古くは『笑点』、最近では『IPPONグランプリ』と、大喜利は日本のお笑い文化の定番としてしっかり根付いています。
しかし、テレビ番組だけでなく、一般人が出場する「大喜利ライブ」が盛り上がっているというと、ご存じない方も多いのではないでしょうか。

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24時間大喜利フェス


約150人もの参加者が頂点を目指す『大喜利天下一武道会』、緊迫感あふれるタイマン対決の『オオギリダイバー』、多彩な企画で魅せる『ペントヴォード』など、実は毎週のように、都内のどこかで大喜利ライブが開かれ、大喜利野郎どもがフリップを掲げているのです。

野郎……そうです、あらゆるイベントで女性優位が定説となっているなか、大喜利の男性比率は実に9割以上と、競輪か競艇なみ! 大喜利こそ、現代に残された男性最後の聖域、非モテ男子の楽園なのです。
そこでは、『アメトーク』でいうところの「中学時代にイケてないグループに属していた」に違いない、童貞臭漂うヲタ男子たち(アラフォーとおぼしき「元男子」も)が、まるで水を得た魚のように、イキイキと「オレ解答」を披露し合っているのです。

驚くべきは、解答のレベルの高さとスピード感! 傾向として、下ネタやゲーム、コミックなどのマニアックネタが多いものの、開始から数秒で答えが飛び交うその光景は、築地の魚市場のような活気にあふれています。
以前、競技ディベートを見学したことがあるのですが、レベル的には遜色ありません。余興としてとらえられがちですが、相当IQが高くないと務まらない、脳トレの一種とも言えそうです。

筆者も「その盛り上がりを体感しよう、できれば舞台上で!」ということで、先日行われた、まる一日大喜利し続けるという狂気の祭典『24時間大喜利フェスティバル』にプレイヤーとして参加してきました。

「24時間投稿フェスティバル」「団体対抗!企画プレゼン対決」など、さまざまなプログラムが組まれるなか、筆者が参加したのは、合計36名で競う「24時間大喜利王決定戦」。
そして予想通り、36名中女性はゼロ! 「文化会系の軍隊」のような、むせかえりそうな密集空間で、脳みそをフル稼働させてきました。

結果は…初戦敗退! 『天下一大喜利武道会』に続き、常連オオギリストたちのぶ厚い壁に跳ね返されてしまいました。
結果はともかく、実際に参加するほどに心地よい刺激に包まれ、「あれを思いつけばよかった」「次はこう答えてやろう」など、脳が大喜利色に染まっていくのを実感します。

なお、「大喜利王決定戦」は男の楽園でしたが、プログラムの中には女性オオギリストのコーナーもありました。そこに出場された「白熊」さん(推定20代)からコメントをいただくことができました。

そもそも、なぜ大喜利を?
「大喜利はもともと、しりとりの感覚で好きでした。でも、 人と大喜利したら楽しそうだけど、レベル的に自分ごときが生大喜利に参加してはならないなぁ…と考えていました。そんなとき『ミス大喜利コンテスト』というイベントに参加してみて、生大喜利のことをもっと知りたくなりました」
ほうほう、でもまわりに大喜利好きの女子は少ないのでは?
「今日、『オオギリダイバー』と『ハガキ職人ナイト』を観に行くのに女友達を一人誘いました。彼女はアマチュア大喜利イベントを観るのが初めてでしたが、「面白い」を連呼していて、6月22日の『天下一チームバトル』も観にいく約束をしました。大喜利、面白いですよねー」

……そうですか。彼女のような「大喜利女子」が増えれば、今後のイベント風景も様変わりするかもしれませんね。
「大喜利ブーム」、そして「女子問題」について、主催者側はどう考えているのでしょう。『天下一』『24時間』主催の松澤茂信さんに話を聞きました。

大喜利、ブームですよねー!
「はやってるのかなー。あんましそういう実感ないです。まあ、囲碁サロンみたいな感じで集まれる場所がぽつぽつできたら、いいな」
24時間ぶっ続けで大喜利という企画は、いったいどうして?
「昨年なんとなく始めて、今年もやってくれというまわりからの声があったから、やっただけなんですよね。来年は、別の人たちに主催してもらおう」
今後の課題であろう女性の取り込みについては…。
「女性客はあきらめましょう」

……この脱力ぶりが、逆にブームを支えるサムシングであるような気もしてきました。こんなテンションでいながら、いざ大喜利タイムになるとイチローばりにヒットを量産するのですから、オオギリストは油断できません。

『大喜利天下一武道会』 http://www.oogiri-1.com/
『オオギリダイバー』 http://blog.livedoor.jp/oogiridiver/
『ペントヴォード』 http://pentvoard.jimdo.com/
『24時間大喜利フェスティバル』 http://blog.livedoor.jp/oogiri24h/

▼文:青木ポンチ
漫画系の編集プロダクション→情報誌編集部を経て独立、PN「青木ポンチ」として取材・執筆活動を始めました。編集・ライターとしてのキャリアは15年以上となる、四十路草食系男子です。得意分野は社会・エンタメ全般(テレビ・芸能、街ネタ・グルメ、自然食、社会問題など)。文筆活動のほか、大喜利大会に出場したり、新宿・ゴールデン街に一日バーを出店したりと、無節操に活動を展開中。
ブログ:http://ameblo.jp/studiopocket/ ツイッター:http://twitter.com/studiopocket