おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【特撮映像館】Act.2 大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン

ナナメ観!特撮映像館「ナナメ観!特撮映像館」第二回目となる今回は、本作からシリーズではカラー作品となった「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」。
「ゴジラ」同様第2作目は大阪が舞台。バルゴンの冷凍光線(?)によって大坂城が凍結シーンもある。とはいえ、こちらは神戸から大阪、京都にいたる関西圏ということになるが。
 シリーズ中もっとも異色とも言える本作は、子供が一切登場しないことでも他のシリーズ作品とは一線を画す。

  • 内容も本郷功次郎、江波杏子らを中心にした人間ドラマに重点がおかれ、ガメラ自体もその登場シーンはけっこう少ない。バルゴンという怪獣を主人公にした単独の作品としても成立しているような印象だ。

    冒頭では前作で宇宙に打ち上げられたガメラが、隕石と衝突することによってカプセルが破壊され、地球に戻ってくることが描かれ、炎や熱のエネルギーを求め発電所や火山を中心に世界中に姿を見せていることなどが説明される。
    そして本作のメインストーリーであるバルゴンのエピソードに入っていくわけだが…。

    ニューギニアでオパールと思われ日本に持ち込まれたものが、実はパルゴンの卵であり、赤外線の影響で特異体質となって急激に成長し、神戸、大阪の街を破壊していく。

    作品自体が大人向けの、ドラマ重視な内容であるとともに、怪獣同士の対決も動物的な雰囲気を感じさせる演出がなされている。というのは、すでに第1作でも二足歩行していたガメラが、基本的には四足歩行でバルゴンに対しているのである。またその攻撃もお家芸である火焔放射も使うが、噛み付きを多用していて、野生動物の対決を思わせる。「ゴジラ」でも第2作でアンギラスと対決した際は噛み付きを主とした攻撃を見せていて、ライバル怪獣が同じ2作目で同様の演出をしているのは面白い。

    また、ガメラはバルゴンとの一回目の対決で冷凍光線により氷づけにされ、クライマックスまで出番がない。これはその後のシリーズでもずっと踏襲されるパターンで、ガメラはかならず1度負け、復讐戦で勝利する。
    個人的には本作のガメラの造形がもっとも好きな昭和ガメラだし、バルゴンも造型的に秀逸だと思う。が一般的には地味な印象があるらしく、人気が高いとは言えない。これはひとつにはテレビ放送が、本作に関して少なかったからではないかという気もする。ギャオス、バイラスの2作は何度もテレビ放送されていたと思うが、本作は内容的に重く、怪獣対決シーンを中心にテレビ用に編集してもストーリーがつかみづらいということもあったのじゃないかと思う。
    いずれにしろ時代は、怪獣映画=子ども向け、へと急激に進んでしまった。子供にせがまれて映画館に足を運んだものの、シートで居眠りしてしまう大人たちばかりという状況だ。本作は大人の鑑賞にも耐えうる怪獣映画の最後の作品だったかもしれない。

    ところで、今回本作を観ていて気がついたことがふたつある。
    ひとつは本郷らがニューギニアのある部落で古い遺跡の碑文を見るシーン。これは「平成ガメラシリーズ」第1作の碑文に通じるように思う。
    ふたつめは、本作のラストシーンである。たったひとりの兄を亡くし天涯孤独になった本郷に対して江波がかける言葉「ひとりじゃないわ」というセリフである。これは「平成ガメラシリーズ」第3作のラストシーンでの中山のセリフと同じである。
    こういう発見が面白かったりうれしかったりするものである。

    監督/田中重雄、特撮監督/湯浅憲明、特殊撮影/藤井和文
    キャスト/本郷功次郎、江波杏子、早川雄三、藤岡琢也、北原義郎、ほか。
    1966年/日本/100分

    あわせて読みたい関連記事
  • 「美味しい」じゃない、“非日常の食べ物”をめぐる5冊
    ライフ, 雑学

    「美味しい」じゃない、“非日常の食べ物”をめぐる5冊

  • 例のあの和菓子、都道府県別の呼び方
    社会, 雑学

    全国で呼び名はどう違う?「今川焼」が19エリア制覇 ニチレイが“勢力図”を公開

  • 白菜の黒い斑点はポリフェノールだった 農林水産省が「捨てないで」と呼びかけ
    ライフ, 雑学

    白菜の黒い斑点はポリフェノールだった 農林水産省が「捨てないで」と呼びかけ

  • 三重県御浜町ではなぜ大量の100円玉が必要?公式Xが出題したクイズに注目
    ライフ, 雑学

    三重県御浜町ではなぜ大量の100円玉が必要?公式Xが出題したクイズに注目

  • 実は永遠じゃない エレコムがモバイルバッテリーの寿命に注意喚起「目安はおよそ2年」
    ライフ, 雑学

    実は永遠じゃない エレコムがモバイルバッテリーの寿命に注意喚起「目安はおよそ2年…

  • 缶コーヒーの「#マーク」に隠された意味 コカ・コーラ社に聞いた“色が変わる理由”
    ライフ, 雑学

    缶コーヒーの「#マーク」に隠された意味 コカ・コーラ社に聞いた“色が変わる理由”…

  • 「読書の秋」に読んでほしい!本好きライターオススメの小説&ノンフィクション5冊
    ライフ, 雑学

    「読書の秋」に読んでほしい!本好きライターオススメの小説&ノンフィクション5冊

  • 給油口の位置が運転席から分かるって知ってた? 意外と知らないドライバーのための豆知識
    ライフ, 雑学

    車に潜む「モイランの矢」って知ってる? 給油口の位置を示す小さな矢印

  • 学生時代の“謎文化”が続々集結!「○○してたら恋人募集中」アンケート結果まとめ
    ライフ, 雑学

    学生時代の“謎文化”が続々集結!「○○してたら恋人募集中」アンケート結果まとめ

  • “視える世界”を歩く 霊能者監修「視える人には見える展 -零-」体験レポ
    オカルト・ミステリー, 雑学

    “視える世界”を歩く 霊能者監修「視える人には見える展 -零-」体験レポ

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…
    2. Gmailを受診している画面

      Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

      Gmailの仕様変更により、外部メールを取り込むPOP受信機能が2026年1月より利用できなくなりま…
    3. イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)

      仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)の劇場公開40周年を記念したイベント「清水 ビー・バ…

    編集部おすすめ

    1. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    2. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    3. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    4. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    5. パラマウントのプレスリリース

      まるで三角関係?Netflixと“婚約発表”したワーナーにパラマウントが求婚 関係を分かりやすく解説

      アメリカの映画製作・配給会社であるパラマウントが12月8日、同じくアメリカのメディア企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)を1株…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト