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大人気作の『ちぃちゃんのおしながき』について漫画家・大井昌和先生インタビュー(前編)

大人気作の『ちぃちゃんのおしながき』について漫画家・大井昌和先生インタビュー『ちぃちゃんのおしながき』『おくさん』『起動帝国オービタリア』など、多くの著書や連載を持たれている人気漫画家の大井昌和先生。
漫画家になったいきさつから、大人気作の『ちぃちゃんのおしながき』についてインタビューを試みた。


  • 【関連:漫画家・大井昌和先生インタビュー(後編)】

     

    ――先生は、どのような学生時代をすごされましたか?

    高校の時は本当にただ普通に漫画が好きでっていう感じで。あんまり描こうとは思っていなかったですね。やっぱり大学に行った時に、頭の悪い大学だったので(笑)早く大学辞めたいなと思って(笑)そうしたらまあ、お金を稼がないと大学も辞められないからと思って。で、サラリーマンはやっぱちょっと選択肢に入ってなかったので。
    とりあえず、クラスで上位ぐらいに絵は上手かったんで。絵は描けるなとか思って。で、日本で絵を描いて飯が食えるのは何かと思ったら漫画しかなくて。それで漫画家になりましたね。

    ――高校や大学で漫研とかには入っていなかったのですか?

    高校の時は漫画が好きだったからそんなようなのに入りたいなと思ったけど……女子しかいなかったんで。恥ずかしくて(笑)

    ――漫研は、だいたいそんな感じですよね。

    そう。大学は僕は夜間だったので。そういうのもなくて。昼間の学部にはあったんですけど。行ってみたけど、まあみんな……。入ってもしょうがないなと。その当時はもう担当さんがいたので。なんか入っても得るものはないだろうなと思って。明治大学とか行っていればね。漫研が名門ですからね。かわぐちかいじ先生とか。ああいうとこ行ってたらね。僕は理系の大学に行ってたので。文系の大学だったら漫研もしっかりしてたんだろうと思うけど。なのでだらだらと描いていました。

    ――高校、大学の頃はどういうエンターテインメントを好まれていましたか?

    僕らの世代は漫画以外だとゲームですね。完全に、漫画描いていないとか読んでいない時はゲームやってる。高校ぐらいからスーパーファミコンとか出始めたぐらいだったので。高校の時はもう。高2ぐらいでスーパーファミコンが出たのかな? 今あの人。『ハイスコアガール』。押切さん。あれを見たときに、ああやっぱそうだよね。この世代だなと。『ストリートファイター』とか。高校はさぼってゲーセンに行って、『ストリートファイター』をお金が続く限りやって。無くなったら帰って、家でスーパーファミコンをやる。で、寝る前に漫画を読む。そんなローテーションでしたね。

    ――ゲームは、『ストリートファイター』ばっかりでしたか?

    RPGもまだ。僕らの世代は、日本のゲームが最高とか言われた時代だったんで。ひたすら色んなゲームを。スーパーファミコンはソフトが高かったので友達から借りたりして。スクエニ系もそうだし。カプコン系もそうだし。任天堂もやるしみたいな。で、今みたいに機種がバラけてないから、スーファミやっとけば何とかなるみたいな。メガドラとかもあるけど……。メガドラはね。そんなまだみんな持ってないからやるっていうのはあんま無かったし。でもやっぱ『バーチャファイター』が出てから、ああセガすごいんだなって見直して。そこからセガのハードしか買わないように決めたのに、潰れちゃってね(笑)

    ――セガのハードはなくなって、ソニーになって、任天堂の一人勝ちみたいな。

    プレステは買わんぞと思って(笑)未だにXboxとWiiはあるけど、プレステ3は買ってないっていう(笑)感じですかね。だから、漫画以外だと僕はゲームですね。
    あとは、大学時代はSF小説ばっかり読んでいましたね。

    ――例えばどういうのを読まれましたか?

    とりあえず、大学生の頃は早川書房を全部読もうと思って。で、多分、全部は読めていないと思いますけど。半分も行ってないと思います。その時、なんかシリーズで全部で800冊とかいわれてたんだけど、200も読めてないかなぐらいですかね。で、卒業したら漫画家になっちゃったから。読むこともなくなっちゃって。ほとんど好きなものしか読んでないんですけど。そうですね。漫画以外だと趣味とかそんなもんかな。あとはもう残りはずっと漫画に。

    ――ちぃちゃんとかを読んでいると、格闘ゲームとかいう感じじゃないんですけどね。

    僕のデビューの面倒を見てくれた人が、「なんでも描け」という人だったんで。これは僕デビューした作品を読んでくれたタケマ担当が声をかけてくれて描き始めたんです。
    それで、俺の中で四コマ漫画というのは、中川いさみとか、吉田戦車みたいなイメージだったから。これは畑違いじゃないのかなと思って(笑)えーと思って。その……4コマ専門誌って知らなかったんです。でもやっぱ大学の友達とかに聞くとそいつは読んでるから。大学卒業してから会社の行き帰りに読むよって。あ、そういう媒体なのねっていう。で、読んだら、まあそっか。ああいうシュールじゃないのだったら描けそうかなと(笑)

    ――シュールですよね。吉田戦車とか。

    吉田戦車とか無理だろう俺とか思ったから(笑)
    好きだったんですけどね。相原コージ先生とか。スピリッツ系の四コマはたいてい読んでますけど。四コマ=ああだって思ってたんで。

    ――ご自身の漫画作りに対するルーツみたいなものはありますか?

    僕の中では高橋留美子先生ですよね。手塚治虫以外に日本で一番重要な作家は誰かといわれたら高橋留美子ですよ。今ほとんどの若いやつらは忘れてますけど、「萌え」を高橋留美子が作ったんだから。僕今きらら系列も描いてますけど。とりあえずまず漫画家になりたい、萌えみたいなのを描きたいんだったら、とにかく、高橋留美子を『らんま1/2』まで全部読んどけって話ですよね。僕はデビューから、この間終わった『一年生になっちゃったら』までは全部、高橋留美子オマージュのつもりで描いてます。で、だいたいオマージュ終わったなと思ったんで。最近は別のことやってますけど。

    高橋留美子先生がまず第一にあって。次に安達哲先生と冨樫義博先生がいて。この3人で、なんとかなろうと思っていましたね。

    ――学生の頃から担当さんがいたというてことだったのですが、どうやって漫画家になられたんですか?

    よく分からなかったので、雑誌読んでると、「持ち込み募集」って書いてあるじゃないですか。じゃあ、持ち込み行ったらなれるんだろうと思って(笑)行ったら担当さんがついて。僕の中でこれ以外やり方がわからないですよね。で、後からきいたら友達に、同人活動してから編集さんに声をかけられたとか。同人ってのが良くわからなかったんで。ああそんなやり方もあったんだとか思って。だからそういう漫研とか入ってなかったんで、全然そういうのが分からなかったんですよね。持ち込み行って叩かれて、漫画家になるんだろうなみんなと思ってましたからね。

    ――1回目の持ち込みで担当さんがつかれたんですね。

    そうですね。僕最初は、デビューがメディアワークス(今のアスキーメディアワークスさん)さんですけどね。その前に白泉社の「ヤングアニマル」に行ってたんですけど。どっちも最初に担当さんは付いていただきましたよね。だから付くもんだろうなと勝手に思ってたんで。

    ――普通だとそんなに複数の担当さんは付かないですよね。

    それがね、この年になると分かったなと(笑)やっぱ、新人の頃から編集さんに「いや、お前はマシな方だ」と言われていたんで。自分はまだ連載もしていなかったから。連載している先生はみんな上手いから。早くああなりたいなしかなかったんで。自分より下なんていうのは概念が無かったので。

    ――その時はどのような漫画を持ち込まれていたのでしょうか?

    最初はもう俺、SF以外描くつもりはなかったんで。時代的にね、出版社全体であるわけですよ。今から15年ぐらい前の時は、SFっていうジャンルはとりあえず載せないっていう時代があったんです。SFっていうだけで見ないっていう時代があって。今じゃ考えられない。で、SFばっかり描いていたらいいかげんに怒られて(笑)そうじゃないと。とりあえずSFは載せられないと言われて。SF以外描けっていわれても、高橋留美子以外知らないしなと思って。俺、士郎正宗になりたかったんだけどなあ(笑)で、しょうがないから、ラブコメみたいなのを描こうかなと思って。という感じですかね。だから最初SFばかり描いてましたね。

    ――意外ですね。SFというよりはラブコメや萌え系が多いですよね。

    そうですね。今本当に、ラブコメばっかですよね。

    後編へ続く――。

    大人気作の『ちぃちゃんのおしながき』について漫画家・大井昌和先生インタビュー

    【プロフィール】
    大井 昌和(おおい まさかず)。
    『ちぃちゃんのおしながき』『おくさん』『起動帝国オービタリア』など、多くの著書や連載を持たれている人気漫画家。

    【リリース情報】
    竹書房から『ちぃちゃんのおしながき』9巻が2012年12月1日から発売中。

    【オフィシャルサイト】
    http://d.hatena.ne.jp/ooimasakazu/
    【ツイッター】
    https://twitter.com/ooimasakazu

    (インタビュー:川上竜之介)

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