おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【無所可用】私が14歳のエドガーになるまで

43615e9fみなさまはじめまして。エドガーでございます。
この度、縁がございまして、おたくま経済新聞で、エッセイのようなコラムのようなものを書かせていただくことになりました。
御用とお急ぎでない時で結構ですので、お付き合いいただければ幸いでございます。

  • 何書くんだ?とお思いの方も多いかと思います。
    おたく系分野としては鉄道・マンガ・爬虫類・観賞魚などがメインですが、その他遺跡とか化石とかバードウォッチングとかポールスミスとかアートとか別役実とか…、まぁとにかく、いろいろな事を気ままに雑多に綴っていきたいと思います。
    もしかしたらとんでもないデタラメを書くかもしれませんが、その際は「ああ、ネタだな」と笑っていただければ幸いです。
    ちなみに本コーナーのタイトルでもあります、「無所可用、安所困苦哉」とは荘子内編・逍遙遊にある言葉であり、私のような者が使うにはいささか重たい言葉でありますが、この言葉のように「役に立たないといって、何を悩むことがあるだろうか」という気持ちで日々過ごすようにしておりますので、タイトルに使わせていただきました。

    さて、ここからが本題です。まずは本コーナー第一回目ということもあり、何故現世年齢●●才のワタクシが、14歳の「エドガー」という少年の名前で呼ばれるに至ったか。その辺りから私の歴史も交えご紹介したいと思います。

    思い返すは社会人1年目。パソコン通信というものに、初めて会社で出会いました。
    当時普及を兼ねてIDが支給されたのですが、たいした用途もなく、メール送るのに便利かな、くらいの時代でした。

    そしてその時たまたま身近にいた方から「パソコン通信には鉄道フォーラムというものがあるんだよ」ということを教えていただき、「鉄道ファン」の自分としてみては、なんだか興味引かれることもあり早速登録を試してみたのが全ての始まりだったのです。
    ちなみにその時、ネットの世界では、個人を呼び合う名前に「ハンドルネーム」という、ペンネームのようなものがあると同時に初めて知りました。

    そう、そしてその時、真っ先に浮かんだ名前が「エドガー」でございました。
    エドガー・アラン・ポーではなく、エドガー・ポーツネルの方でございます。

    そのエドガーとの出会いは、高校生の時、同級生が、お姉さんの蔵書ということで貸してくれた「ポーの一族」に由来します。全巻揃ってはいなかったので、買い足した記憶がありますが定かではありません。

    エドガーとの出会いの前に、萩尾望都作品との出会いがありました。
    それは「精霊狩り」という作品です。この作品、なぜか最近の文庫版に収録されていなく、まったくもって残念な限りです。

    さて、話は戻りますが、その「精霊狩り」は、親戚の家にありました。
    親戚といっても数軒隔てたすぐ向こう側で、物心ついたころには既によく遊びに行っていたものです。
    遊びに行く目的のひとつが「精霊狩りを読むこと」でした。
    その不思議な世界観や、シリアスな内容なのに明るい雰囲気など、いたく気に入っておりましたが、当時ワタシは小学生低学年、作者名の「萩尾」は読めても「望都」は読めず、どうすれば他の作品が読めるのかわからないまま、時は過ぎます。
    で、私があまりにも精霊狩りばかり読んでいるものですから、しまいには持ち主の叔母が私に「あげるよ」と言ってくれました。その後も何度も読み返しました。ネタバレしてても楽しめるという今の性質は、この過程で培われたのかもしれません。

    しかし精霊狩り以外の萩尾作品に触れることは無いまま気が付くと時は過ぎ、いつしか私は高校生になっておりました。

    そんなある年の暮れ、件の叔母が出産のため、我が家(当時住んでいた実家)にやってきました。当時の我が家は戦前建築の、古いというよりぼろい家で、部屋は3間しかなく、他の家族の寝床を考えると、否応なしにワタシの部屋しか寝ることころが無いという結論で、出産までの滞在期間、その叔母と寝起きを共にすることとなったのです。

    ちなみに叔母は結婚後岡山県に移り住んでいて、叔母が上京するにあたり、高校生だったワタシはちゃっかり交通費をせしめて新大阪まで迎えに行くお役目に預かりました。(新大阪までは旦那さんが付き添い)
    なぜお使いが「お役目に預かった」かって?そこは当時から鉄道ファンのワタクシ。このとき、予定よりも早めの新幹線で京都駅まで向かい、当時憧れだった山陰線や福知山線の客車列車を撮影するという密かなオマケを楽しむためでした。
    初めて見る10系やぶどう色2号のオハ35などは軽い感動モノで、当時高校生の分際ながらこうして遠征をして撮り鉄を楽しめたというその事実は、未だ色あせず良い思い出として記憶に残っています。

    さて年も押し迫った冬休み中のある日、突然母親にたたき起こされました。
    「産まれそうだから病院まで連れて行け」と。他にいないのでやむなく産婦人科まで連れて行き、さて、用も済んだし「帰~ろう」としたところ、ちょっと強面な看護婦さんが出てきて、きつく一言「待合室で待っててください」と。

    え~~~っ、てなもんです。男子高校生が産婦人科の待合室に1人・・・
    誰もいなくて静かだけど、恥ずかしい・・・・・・
    仕方が無いので置いてある雑誌でも、と思ったその瞬間、ある雑誌の表紙に目が留まりました。
    「萩尾望都」
    ああっ!!!!!!
    と、ワタシはすぐにその雑誌を手に取りました。雑誌の名は「プチフラワー」。掲載作品は「メッシュ」という作品でした。
    待合室には雑誌のバックナンバーが何冊かあったので、さっきまでの恥ずかしさも忘れ、一心不乱にそれら全部を読み漁ったのです。
    なんとまぁ、状況さえ考えれば少し酷い話ではありますが、それにしても当時のワタシはその感動すべき萩尾望都作品との再会に、多少絵と線は変わっておりましたが、軽く感動で涙目になったものです。

    そして冬休みが終わり、学校でこの話を友人にしたところ、「うちの姉ちゃんが好きでいっぱいあるよ」と言われ、ポーの一族、トーマの心臓、11人いる!など、思う存分な量の本達を借りて読みふけるうちに気が付けばどっぷりとはまり…。

    それからは小遣いとお年玉を原資にあちこちの書店を回って萩尾望都作品を集める日々が始まったのでした。

    あわせて読みたい関連記事
  • ニュース・話題

    「ポーの一族 秘密の花園」CMナレーションは元宝塚の明日海りお

  • ニュース・話題

    萩尾望都「ポーの一族 秘密の花園」が連載再開

  • 商品・グッズ

    「ポーの一族 ユニコーン」発売 CMナレーションに元宝塚・仙名彩世を起用

  • コラム・レビュー

    『ポーの一族』大ファンのライターが40年ぶりの新作前に魅力をどどっと紹介

  • イベント・キャンペーン

    萩尾望都原画展ファイナルでは『トーマの心臓』名シーンを追加

  • コラム, 雑学

    【無所可用】第65回 エドガー・ポーツネル274歳の誕生日を祝う~お宝続々登場の…

  • 萩尾望都、紫綬褒章受章後初作品はかつてないほど“恋愛”や“性”に踏み込んだ漫画『王妃マルゴ』
    商品・グッズ

    萩尾望都、紫綬褒章受章後初作品はかつてないほど“恋愛”や“性”に踏み込んだ漫画『…

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第二十九回 11人いる!/萩尾望都

  • 無所可用
    コラム

    【無所可用】「エドガーって名前やめてください」のおはなし

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 介護未経験者全体の72.9%が将来に向けて「特に何も準備していない」
    社会, 経済

    仕事と介護の両立に不安85% ダスキンが「介護白書2025」で実態調査

  • プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

  • 美食祭 in 日本橋三越
    TV・ドラマ, エンタメ

    高見沢俊彦の“美しいメシ”100回記念 日本橋三越で初の美食祭

  • なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売
    商品・物販, 経済

    なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売

  • 掃除機「自動お手入れ機能」篇(15秒)
    商品・物販, 経済

    反町隆史、東芝新CMで料理や掃除に挑戦 家庭的な素顔ものぞかせる

  • 音楽劇「謎解きはディナーのあとで」(撮影:阿部章仁)
    エンタメ, 舞台

    上田竜也が毒舌執事に挑む 玉井詩織&橋本良亮と共演「謎解きはディナーのあとで」開…

  • トピックス

    1. 偽ファッション広告

      偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

      2025年9月上旬からGoogle広告に偽ファッションサイトが急増。数秒で「Windows Defe…
    2. 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      Webコンテンツ「絶対にバズるSNS」が9月15日公開。9月26日公開映画「俺ではない炎上」と連動し…
    3. 26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前にリリースされたMMORPG「Dark Ages」をご存じでしょうか。年月とともに人口は減少…

    編集部おすすめ

    1. たこばさんの「糸こんにゃく炒飯」

      えっ…これ糸こんにゃく!?目も舌も騙される“ヘルシー炒飯”を実際に作ってみた

      「糸こんにゃくで作った炒飯が本物そっくりに仕上がる」と聞いたら、信じられるでしょうか。大阪市のたこ焼き店「たこ焼たこば」の店主がSNSに投稿…
    2. 虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズで清掃員の仕事を疑似体験しながら、非日常な体験に巻き込まれていく……そんな不思議な没入型体験イベント「どこか奇妙な職業体験 虎ノ…
    3. あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      子どもにとってかくれんぼは、ハラハラドキドキのスリリングな遊び。自分だけにしか分からないであろう隠れ場所を見つけて「ここなら大丈夫」「絶対見…
    4. プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      アニメ映画「映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」公式は9月12日、「キミプリ♪ぬりえコンテスト」において…
    5. 短編ホラーゲーム「夜勤事件」、実写映画化決定 2026年全国公開へ

      短編ホラーゲーム「夜勤事件」、実写映画化決定 2026年全国公開へ

      コンビニを舞台にした短編ホラーゲーム「夜勤事件(The Convenience Store)」が、実写映画としてスクリーンに登場へ。開発元の…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト