おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

泣き叫ぶ子どもはパニック状態 落ち着かせるための「方法」を示すカード

 街中や買い物先、交通機関などのなかで泣き叫んでいる子どもを、保護者があやすことなく放置しているように見えること、往々にしてあると思います。あやさず放置していることに、不満や憤りを感じる人もいると思います。

 しかし、その「放置」がなぜ行われているのか。その理由を示すカードが考案され、子どものパニックに困っている親を中心に関心が寄せられています。

  •  このカードは、イラストレーターで3児の母でもある、たきれいさんが考案した物。たきさんのお子さん自身が発達に特性があり、子どもたちとどう接していけばいいのか模索している状態なのだそう。

     そんなたきさんが考案したのが、「クールダウンお知らせカード」。「お子さんがパニックを起こした時、あやすのではなく、クールダウンさせることがあると思います。通りかかりの人に白い目で見られて胃に穴が空きそうな親御さんのために『クールダウンお知らせカード』を作りました」と、パニックになって泣き叫んでいる時の子どもを、周りの知らない人たちからみた様子、その知らない人たちに対し説明したくてもできない状態な保護者の様子、そして、「クールダウンお知らせカード」の実物画像をツイッターに投稿しています。

     画像の1枚目には、子どもが大声で泣いており、隣でスマホをみている親の姿。周囲からは、「泣き声が気にならない?」「子どもよりスマホに夢中になっている?」「しつけするつもりがない?」「なぜ子どもから目をそらすの?」「育児放棄?」「周りの視線は感じない?」そんな周囲の声が親に向かって飛んできています。

     しかし、2枚目の画像には、「一方、見た目は同じですが、事情がある親子もいます」と、1枚目の周囲の声たちに対する答えが。

     あやしたり話しかけだけでは落ち着かない子もいる、子どもをクールダウンさせるために敢えて子どもを見ないようにしている、でも周りの視線は痛いほどに感じるし胃に穴が開きそう……。周囲の声に対して、声を大にして言いたい親の本音がそこにあります。

     この状態を端的に伝えることができるように、と、「クールダウンお知らせカード」を紹介しています。A4サイズでプリントしてクリアファイルなどに入れて見やすいところにおけば、泣き叫ぶ子どもをただ放置しているわけではないことを伝えることができます。

     この内容に、たくさんの反響が。「昔からダタを捏ねる子は置いて行くぞ!と言うのがありますがアレと同じですね」と、そういえば昔はそんなことを言われたような覚えがある、似たような方法を思い出す人や、「知的ハンデを持つ自分にも使える」「親御さんがまず理解することが大事だけど、それも含めて周りに分かりやすく周知させるために活用できそう」といった意見。

     「発達障害のない子どもでも、『騒いでも相手にされない』『大騒ぎしても親は思い通りに動かない』とわからせることが、認知行動の観点では大切です」と、認知行動療法的な視点でのコメントなど、様々な反響が寄せられています。

    https://twitter.com/kumokun8/status/1162323695274082304

    ■ 発達段階にある子どもが大人に求めているもの

     子どもは感情を言語化することが難しいものです。語彙力が育っていない上に感情と言葉が結び付きにくいうちは、怖い・嫌などといったマイナス感情を言葉に出して感情を処理することが上手くできず、しばしばパニック状態に陥り泣き叫んだり暴れたりします。

     そんな時、無理に泣き止まそうとあやしたり触ったりするのは却って逆効果となることがほとんど。発達障害があればなおさらその傾向は高まります。

     子どもであれば幼ければ幼いほど、大人の「普通」が通じないものです。時には、「どうしてこんな事で怒って泣くの?」と思わされることも多々あります。子どもにとっては不快なことで、しかしその不快を自己処理できる能力はまだありません。それが、泣き叫んだり、時には大暴れになるといった表現として出てしまうのです。ただ、大人になってしまうと、幼児の頃、自分が何を感じてどう表現していたかなんて、記憶に残るほどの大きな出来事でもなければ覚えてないでしょう。

     だから、大人が子どもの幼さに上手く対処できる方法を考え、実践していくことが必要となってくるのです。パニックに陥った子どもを落ち着かせるために必要な、誰にも触れられない時間を作るのもその方法のひとつ。

     発達障害などの脳の特性があると、快・不快の感情の揺れ幅も大きく、発達障害特有の感覚過敏により、音や光、触覚、嗅覚などあらゆる刺激に敏感に反応し、不快ととらえるものも多くなります。発達障害がある人が生き辛さを感じるのは、その感覚に対する過敏性も多分に影響しています。

    ■ 発達障害児がクールダウンの方法を学び取るまで

     実は、筆者の二人の娘も発達障害。中学生になり、思春期という難しい時期にありながらも、小学生の頃よりかはだいぶ落ち着いてきました。それは、「自分の感情が今どうなっていて、周りは自分に対してどうしてもらいたいのか」を少しずつ積み重ねて学び取ってきた結果。

     自分の感情を言語化することができるようになり、「今は話しかけないで」「しばらく部屋にこもっていたい」という表現ができるようになったのは、精神面での成長とともに、娘たちに関わってきた大人たちが理解を示し、時には「こういう気持ちの時は、しばらく落ち着くまで自分を静かなところに置いてごらん」「感情がよく分からない時は、落ち着くところでしばらく静かにしてみたら」といった助言もあったから。

     しかし、そうした大人たちがいる反面、強く怒れば大人しくなるという偏った考え方を持つ大人にも接してしまったがために、今でも怒号や大声、特に男性に対する強い恐怖と嫌悪感を持つようになってしまいました。

     もっと早く、子どもたちの特性について分かってそんな大人から守ることができていれば……と、親としての後悔はつきませんが、こういった例もあるので、どうか周りの大人は大声で怒るのではなく、静かにスルーしてもらえると嬉しく思います。

    <記事化協力>
    たきれい(子育て模索アカウント)さん(@kumokun8)

    (梓川みいな)

    あわせて読みたい関連記事
  • 「二手に分かれよう!」 公園で出会った友だちとの“一緒に遊ぼう”に大人は困惑
    インターネット, おもしろ

    「二手に分かれよう!」 公園で出会った友だちとの“一緒に遊ぼう”に大人は困惑

  • 幼稚園イベントに行けなかった3歳娘のために……母が用意した「おうちぶどう狩り」にほっこり
    インターネット, おもしろ

    幼稚園イベントに行けなかった3歳娘のために……母が用意した「おうちぶどう狩り」に…

  • 危険なテレビ裏に突撃する我が子 近寄らせないために「化け物」を仕掛けた結果
    インターネット, おもしろ

    危険なテレビ裏に突撃する我が子 近寄らせないために「化け物」を仕掛けた結果

  • コストコのクマさん
    インターネット, おもしろ

    「クマさんが見てるよ」言っても聞かない我が子への“愛ある最終手段”

  • まさに育児あるある 探し物が見つかったのはまさかの「おもちゃの中」
    インターネット, おもしろ

    まさに育児あるある 探し物が見つかったのはまさかの「おもちゃの中」

  • 「ママ」と「パパ」を逆に覚えている?2歳児の言葉の使い分けが興味深い!
    インターネット, おもしろ

    「ママ」と「パパ」を逆に覚えている?2歳児の言葉の使い分けが興味深い!

  • 畑を見守る「ちっちゃいベテラン」 1歳児の後ろ姿が貫禄ありすぎ
    インターネット, おもしろ

    畑を見守る「ちっちゃいベテラン」 1歳児の後ろ姿が貫禄ありすぎ

  • 「1億点」獲得!硬筆教室で年長娘が叩き出した超高得点にほっこり
    インターネット, 感動・ほのぼの

    「1億点」獲得!硬筆教室で年長娘が叩き出した超高得点にほっこり

  • あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!
    インターネット, おもしろ

    あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

  • 「少し早い厨二病」……かと思いきや 小3男子のユーモアに脱力&爆笑
    インターネット, おもしろ

    「少し早い厨二病」……かと思いきや 小3男子のユーモアに脱力&爆笑

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分けが装置爆誕
    インターネット, おもしろ

    エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分け装置が爆誕

  • トピックス

    1. これでもう怒られずにすむ? 息子が作った「ママの攻略本」の実力は

      これでもう怒られずにすむ? 息子が作った「ママの攻略本」の実力は

      親に怒られてしまった子どもが、その後に取る態度はさまざまです。落ち込む子もいれば、しっかり反省する子…
    2. 警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

      警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

      インターネットを使っていると、ふとした瞬間に現れる「警告ポップアップ」。 近ごろでは「サポート詐欺」…
    3. 母に何気なく70年万博の話をしたら……“55年前の資料”にテンション爆上がり

      母に何気なく70年万博の話をしたら……“55年前の資料”にテンション爆上がり

      大阪・関西万博をきっかけに、55年前の1970年の大阪万博(以下、70年万博)に興味を抱くようになっ…

    編集部おすすめ

    1. 「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      言わずと知れた人気コンテンツ「ちいかわ」。かわいくもハードなあの作品世界に入っていきたいと願う人は多いはず。筆者もその1人です。しかし二頭身…
    2. ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      キーボードに差し込まれたトランプのジョーカーと、その裏に書かれた「げぇむすたあと」の文字。Xユーザーの「たーけ」さんが、たまたま入ったネット…
    3. フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      「みんなの75点より、誰かの120点」を合言葉にドン・キホーテが展開している偏愛メシシリーズ。10月1日に「本当にこの組み合わせが好きな人が…
    4. 将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      オンライン将棋対局サービス「将棋倶楽部24」が、2025年12月31日をもって終了することが発表された。運営する席主の久米宏氏が10月1日付…
    5. pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      アパレルブランド「pium」が9月30日、店舗スタッフの接客に対する多数の指摘や批判を受け、公式Xにて謝罪文を公開しました。併せて再発防止策…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト