おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【特撮映像館】Act.39 ゴジラ2000シリーズ考察

update:

「特撮映像館」第39回は、「ゴジラ2000シリーズ」全体を振り返ってみます。

『ゴジラ2000-ミレニアム-』から『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』さらに『ゴジラファイナルウォーズ』までの作品について考えたい。
まず印象的なのは、それまでのシリーズと比べ、圧倒的に女性主人公で作られた作品が多かったということである。『ファイナルウォーズ』では松岡が主演しているが、共演の菊川の印象も強い。男性主人公なのは『~2000』と『~東京SOS』の2本といえるだろう。


  • 『~メガギラス』では「VSシリーズ」の三枝美希を発展させた主人公、『~メカゴジラ』ではその語り直し、『GMK』では女性主人公が得意な金子監督という偶然からそうなったのだろうが、女性主人公によるゴジラ映画ということが「2000シリーズ」には言えるような気がする。

    シリーズの特徴は、まずなんといってもゴジラの造形だろう。
    84年『ゴジラ』からの「VSシリーズ」では54年『ゴジラ』が持っていた凶暴なイメージへの回帰を目指しながら、恐竜や爬虫類というイメージからは離れてしまった感があったが、「2000シリーズ」では恐竜、爬虫類のイメージを取り戻し、さらに大きく鋭くなった背びれが印象的である。

    また各作品が独立した54年『ゴジラ』の続編という位置づけもシリーズの特徴として忘れてはならない。「VSシリーズ」が連続ドラマとして描かれつつも、強すぎるゴジラにマンネリしてしまったことへの反省だったのだろう。

    結果的にそれぞれが独立した形で物語の設定を構築できたことで、秀作がそろったのだとも思う。シリーズがさらに続いていれば、また違った世界観、解釈によるゴジラが生まれていたかもしれない。そう考えると50周年の節目があったとはいえ、シリーズが短めに終了してしまったのは残念ではある。

    第1作から50年を経ても、シリーズ映画化され新作が作られたというのはほかにはないことであるし、「ゴジラ」が怪獣の代名詞となり、日本を代表するキャラクターのひとつであるということでも、その存在の大きさははかりしれない。
    それだけに観客、作り手、それぞれにゴジラに対する思いがあるだろう。単純にゴジラが大暴れするのを楽しみたいファンもいるだろうし、そういう映像を作りたいスタッフもいるだろう。逆にゴジラが内包するテーマを重視するファンも作り手もいると思う。
    その意味で、それぞれのファンを納得させる作品が作られたのも「2000シリーズ」ならではの特徴だったのではないかという気もする。
    いつかまたゴジラがスクリーンに戻ってくることもあるだろう。
    だが、そのときは54年『ゴジラ』から解き放たれた、まったく新しいゴジラになっていてほしいという気がしなくもないのである。
     
    なお、第1作『ゴジラ』から『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』まではDVD「ゴジラファイナルボックス」版で、『ゴジラファイナルウォーズ』はDVD「スペシャルエディション」版で鑑賞した。

    (文:猫目ユウ)

    あわせて読みたい関連記事
  • ゴジラ 大咆哮かるた
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    鳴き声で怪獣を当てろ!難易度MAX「ゴジラ 大咆哮かるた」がツタヤ限定発売

  • ヘドラ卓上モップ
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    ゴジラと戦った公害怪獣「へドラ」のお掃除グッズ襲来 卓上のホコリを吸収

  • 「ゴジラ対ヘドラ」公開50 周年記念フレーム切手セット
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    「ゴジラ対ヘドラ」公開50周年記念グッズ 郵便局のネットショップ限定で販売

  • ゴジラと京都のコラボイベント「ゴジラVS京都」が初開催
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    「ゴジラVS京都」 京を巡る回遊型イベント開催

  • アニメ/マンガ, ニュース・話題

    淡路島に全長約120mの実物大「ゴジラ」出現 体感型アトラクション「ゴジラ迎撃作…

  • コラム, 雑学

    【特撮映像館】Act.38 ゴジラファイナルウォーズ

  • コラム, 雑学

    【特撮映像館】Act.37 ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS

  • コラム, 雑学

    【特撮映像館】Act.36 ゴジラ×メカゴジラ

  • コラム, 雑学

    【特撮映像館】Act.35 ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃

  • コラム, 雑学

    【特撮映像館】Act.34 ゴジラ×メガギラス G消滅作戦

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

      警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

      インターネットを使っていると、ふとした瞬間に現れる「警告ポップアップ」。 近ごろでは「サポート詐欺」…
    2. 母に何気なく70年万博の話をしたら……“55年前の資料”にテンション爆上がり

      母に何気なく70年万博の話をしたら……“55年前の資料”にテンション爆上がり

      大阪・関西万博をきっかけに、55年前の1970年の大阪万博(以下、70年万博)に興味を抱くようになっ…
    3. ハチワレ特製「暗殺者のチャルメラ」を再現 トマトと粉チーズでインスタントラーメンが大変身

      ハチワレ特製「暗殺者のチャルメラ」を再現 トマトと粉チーズでインスタントラーメンが大変身

      10月1日にXで公開された漫画「ちいかわ」にて、ハチワレがちいかわに振る舞った“暗殺者のチャルメラ”…

    編集部おすすめ

    1. ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      キーボードに差し込まれたトランプのジョーカーと、その裏に書かれた「げぇむすたあと」の文字。Xユーザーの「たーけ」さんが、たまたま入ったネット…
    2. フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      「みんなの75点より、誰かの120点」を合言葉にドン・キホーテが展開している偏愛メシシリーズ。10月1日に「本当にこの組み合わせが好きな人が…
    3. 将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      オンライン将棋対局サービス「将棋倶楽部24」が、2025年12月31日をもって終了することが発表された。運営する席主の久米宏氏が10月1日付…
    4. pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      アパレルブランド「pium」が9月30日、店舗スタッフの接客に対する多数の指摘や批判を受け、公式Xにて謝罪文を公開しました。併せて再発防止策…
    5. 「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」のロケ地として知られる静岡市清水区で、作品ゆかりの企画を集めた大型オフラインイベント「清水 ビー・バップ・…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト