドブル・エアレース公式サイト
    http://www.redbullairrace.com

    ▼ブライトリング レッドブル・エアレースサイト
    https://www.breitling.co.jp/redbullairrace

    (取材:咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 2022年のエアレース世界選手権開催断念を伝えるツイート(スクリーンショット)
    宇宙・航空

    エアレース世界選手権2022年の開催断念 新型コロナウイルスと世界経済激変で

  • 2021シーズンキックオフ会見での室屋義秀選手((c) Pathfinder)
    宇宙・航空

    新エアレース世界選手権に正式参戦!室屋義秀2021シーズンキックオフ

  • 2022年開幕の「ワールドチャンピオンシップ・エアレース」公式サイト(スクリーンショット)
    宇宙・航空

    レッドブル・エアレース復活!「ワールドチャンピオンシップ・エアレース」として20…

  • 宇宙・航空

    室屋義秀 福島県内で応援フライト「Fly for ALL #大空を見上げよう」を…

  • 宇宙・航空

    レッドブル・エアレースにUS-2がやってきた!その隠された苦労に迫る

  • 宇宙・航空

    レッドブル・エアレース千葉2019ラウンド・オブ8〜ファイナル4 室屋義秀優勝で…

  • 宇宙・航空

    レッドブル・エアレース千葉2019ラウンド・オブ14 予想外の風に王者ソンカ敗退…

  • 宇宙・航空

    レッドブル・エアレース千葉2019予選 室屋5位 トップはベラルデ

  • 宇宙・航空

    レッドブル・エアレース千葉2019 金曜フリープラクティス 室屋は6位と5位

  • 宇宙・航空

    室屋義秀 最後のレッドブル・エアレース千葉大会直前会見

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 新作ゲーム「裏バイト:逃亡禁止 たつ子の謎」
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「裏バイト:逃亡禁止」の恐怖をゲームで 小学館がマダミス「たつ子の謎」を11月配…

  • 新物板うに手巻きセット(5貫分)
    商品・物販, 経済

    くら寿司、旬の「新物うに」登場 板うに手巻きセットや北海たこうにも販売

  • 無印良品、大盛りカレーを拡充 和出汁仕立てと香味野菜デミグラス登場
    商品・物販, 経済

    無印良品、大盛りカレーを拡充 和出汁仕立てと香味野菜デミグラス登場

  • OpenAI、新動画生成モデル「Sora 2」発表 アプリで“カメオ出演”も可能に
    インターネット, サービス・テクノロジー

    OpenAI、新動画生成モデル「Sora 2」発表 アプリで“カメオ出演”も可能…

  • 将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕
    ゲーム, ニュース・話題

    将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

  • 綾瀬はるか出演CMで新商品「ハピネスミスト」デビュー 洗えない布製品に5つ星ホテルの香り
    商品・物販, 経済

    綾瀬はるか出演CMで新商品「ハピネスミスト」デビュー 洗えない布製品に5つ星ホテ…

  • トピックス

    1. 「フツーの人」と「デブ」の食意識の違いをイラストで可視化 あなたはどっち?

      「フツーの人」と「デブ」の食意識の違いをイラストで可視化 あなたはどっち?

      「もしかして、フツーの人っておなか空いてる時以外おなか空いてないの?」そんな衝撃の(?)問いかけとと…
    2. コーヒーにごま油……!?かどや公式のちょい足しアレンジを試してみた

      コーヒーにごま油……!?かどや公式のちょい足しアレンジを試してみた

      10月1日は「コーヒーの日」。そんな記念日に合わせて、かどや製油公式Xが提案してきたのは……まさかの…
    3. 「えもじの子(仮)」

      LINEの人気キャラ「えもじの子(仮)」が有料で復活 一部未収録に完全復活を望む声も

      つぶらな瞳ととぼけた表情で人気を集めたLINE絵文字「えもじの子(仮)」の無料配布版が10月1日、有…

    編集部おすすめ

    1. フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      「みんなの75点より、誰かの120点」を合言葉にドン・キホーテが展開している偏愛メシシリーズ。10月1日に「本当にこの組み合わせが好きな人が…
    2. 将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      オンライン将棋対局サービス「将棋倶楽部24」が、2025年12月31日をもって終了することが発表された。運営する席主の久米宏氏が10月1日付…
    3. pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      アパレルブランド「pium」が9月30日、店舗スタッフの接客に対する多数の指摘や批判を受け、公式Xにて謝罪文を公開しました。併せて再発防止策…
    4. 「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」のロケ地として知られる静岡市清水区で、作品ゆかりの企画を集めた大型オフラインイベント「清水 ビー・バップ・…
    5. 第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京アニのセカイ展―』

      京都アニ「第7回ファン感謝イベント」追加情報を公開 新商品や書籍予約、グッズ二次予約も発表

      株式会社京都アニメーションは、10月25日・26日の2日間で開催予定の「第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト