フランス航空宇宙軍には、アルファジェット練習機を使った「パトルイユ・ド・フランス」をはじめ、エクストラ300を使用したエアロバティック競技チーム(EVAA)、ラファール・ソロディスプレイといった広報ディスプレイチームが存在します。これに2020年、ラファール2機による「ヴァトゥー・ブラボー(Vautour Bravo)」が新たに加わりました。

 フランス航空宇宙軍には複数の広報ディスプレイチームが存在し、各地のイベントで広報活動を実施しています。代表的なものが、アルファジェット練習機を使用した「パトルイユ・ド・フランス」。フランス航空宇宙軍の広報大使として、国内外のエアショウで飛行しています。

 各地のエアショウで、飛行機単体の能力を分かりやすく見せているのが「ラファール・ソロディスプレイ」と「アルファジェット・ソロディスプレイ」。主力戦闘機のラファールと、練習機アルファジェットの高い機動力をアピールします。


 また、パイロットの高度な操縦技量を見せているのが、エアロバティック競技チーム(EVAA)。飛行機の操縦技量世界一を決める、エアロバティック世界選手権で優勝を重ねるなど、世界屈指の実力を持つ存在で、レッドブル・エアレースに参戦したフランソワ・ルボット選手は、チームの元隊長です。

 このほかにもパラシュートディスプレイチームや音楽隊、変わったところでは公式認定アーティスト(画家、写真家、彫刻家など多彩な美術分野)が、それぞれの立場でフランス航空宇宙軍を広報する活動に従事しています。


 ラファール2機によるディスプレイチーム「ヴァトゥー・ブラボー(Vautour Bravo)」は、これまでミラージュ2000によって編成されていた戦術飛行ディスプレイチーム「ラメックス・デルタ」「コトー・デルタ」の後継となるもの。ラファールそのものの性能を見せる「ラファール・ソロディスプレイ」と違い、戦術機としてのラファールを見せるチームとなります。

 チーム名の「ヴァトゥー(Vautour)」とは、フランス語でハゲタカの意味。当初は「ルージュ・ヴィクター(Rougues Victor)」の名称でアナウンスされましたが、最終的に「ヴァトゥー・ブラボー」として2020年1月に発足しました。

 拠点となるのは、フランス南西部の第118モン=ド=マルサン空軍基地。パイロットは編隊長のジュリアン大尉と、ウイングマンのジャン・フィリップ大尉の2名で、単座のラファールCを使用します。

 およそ10分間のディスプレイ飛行は、2機によるタイトな編隊飛行や連携しての機動飛行などを通じ、ラファールがどのように実戦で運用されるのかを見せるもの。ジュリアン大尉は「ラファールの戦術機動飛行を、まだ見たことがない皆さんと共有できることは非常に光栄です」と語っています。

 戦術面での動きを見せるため、時には地上へ向かって降下しながらの爆撃や、機銃掃射といった地上攻撃を模した飛行も。実際のエアショウでは、迫力ある飛行が見られることでしょう。

 残念ながら、新型コロナウイルスの感染拡大により、現在は観客を集めてのエアショウが開催できない状態が続いています。そのため、チームのデビューもいつになるか分かりませんが、訓練を重ねているジュリアン大尉は「状況が好転すれば、すぐにでもお見せできますよ」と、エアショウの再開を心持ちにしています。

<出典・引用>
フランス航空宇宙軍 ニュースリリース
Image:フランス航空宇宙軍

(咲村珠樹)