日本には多くの魅力的なラーメンがありますが、チェーン店は最もなじみ深いものかもしれません。その店舗分布を可視化したTwitterの投稿が、それぞれの個性まで明らかにしていると話題です。

 ラーメンチェーン店舗の分布状況を日本地図に当てはめ、可視化したのは、田村健さん(@tamu_data)。ヤフーでデータ可視化エンジニアをしてらっしゃいます。Twitterで田村さんが紹介したのは、全部で16のラーメンチェーン。

 マップでは、それぞれのチェーンが出店している場所を日本地図上に黄色い点で示しています。では、チェーンごとに見ていきましょう。

 まずは幸楽苑。1954年、福島県会津若松市で創業した「味よし食堂」からスタートしたラーメンチェーンです。現在も本社は福島県(郡山市)。創業の地である福島県のほか、関東地方を中心とした東日本に集中しているのが分かります。線状に店舗が連なっている部分がありますが、これは栃木県から福島県郡山市を通っている国道4号線。太平洋側の海岸線は国道6号線です。いわゆる「街道沿い」の出店パターンになっていますね。

 愛知県では知らない人がいないほどのラーメンチェーンであるスガキヤ。カップラーメンやインスタントラーメンでも知られますが、飲食店舗はスガキコシステムズ、インスタントラーメンなどは寿がきや食品という別法人となっています。

 もともとは1946年、名古屋の中心部である栄に「甘党の店」という名前で創業したスガキヤ。ラーメンがメニューに加わったのは1948年で、この時店名が「寿がきや」となります。法人化したのは1958年。マップを見ても分かるように愛知県に集中出店していて、フードコート店舗も多いのが特徴。

 京都発祥のこってりラーメン、天下一品は1971年創業。もともとは屋台からスタートし、現在は国内のほか、ハワイにも2店舗展開しています。

 店舗の分布を見てみると、やはり創業の地である京都や大阪が多く、もうひとつの核として東京都内に集中。特に23区に集まっているのが分かります。あとは県庁所在地に出店しているようですね。

 京都風醤油味の背脂系ラーメンが特長の来来亭。歴史は意外と浅く、1997年に滋賀県野洲市で1号店がオープンしています。現在の本社も野洲市。

 創業の地である滋賀県は、西に京都・大阪、東に名古屋がある関係で、東西に出店していったのが分かります。京都・大阪と名古屋周辺に集中しているほか、さらにJR山陽本線方面と、JR東海道本線方面へと店舗が連なっています。北陸本線沿いに福井、石川にも出店していますね。

 醤油とんこつラーメンで知られる、らあめん花月嵐。東京の荻窪に本社があり、創業は1992年。当初の屋号は「ラーメン専門店花月」でした。別業態のラーメン店に「ちゃぶ屋とんこつらぁ麺CHABUTON」があります。

 店舗は直営店のほか、フランチャイズ店や、従業員による「のれん分け」システムがあるのが特徴。修行して独立する流れがウリということもあり、市場規模の大きい東京、川崎、横浜、千葉と南関東の都市圏に店舗が集中しています。

 熟成醤油がポイントの「肉そば」で知られる丸源ラーメンは、各店舗に大きな駐車場を設けているのが特徴。もともとは1949年、愛知県豊橋市におでん屋「酒房源氏」として創業し、丸源ラーメンは2001年、愛知県安城市にオープンしたのが始まり。焼肉食べ放題の「焼肉きんぐ」も同じ会社が手がけています。

 店舗は、企業がフランチャイズに加盟して展開しているのも特徴で、東海地方は直営が多いのですが、関西方面では別の会社がフランチャイズ契約して展開しています。このため、割と地域ごとに小さな集まりができているのが分かります。

 屋号から横浜家系ラーメンを想像するラーメン山岡家は、横浜発祥ではなく1988年の茨城県牛久市に1号店を出店しています。もともとは丸千代商事というお弁当屋さんでした。

 出店ポリシーとして直営店にこだわり、ロードサイド店をメインに展開しています。北海道の店舗は「株式会社山岡家」という別法人を立ち上げて展開していましたが、2002年に山岡家が丸千代商事を吸収合併。このため本社のある北海道札幌周辺、そして創業の地である北関東に店舗が固まっていることが分かります。

 ロードサイド店舗が多いことで知られる、くるまやラーメン。本社は東京都足立区綾瀬にあります。創業は1968年。

 店舗はフランチャイズ方式で展開していることもあり、関東地方の街道沿いに集中しています。ロードサイド店舗では幸楽苑も同じですが、より関東に集中しているということは、近中距離のルート配送を担当するトラックなど、プロドライバーにターゲットを絞っているのかもしれません。茨城県鹿嶋市付近には、国道51号線沿いにトラックステーションがある物流拠点です。

 京都北白川、という具体的な地名が看板に書かれているラーメン魁力屋は、特製醤油がウリのラーメン。2005年創業で、本社は京都の真ん中、四条烏丸にあります。

 店舗は大都市圏を中心に展開しています。本拠である京都・大阪のほか、東日本では東京・横浜に集中。名古屋や東海道沿いのほか、東北最大の都市である仙台周辺にも出店。手堅く展開しているようです。

 博多ラーメンのニューウェーブとして、1985年に大名で創業した一風堂。オシャレな店舗で評判を呼びました。

 店舗は、地元の福岡県で大きく展開せず、福岡市内の6店舗のほかは太宰府市にあるだけ。むしろ1995年、恵比寿に進出したのをきっかけに、東京周辺に店舗が集中しています。他の地域も核となる都市に絞って出店しているのが分かります。

 ラーメンを味わうことに集中してほしい、とパーティションで個別に仕切られた独特の「味集中カウンター」が有名な一蘭。1993年に福岡市の那の川で創業しました。

 店舗は福岡市、北九州市、太宰府市と福岡県中心に展開したあと、2001年からは六本木店を皮切りに東京都内で店舗数を拡大。東京23区内にひしめくほか、2007年から進出した大阪、名古屋にも店舗が広がっています。

 九州、というよりも熊本ローカルといってもいいのが、味千拉麺。1968年の創業以来、国内で75店舗を展開しています。

 店舗マップは見事に熊本県内、特に熊本市近郊を中心に広がっています。このほかに目立つのは四国の高知市、松山市周辺。しかし、味千拉麺のすごいところは、このマップの範囲外にあります。なんと海外店舗は日本の10倍以上となる811店舗が存在するのです。日本より海外で見かけるラーメン店かもしれません。

 喜多方ラーメンの有名店、板内(ばんない)。1988年の創業は喜多方市ではなく、実は長野県東御市(東部町)。喜多方市にあるラーメンの名店「坂内食堂」がラーメン作りに協力し、チェーン展開しています。

 創業の翌年、1989年には本社を東京に移転。以来、東京で喜多方の味を伝えています。こういった事情から、店舗の展開も東京・川崎・横浜に集中。東北地方の店舗は岩手県奥州市(水沢)のみとなっています。

 1972年、京都で屋台からスタートしたラーメン横綱。実店舗となったのは1977年、現在の吉祥院本店が最初です。

 以来、店舗は京都・大阪を中心に展開。近畿地方以外では1991年の三重県(川越店)が初めてで、1996年からは愛知県に本格進出しています。関東進出は2016年の千葉県柏市が最初。しかし積極的に関東で展開することはなく、地元と名古屋という地盤を大事にしているようです。

 北海道旭川市が発祥のらーめん山頭火。誕生のきっかけは伊丹十三監督の映画「タンポポ」だったといいます。

 1988年に創業したあとは口コミで評判となり、マスコミに取り上げられる有名店に。1995年からフランチャイズ展開を本格化させたといいます。しかし大きく広げるのではなく、大都市にポツポツと、手の届く範囲に店舗数を抑えているのが特徴。このほかに味噌ラーメンの「らーめんえぞ梟」、つけ麺の「めん家 竹次郎」という店舗も運営しています。

 鶏ガラとんこつの屋台ラーメンを看板に掲げる、よってこや。餃子の「大坂王将」を展開するイートアンドが運営するラーメン店で、1997年からフランチャイズ展開をしています。

 まだ歴史が浅いこともあり、店舗は東京、大阪周辺のほかは愛知県岡崎市と静岡市。このほかにイートアンドは、トマトラーメンの「太陽のトマト麺」や「ローストビーフ油そば ビースト」という形態のラーメン店も展開しています。

 このような可視化データは、チェーン店単独でなく、複数のチェーンを比べることで、それぞれの個性が見えてくるもの。田村さんはラーメン店のチェーンだけでなく、ハンバーガーやファミリーレストラン、回転寿司、うどんのチェーンでも店舗展開を可視化したデータを紹介しています。同じ飲食店でも、業態によって変化があるので、見比べてみると新たな発見があるかもしれません。

<記事化協力>
田村 健/データ可視化人間(@tamu_data)さん

(咲村珠樹)