2・3・4の符号(コード)こんにちは。咲村珠樹です。今回の「宙にあこがれて」は、航空にかかわる英数字の符号(コード)についてのお話です。

飛行機に乗る際、空港で手荷物を預けると、手荷物には札(バゲージタグ)が付けられ、引換証(クレームタグ)が渡されますね。手荷物に付けられた札に、英数字3文字や2文字の符号が書かれているのはご存知でしょうか?


この3文字の符号、行き先の空港を表すもので「3(スリー)レターコード」といいます。主に旅客関係で使われるもので、国際航空運送協会(IATA)によって、世界中の空港にこのコードが割り振られています。

手荷物に付けられるバゲージタグ

写真一番上の「CTS」というのは千歳空港(札幌)のこと。以下「HND(羽田空港)」「OKA(那覇空港)」「KMI(宮崎空港)」。多くは空港のある都市名の英文字表記を略した形で登録されています。那覇空港の場合は「沖縄」の略、宮崎空港は先に開港していた空港のコードと重なる(MYZもMZKもある)のを避ける為、九州の頭文字「K」を「MI」の前に持ってくる……という、ちょっと苦しい形になっています。

預かり手荷物は、このバゲージタグに記された3レターコードを元に、行き先を指定されています。ここまでは行き先までの指定なので、どの航空会社のどの便に載せるかは判りません。
そこで、もうひとつ記されている英数字2文字の符号が必要になります。こちらは航空会社を表すもので「2(ツー)レターコード」。これも国際航空運送協会(IATA)によって、各航空会社に割り振られています。
こちらはだいたい、航空会社の略称にもとづいたものになっていますが、基本的に早い者勝ちで割り振られ、しかも合併や社名変更がなされた場合、元の会社のコードをそのまま受け継いだりしているので、現行の社名と違っていたりもします。

例えば、日本航空は「JAPAN AIRLINES」から「JL」ですが、全日空の場合は、前身の「日本ヘリコプター輸送(NIPPON HELICOPTOR)」のコードを継承して「NH」となっています(全日空は日本ヘリコプター輸送と極東航空が合併して発足、のちに藤田航空を合併)。日本航空と合併した日本エアシステムは、やはり前身の日本国内航空(JAPAN DOMESTIC AIRLINES)のコードを継承した「JD」を使用していました。

スカイネットアジア航空のコード

ちょっと変わったところでは、このスカイネットアジア航空のコード。
新しい航空会社なので、アルファベットの組み合わせで考えられる「SN(サベナ・ベルギー航空で使用)」、「SA(南アフリカ航空で使用)」、「SJ(アメリカのサザンエアで使用)」がすでに使われており、やむをえず数字を組み合わせた「6J」という2レターコードになっています。

通常、便名を表す際は、この航空会社の2レターコードと便の番号とを組み合わせて表記しています。現在は、これらの情報がバーコードとしてバゲージタグ全面に印字されており、機械で読み取って自動的に仕分けされるようになっています。

この航空会社を表す2レターコードは、旅行会社で海外旅行を手配したりすると、行程表にそのまま「NH010便でニューヨーク(ジョン・F・ケネディ空港)へ……」なんて書かれていたりもしますね。ですから、このコードを覚えておくと、利用航空会社が簡単に判ります。また、有名な空港の場合、コアな航空ファンの間では3レターコードで呼んでいたりします。日本では関西国際空港の「KIX」、海外ではロサンゼルス国際空港の「LAX」やニューヨーク、ジョン・F・ケネディ空港の「JFK」などが代表例。

国際航空運送協会(IATA)では、空港名だけでなく、行き先の都市名にも3レターコードを割り振っており、こちらの方は、主に旅行会社で使われています。空港名と同様、都市名の英文字表記を略したものが基本で、東京は「TYO」、ローマは「ROM」といった具合。

旅行会社で単に行き先を示す時は、この都市名の3レターコードを使ったりしますが、都市によっては複数の空港を持つところもあります。そうすると、どこの空港を利用するのかということが必要になりますから、都市コードだけでなく空港コードも併記することになります。例えば韓国のソウル(SEL)に行く場合、金浦空港(GMP)と仁川空港(ICN)の双方に行く便が設定されていますから、これを区別するために「SEL(GMP)」とか「SEL(ICN)」と表記する必要があります。日本の場合でも、東京(TYO)といった場合、羽田(HND)と成田(NRT)が同じ「東京」扱いになりますから、旅行会社で「東京発ソウル行き(TYO~SEL)」と手配すると「HND~GMP」「NRT~GMP」「HND~ICN」「NRT~ICN」の4つが選択肢になる訳で……ややこしいですね。ザックリとした行き先の都市コード、細かい行き先の空港コードと覚えるといいでしょう。

……と、ここまでは旅客関係で使われる符号。この他、航空行政といった公的な分野で使われる空港コード、航空会社コードがあります。こちらは1947年、国連の傘下に組織された、国際民間航空機関(ICAO)によって定められたもの。基本的に同じ場面で使うことはないのですが、先に発足している(1919年に前身の組織が設立)国際航空運送協会(IATA)の符号と混同することのないよう、文字数が異なっています。空港コードは4文字、航空会社コードは3文字。

航空会社の3文字は、日本航空が「JAL」とか、全日空が「ANA」など、よく知られた略称がそのままコードになっていることが多いのですが、特に空港を表すコードは「4(フォー)レターコード」と呼ばれ、独特の法則にもとづいたものが割り振られています。原則として1文字目が国、2文字目が地域を表すようになっているので、上2文字を見るとおおよその位置が判るようになっているんですね。下2文字は空港を表しますが、各国の主要空港は覚えやすくする為か、同じ文字を重ねる傾向にあります。

日本では「RJ」もしくは「RO」から始まるコードになっており、例を挙げると羽田空港の場合、3レターコードは「HND」、4レターコードは「RJTT」というものが割り振られています。

IATAの3レターコードは民間航空路線が就航している「空港」にしか割り振られていない面がありますが、4レターコードの場合、航空会社が就航していないものも含めて、法律で規定されているすべての「飛行場」に割り振られています。判りやすい例は、自衛隊や軍の基地ですね。陸上自衛隊の木更津駐屯地は「RJTK」、アメリカ空軍の嘉手納基地は「RODN」という4レターコードのみが、それぞれ割り振られています。変わった所では、東京・市ヶ谷にある防衛省。ビル屋上にあるヘリポートにも「RJAI」という4レターコードが割り振られています。

4レターコードの方はあまり目にする機会がありませんが、空港内を走っている車両、例えば乗客を運ぶバスなどのナンバープレートに書かれていて、どの空港に所属しているものかが判るようになっています。空港では、基本的にこのナンバープレートで車両を管理しており、ナンバープレートを装着していない車両は空港内を走ることができません。

ここで面白いのが、官民共用になっている空港の場合。基本的にこういった空港は、自衛隊や軍の飛行場を民間機が間借りしている……といった形になっており、民間機が使用できる部分と、そうでない部分の「縄張り」が存在しています。なので、民間機用の車両が走行できる範囲というのが決められているため、車両についているナンバーにもその旨が表記されます。

茨城空港で使用されている車両

これは航空自衛隊百里基地(RJAH)と共用している、茨城空港で使用されている車両。オレンジ色のナンバーに「RJAH/C」と書いてありますが、これは「百里飛行場の民間部分(茨城空港)の所属」という意味。「C」はCivil(民間)の略で、この車両の場合民間に供されている部分(茨城空港の場合は駐機場近辺と誘導路の一部)しか走行することができません。航空自衛隊百里基地の方へは立ち入れないんですね。

これらのコード、鉄道で使われている、電略(電報略号)と呼ばれるものに似ています。東京駅が「トウ」だったり、運転士が「ウテシ」だったり。どちらも電信・電報時代から、長文の打ち間違い・読み間違いを防止するための略号として決められたもの、という点で、目的は同じといっていいでしょう。ちなみにGoogleマップやGoogle Earthは、3レター・4レターの空港コードに対応しており、コードを入力して検索すると、対応する空港が候補に挙がるようになっています。

航空にかかわる、2・3・4文字の符号(コード)。これを覚えると、あなたも航空ファンの世界を、少しだけ楽しめるかもしれません。

■ライター紹介
【咲村 珠樹】

某ゲーム誌の編集を振り出しに、業界の片隅で活動する落ちこぼれライター。
人生のモットーは「息抜きの合間に人生」
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