最近、さまざまな駅ナカグルメが話題になっています。本格的なイタリアンやスタンドバーなどもありますが、古き良き昔ながらの「駅ナカグルメ」と言えば、やはり立ち食いそばでしょう。各地にある駅の立ち食いそばで、食べ鉄の人から「一度は食べてみて」とよく言われるのが、JR常磐線・我孫子(あびこ)駅の「唐揚そば」。一体どんなものなのか、実際に食べに行ってみましたよ。

 JR常磐線に乗って、やってきました我孫子駅。難読駅名としても知られています。大阪市にも同じ「我孫子」という地名(駅名はJR阪和線・我孫子町駅、大阪市営地下鉄御堂筋線・我孫子駅、南海高野線・我孫子前駅と、阪堺電気軌道阪堺線・我孫子道停留場がある)があります。

 ホーム上に立ち食いそばの店舗を発見。「弥生軒」と書いてあります。入ってみましょう。

 食券の自動販売機を見ると……ありました。唐揚そば。1個400円、2個540円。せっかくだから2個入りにしてみます。下の方を見ると、単品の唐揚(1個140円・2個280円)もあるようです。



 食券をお店の人に渡して…… 「お待ちどおさま」……え。これですか!?

 どーん。巨大な唐揚げが2つ。丼を覆い隠さんばかりの大きさです。なんでも、唐揚げは鶏胸肉が1枚丸ごとで、約170グラムあるそうです。失敗した……1つにしとけばよかった。とにかくすごく……大きいです……。

 1つ食べ終わり、ようやくそばが見えてきました。……予想通り、唐揚げを食べているうちに、ちょっと伸びてしまいました。でもまだ唐揚げ、もうひとつあるんですよね。

 食器の返却口には「ぼくがはたらいていた弥生軒のおそばおいしいよ」という、放浪の画家・山下清の言葉が。山下清は1942(昭和17)年から5年ほど、弥生軒で働いていたそうです。当時は立ち食いそばはやっておらず、我孫子駅で販売する駅弁の包装などをしていたとか。この縁で、1970年ごろまで我孫子駅で売られていた駅弁の掛け紙は、山下清の描き下ろしによるものだったそうです。今ではコレクターの間で珍重されているとか。

 食べている間にも、唐揚そばを注文するお客さんが次々とやってきます。また、単品の唐揚げを持ち帰りで求める人も老若男女問わず大勢。この唐揚げ、駅前にある弥生軒の本社で毎日1300個ほど揚げているそうですよ。弥生軒では、そば・うどん、そしてつゆまで全部自家製だそうです。唐揚そばがメニューに加わったのは、平成の時代に入ってからだとか。

 唐揚そばが食べられる立ち食いそばの店舗は、常磐線・成田線下りホーム(1・2番線)に2ヶ所、常磐線上りホーム(4・5番線)に1ヶ所あります。1・2番線の取手・土浦寄りにある店舗は10月にリニューアルオープンしたばかり。



 弥生軒は我孫子駅と、隣接する天王台駅の構内営業権を持っており、我孫子駅のホーム売店も営業しています。また、立ち食いそば店舗は天王台駅にも存在します。


 寒くなってきて、温かいそば・うどんが恋しい季節。この大ボリュームの唐揚そばは、さらに満足感まで得られるメニューでした。

(咲村珠樹)