毎週水曜連載の『うちの本棚』、第二回目となる今回は、石ノ森章太郎の『G・Rナンバー5(修繕屋)』についてご紹介。
掲載誌の「パワァコミック」はまったく見たことがないのでこの作品も単行本が出てから初めて知ったのだが、当時マンガ好きな兄がいるクラスメイトがしきりに『修繕屋』という作品のタイトルを口にしていたので気になってはいた。で、ようやく単行本でそれが『G・Rナンバー5』だということがわかったというようなコトである。
主人公のアキラは事故で生死をさまよい、サイボーグとして命を取り留める。事故で家族を失い天涯孤独となったアキラは、サイボーグ手術で自分を助けてくれたドクター猿丸(この博士も自分の脳をゴリラに移植している)の家で暮らすことになる。
アキラといっしょに保護されたロリという少女は異次元から追われてこちらの世界に逃げてきたといい、ロリの住んでいた世界の科学者が次元の裂け目を自由に作る装置を開発し、こちらの世界を侵略しようとしているという。
そこでドクター猿丸を中心に、侵略を阻止し,次元の裂け目を「修繕」するグループが作られる。つまりこれが第二部の連載タイトルにもなった「修繕屋」のゆえんである。ちなみに「G・R」は「グループ・リペア」の略。
グループのメンバーはドクターにアキラ、テレパシーと変身能力のあるロリ、そしてドクターが作ったロボットのガラクタ、人造人間のヒューである。
ヒューのキャラクターが『サイボーグ009』の004にそっくりでもあり、主人公がサイボーグということもあって、『~009』に似た印象が強いが、どちらかいえばアキラとヒューのコンビは『佐武と市』に近いような気もする。
萬画大全集のガイド本の解説によると連載開始前に「『009』を」と依頼されたようで、作者がまだその気持ちにならなかったためこの作品ができたということらしい。その意味では『~009』に似た雰囲気なのは当然と言っていいだろう。確かこの時期はテレビアニメでも『~009』にキャラクターがそっくりな『氷河戦士ガイスラッガー』というものがあり、『~009』を望まれつつも作者の中でそれを受け入れられない状況があったのだろう。
とはいえこの『G・Rナンバー5』の内容自体は『~009』というより『ブルーゾーン』に近い。
異次元からの侵略、それは機械の核にエクトプラズマと呼ばれる不定形な物質がまとわりついて構成されたモンスターによってなされる。そしてこちらの世界で心霊現象と呼ばれるような状況になることが多い。これはまさに『ブルーゾーン』で描かれた世界観で、修繕屋が「超常現象研究所」を設立し全国から超常現象の情報を集めるところなども似ている。『ブルーゾーン』が未完で終わっていたのでそのアイデアを再び使いたいというのもあったのかもしれない。
前半はそのように、異次元からの侵略に立ち向かう「修繕屋」の活躍が描かれるが、後半(連載第二部?)ではふたつの世界が融合してどちらの人間も絶滅の危機に陥った終末的な世界が描かれる。
石ノ森作品のなかでも人気が高いというが、確かに自分も好きな作品である。
■初出:パワァコミック(1974年12月13日号~1976年6月17日号)
■書誌:パワァコミックス(双葉社刊)・全4巻
石ノ森章太郎萬画大全集(角川書店刊)・全3巻