ノースロップ・グラマンとその子会社スペースロジスティックスは、運用を終えた人工衛星に軌道上でモジュールを追加し、寿命を延長させることに成功したと2020年2月26日(現地時間)に発表しました。これは宇宙ゴミ(スペースデブリ)を減らすことにもつながります。

 現在地球を周回している人工衛星は、搭載している機器の劣化や軌道修正用エンジンの燃料不足により、数年から20年程度で使えなくなってしまいます。一部の衛星の場合、残った最後の燃料で軌道を離れ、地球の大気圏で燃え尽きる形で処分されることがありますが、そうでないものは地球を回り続けることになり、後継の衛星も打ち上げられるので、地球を回る「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」と呼ばれる人工物の増加が問題になっています。

 宇宙ゴミ(スペースデブリ)の増加は、衛星同士が衝突して、さらに細かいデブリを大量に発生させてしまうだけでなく、地上から天体撮影を行う研究者たちにとっても、撮影した画像の上を人工衛星などがいくつも横切って筋を作り、小惑星などの天体を観測する上で妨げとなる存在。そこで人工衛星の打ち上げを抑制するため、運用期間を終えた人工衛星に新たなモジュールをドッキングさせ、新たな働き場所で再利用するという手法が考案されたのです。

 今回の対象になったのは、2001年6月9日に打ち上げられた通信衛星「インテルサット901(IS-901)」。ヨーロッパと大西洋地域におけるデータ通信を担う目的で、西経67.5度の位置に打ち上げられた静止衛星です。静止衛星は軌道高度が約3万5786kmと高いため、寿命が尽きた場合は地球に落下させることが難しく、300kmほど高い専用の「墓場軌道(Graveyard Orbit)」へと移動させて運用を終了させることになっています。

 2019年10月9日、バイコヌール宇宙基地からプロトン-Mロケットによってインテルサット901の後継となる通信衛星、ユーロサット・ウエストBが打ち上げられました。その時一緒に搭載されていたのが、インテルサット901の寿命を延長する「ミッション・エクステンション・ビークル1(MEV-1)」です。

 MEV-1は電気推進で高度を上げ、ユーロサット・ウエストBに場所を譲って墓場軌道へと移ったインテルサット901とランデブー状態に入ります。2020年2月25日、備え付けられたツメでインテルサット901を掴み、ドッキングすることに成功しました。



 ドッキングの成功を受け、インテルサットのマイク・デマルコ副社長は「インテルサットは長年宇宙技術で最先端かつ画期的なイノベーションを起こしてきました。私たちには、これまでの境界をさらに拡張するというDNAが息づいています。MEV-1の最初の顧客として、名乗りをあげたのは当然のことです」とコメントしています。

 ノースロップ・グラマンによると、今後一体となったインテルサット901とMEV-1は、墓場軌道上で状態のチェックをしたのち、3月には再び静止軌道まで降下して、今度は新しいサービス範囲となる西経27.5度の場所に入るとのこと。新しい働き場所でインテルサット901は、さらに5年ほど運用を継続。運用期間終了後はMEV-1によって再び墓場軌道へ投入され、MEV-1は新たな任務に備えてインテルサット901と分離する予定です。

<出典・引用>
ノースロップ・グラマン ニュースリリース
Image:Northrop Grumman

(咲村珠樹)