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【うちの本棚】第九十六回 フラッシュZ/石森章太郎

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【うちの本棚】第九十六回 フラッシュZ/石森章太郎「うちの本棚」、今回は石森章太郎のヒーロー作品のひとつである『フラッシュZ』を取り上げます。宇宙からの侵略にひとり立ち向かうフラッシュZ。ロボット・アポロやクロスマシンなどメカも登場するエンターテインメント作品ながら、そのラストはけっこうダークです。

本作は「まんが王」1960年8月号~1961年3月号まで連載されたもの。また番外編は「少年画報」1961年4月号に掲載された。


  • ある日、大量の隕石が降ってきた。しかしそれは隕石ではなく宇宙人の侵略の始まりであった。それを予見していたように、アポロという名のロボットに命令して鬼のような宇宙からやってきた怪物を倒していく桃太郎少年。彼こそが本作の主人公フラッシュZである。

    桃太郎は、宇宙人が侵略目的であらかじめ地球に侵入させておいた自分たちと同じZ星人の子供のひとりであり、日本に配された子供はむかし話のように大きな桃の中から出てきたことから桃太郎と名付けられ育てられたのだった。そして侵略が始まるとZ星人の呼びかけにより世界各地から同じように地球でそだった宇宙人たちが集められ、侵略の手先となることを告げられる。しかし桃太郎はそんなZ星人の反抗し、ひとり闘うことを誓うのだ。もともとがZ星人であるためか、少年でありながらスーパーマシンやロボットを完成させることができた桃太郎ことフラッシュZは、地球人の丹波博士の協力を得て、Z星人が現れる1年前にタイムマシンで戻り、Z星人に対抗できるクロスマシンを完成させて、地球を守るのだ。

    半世紀前のSFコミック、と言ってしまえばそれまでだが、ストーリー構成や細部の設定はほころびが見えて、もっと面白い作品になったのではと感じさせるところがある。すでに作家としては多忙な時期に入っていた石森だったはずなので、時間をかけて仕上げることがかなわなかったのかもしれない。そして最終的に宇宙人の侵略は止まるのだが、主人公側の登場人物はすべて死んでしまうというダークな展開。もしかしたら無理やり終わらせたのかもしれない。作画面でも同時期に作品に比べて荒い印象もあり、正統派のヒーロー作品になる要素を持ちながら単行本化にも恵まれず不遇な扱いを受けることになったようにも思う。
     
    双葉社の「パワァコミックス」シリーズはタイトルは知られていながら単行本化されていなかったり絶版になって久しい作品を復刻してくれたり、漫画ファンにはうれしいシリーズだったが、この『フラッシュZ』、同じ石森の『王(キング)アラジン』もそんな作品だった。

    書 名/フラッシュZ・全2巻
    著者名/石森章太郎
    出版元/双葉社
    判 型/新書判
    定 価/各350円
    シリーズ名/バワァコミックス
    初版発行日/1巻・昭和46年12月20日、2巻・昭和50年2月20日
    収録作品/1巻・フラッシュZ、番外編タイムパトロール、おれとおれ,2巻・フラッシュZ、エスパイ

    (文:猫目ユウ / https://suzukaze-ya.jimdo.com/

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
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