オーストラリア空軍の戦闘機パイロット、フィリップ・フローリー少佐が2018年6月29日、空軍を退官しました。フローリー少佐は66歳。戦闘機パイロットとしては世界最年長として知られています。「特別な日々を過ごさせてもらった。しかし、どんなことにも終わりがくる。今日がその日なんだよ」という言葉を残し、1969年にオーストラリア空軍に入隊して以来49年半、1万時間以上の飛行時間をもって、軍人としてのキャリアを終えました。
フローリー少佐がオーストラリア空軍に入隊したのは1969年1月10日のこと。最初は見習い兵としてのスタートでした。
見習い兵の運命が変わったのは1974年。運良くパイロット候補生に選抜され、とんとん拍子にパイロット養成課程をクリアし、憧れのウイングマークを手にします。そして戦闘機パイロットに……とはうまくいきませんでした。
フローリー少佐によると「ウィリアムタウン空軍基地での戦闘機パイロット養成課程に入ったはいいが、最初は落第してしまってね。C-130ハーキュリーズ輸送機のパイロットとして5年ほど飛ぶことになった。ハーキュリーズを飛ばす日々も楽しかったけれども、やっぱり戦闘機パイロットになりたいという気持ちを抑えられなくてね。ウィリアムタウン基地のパイロット養成課程に再度チャレンジし、今度は無事卒業できたんだ」。
戦闘機パイロットとなったフローリー少佐は、ミラージュIIIのパイロットとして5年間勤務。その後ポイントクック基地で飛行教官を2年半務め、再びウィリアムタウン基地へ舞い戻ります。フローリー少佐は振り返ります。「まずはアエルマッキMB-326の飛行教官を経て、次にF/A-18に乗ることになった」
F/A-18のパイロットを務めている間、フローリー少佐は第76飛行隊で副隊長と飛行隊長を歴任します。その後サウジアラビアへ赴任。5年後の2002年、再び第76飛行隊へ予備役将校として戻ってきました。以来16年、途中の2012年には60歳の還暦を迎えつつも戦闘機パイロットとして飛び続けてきたのです。
オーストラリア空軍が創設されて、今年で97年。フローリー少佐の軍歴は、その歴史の半分以上を占めます。まさに伝説的パイロットと言えるでしょう。その間に飛行機は格段の進歩を遂げました。フローリー少佐によれば「戦闘機パイロットとしては、その戦術は年々進化し、その基礎はより複合的になって能力を高めてきた。飛行教官としては、デジタル化していく機器に慣れるのに少々手こずったね」とのことです。
飛行教官として、フローリー少佐はこれまで500人近くの戦闘機パイロットを育ててきました。フローリー少佐によれば「現在在籍する戦闘機パイロットのうち、教え子はかなりの割合を占めているよ。正確に言うと、私が育て上げたのは499人だ。惜しくも500人と切り良い数字にはならなかったね。しかし、これは私の誇りだ」。
ラストフライトは、第57/58次戦闘機パイロット養成課程の学生たち12名と、第76飛行隊のホーク127練習機で行われました。妻のケリー・アンさん、そして息子のスティーブンさんに見守られて、フローリー少佐は長い長いミリタリーパイロット人生に別れを告げたのでした。
Image:(C) Commonwealth of Australia, Department of Defence
(咲村珠樹)