「うちの本棚」、今回は河あきらの初期作品でもタイトルが印象的な『赤き血のしるし』をご紹介します。ちなみに本作は河あきらの最初の単行本のタイトルでもありました。
主人公は昼間、工場で働きながら定時制高校に通う16歳になる少女。単身上京したため周囲に知り合いも友達もいない孤独な日々であり、教室の机の中に昼間部の生徒に向けて「友達が欲しい」と手紙を書く。そしてその手紙を読んだのが、隆という男子生徒で、ふたりは友達になるのだが、隆は評判の不良だった。
河あきらの初期の代表作といってもいい本作は、その後描かれる河あきら作品に共通する設定が随所に見られる。とくに友達がなく孤独な日々を送る主人公の少女と、ちょっとワルな男子というのは定番といってもいい。
わりと救いのない作品の多い河あきら作品の中にあって、希望の持てるラストであることも本作の特徴といってもいいかもしれない。
登場人物たちの設定や主人公が巻き込まれる事件は作品発表当時には納得のいくものだったかもしれないが、現在の視点で見ると状況設定自体があり得ないものも多く、新しい読者にどこまで説得力があるか少々不安ではあるのだが、根底に流れるテーマや主人公の思いなどは不変なものであるので、機会があればぜひ読んでもらいたい作品である。
『赤き血のしるし』というタイトルにつながるシーンはいささか70年代的な感じもしないではないが、じっくりと味わってほしい場面ではある。
ちなみにマーガレットコミックス版では、併録作品にビデュー作の『サチコの小犬』、ちょっと伝奇SF的な作品『ウルフガール「狼少女」サチ』などが収録されている。
初出/別冊マーガレット(昭和48年7月号)
書誌/集英社・マーガレットコミックス(1974年1月20日初版発行)
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)