「ナナメ観特撮映像館」、今回より復活したゴジラ、いわゆる「VSシリーズ」を取り上げていきます。まずは84年版『ゴジラ』。

ほぼ10年ぶりのゴジラ映画となった本作は、第1作『ゴジラ』の続編という位置づけで制作された。30年ぶりに目覚めたゴジラが、再び東京を襲い、人間との激闘を演じるというストーリーで、原案はシリーズのプロデューサーを努めていた田中友幸。本作では制作としてクレジットされている。


いろいろな意味で行き詰まり中断したシリーズを再び制作するのには苦労もあったようで、結果的に10年のブランクができてしまった。そしてファンの要望をいれ、第1作の原点に還ったゴジラとして復活したわけであるが、政治・経済・科学などの分野で活躍するブレーンを集め、設定的にも緻密なものを目指していた。

昭和ゴジラシリーズでゴジラや怪獣たちを攻撃するのは防衛軍であり、自衛隊ではなかったが、本作では自衛隊として登場する。さらには東宝特撮映画の伝統を継承して「スーパーX」という超兵器も登場する。再びその驚異の破壊力で都民を恐怖に陥れるゴジラと自衛隊の攻防を描きながら、両親をゴジラによって亡くした生物学者が、ゴジラの帰巣本能を利用して三原山に誘導し、火口に葬るという主人公側の物語が展開する。

大筋では第1作の語り直しであり、ゴジラの復活を楽しむための映画といえなくもない。また時代もあるのだろうが、第1作のような核兵器の恐怖をゴジラに重ね合わせるという感じにはなっていないところもある。

昭和ゴジラシリーズ後半の作品に不満を持っていたファンには歓迎され、興行的にも大成功したようだ。確かに昭和ゴジラシリーズ後半の作品に比べて、大人の鑑賞にも耐える硬質な仕上がりで、総理大臣役の小林桂樹の演技など重厚感のある映画になっている。
制作当時すでに超高層ビルが乱立していた都心にゴジラが現れることになり、その身長が80メートルに設定された。それだけ巨大なゴジラよりも高いビルがあることに、第1作『ゴジラ』とは隔世の感は否めないものの、すでにそんな情景にも見慣れてしまったのか、今回改めて本作を観たところ、それほどの違和感を感じなかった。

監督/橋本孝治、特技監督/中野昭慶
キャスト/田中 健、夏木陽介、沢口靖子、宅麻 伸、小林桂樹、ほか。
1984年/日本/103分

(文:猫目ユウ)