「特撮映像館」、ついに平成ガメラシリーズの金子監督が登場! ゴジラシリーズ屈指の、泣ける映画です!「平成ガメラシリーズ」の金子修介による初のゴジラ作品。ハッキリ言って異色作だと思うが、54年『ゴジラ』の唯一直系的な作品であるとも言える。

本作で特徴的なのは、なんといってもゴジラの造形だろう。「2000シリーズ」の鋭角なデザインとは全く違い、それ以前のゴジラとも違う。


凶暴な印象を与えるその目から「白目ゴジラ」とも呼ばれる。ずんぐりとした体型は54年『ゴジラ』造形の際に作られた初期の立体模型にも似ている。

バラゴン、モスラ、キングギドラが「護国聖獣」という古代日本の守り神であったという伝奇的な設定から、54年以来その予兆は見せながら姿を現さなかったゴジラとそれに備える日本の防衛軍という現実的な設定を見事に融合させるところなど、金子らしさが出ている。強いて言えばキングギドラは悪の宇宙怪獣のイメージが強いので、他の怪獣または新怪獣でもよかったように思う。が、これは東宝側の要求で、「みんなが知っている人気のある怪獣」ということでもあったようだ。

金子監督は「平成ガメラシリーズ」と同様に、本作でも女性を主人公にストーリーを展開する。誰にでも楽しめるエンタテインメント性を出しつつも、54年のゴジラ上陸以来「実戦経験がない」防衛軍だったり、ゴジラが最初に放射能熱線を出したときには原爆を思わせるキノコ雲を出してみたり、上陸する港にある事務所の壁には「原爆を忘れない」というポスターが貼られていたりと、テーマ的には重いものを用意している。これこそが54年『ゴジラ』の唯一直系的な作品と位置づけるところだ。

84年『ゴジラ』も54年『ゴジラ』を受けて正統的な続編を目指して作られたわけだが、内容的に「続編」なだけでテーマは受け継げなかった印象がある。どうしても巨大な怪物が街を破壊するというビジュアル的なものしか引き継いでいなかった感が否めない。

金子監督は「平成ガメラシリーズ」で「これが観たかった『怪獣映画だ』」というものを見せてくれた(まあこれは個人的な感想だけれども)。本作では「これが観たかった『ゴジラ映画だ』」というものを提示してくれたのではないかと思う。またこれも個人的なものだけれども、「泣けるゴジラ映画」でもある。

ちなみに劇場公開時、本作から『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』までアニメ『とっとこハム太郎』と2本立て上映となり、興行成績も伸びた。

監督/金子修介、特殊技術/神谷 誠
>出演/新山千春、宇崎竜童、ほか。
2001年/日本/105分

(文:猫目ユウ)