大人気作の『ちぃちゃんのおしながき』について漫画家・大井昌和先生インタビュー(後編)『ちぃちゃんのおしながき』『おくさん』『起動帝国オービタリア』など、多くの著書や連載を持たれている人気漫画家の大井昌和先生。
大人気作の『ちぃちゃんのおしながき』と、近況や今年の抱負についてインタビューを試みた。

現在、竹書房から『ちぃちゃんのおしながき』9巻が発売中。


【関連:漫画家・大井昌和先生インタビュー(前編)】

 

――『ちぃちゃんのおしながき』は個人的にとても好きな作品なんですけど。とても凝ってますよね。絵からまず。

いや、デビューの頃とか、1巻の頃の絵はひどいですよ(笑)

――料理にしても、小道具にしても、綺麗なデザインだったり、凝ってますよね。

僕はね、自分の絵は下手だと思っているので、その辺は……。もちろんありがたくて嬉しいんですけど。やっぱりね、もっと上手い人たちが世の中にはいっぱいいるんでね。どうやったらいいのかなとはいつも思っていますけどね。

――4コマでここまで描きこんでいるのはとても珍しいですよね。

そうですね。4コマの中では珍しいかもしれませんね。もともと、角川系だったんで。見せてもらった時に、そっか、とりあえず、これより絵を細かく描けば、もうちょっと見てもらえるかなと思って。それはちょっと思いましたね。

――このようなデザインというのは、ご自身の持っている小物や、こういう小料理屋とか居酒屋に行って、見たものをアレンジして描いたりされますか?

呑みに行ったときとかに見て、ああこうなってるんだというのを、あるとおもしろいものは覚えとくみたいな感じですかね。

――何回見ても新しい発見があるような絵が多くて、何回も何回も読んでも飽きないというか。

絵が細かくなると、とりあえず一回、二回目ぐらい読んでも気付くとことかあるといいですよね。

――背景とか、4コマの場合、描いてないことも多いのですが、ここまで描き込まれてるとすごいなと思うんですよ。

シチュエーションコメディみたいなものが好きなんで、シチュエーションが分かる方がいいんですよね。キャラがあんまり弱いので、俺の漫画は(笑)

――キャラも個性的で。

空間があるとキャラも見えてくるから。

――9巻になってもタク爺とかユウ爺とかホステスさんとかずっと登場して、「サザエさん」みたいな感じですよね。

その辺は、編集さんと企画やってるときに10年続くやつをやろうということで始めたので。

――料理漫画だと『美味しんぼ』とか、最近だと『花のズボラ飯』とかありますね。

『花のズボラ飯』にはやられたなと思いましたけど。この手があったかっていう。
『美味しんぼ』はもう大好きですね昔から。『花のズボラ飯』も、あっ、こんなの始まったんだと思って。あれは新しかったですね。
原作の久住先生は、担当が『孤独のグルメ」が大好きなんで。デビュー作が幼稚園モノだったんで。子どもと料理みたいなものはできませんか? っていわれて。
子どもが料理作る漫画やろうかって。で、始めた感じですね。

――『ちぃちゃん』の設定は、お父さんがいないわけじゃないですか。そういうドラマ的な感じの設定は担当さんと考えられたんですか?

編集さんと呑み屋で話してて、呑み屋の話にする? みたいな感じで。子どもが料理やってるから。じゃあ、『じゃりン子チエ』だね(笑)
ああ、じゃあそれで(笑)みたいな感じで(笑)あとはネーム描いて送ってって。

――いわれてみれば『じゃりン子チエ』に通じるような部分もありますけど、もっとライトな層にも受け容れられそうですよね。女性が読んでもOKみたいな。

俺の漫画では珍しく、女性の読書が半分ぐらいいますね。

――鍋とかの描き込みもすごいですよね。

だいたいこの辺になるとスタッフさんがやるんですが、そういう細部までこだわったほうがいいよとはスタッフさんにも言ってあったんですよ。
僕の場合は、ディテールがしっかりしてないと嫌なんですよね。

――『ちぃちゃん』に、高級酒や珍しいお酒が出てくるのですが、実際に呑まれていますか?

たまに高い酒が出てくる場合は、多分、前の月とかに編集さんに呑ませてもらって美味かったなと思ったときだけ出すみたいな。

――ママも呑んでる時がありますが、タク爺がそういうお酒を持ってきますよね。

やっぱね、美味い酒は年寄りから教わるのが分かりやすいんです。

――本当に、何回も読める漫画ですよね。

ありがとうございます。
四コマは何回も読めたほうがいいっすよね。
『ちぃ』のファンはなんか優しい感じですよ。

――萌え系だけど、ちぃちゃんが純粋で、綺麗な漫画ですよね。

俺が他に描いているマンガとコラボするっていったら、編集さんから、あれはちょっと『ちぃ』には合わないからって言われましたね。

――ママがジャニーズ系が好きとかいうリアリティがあって、最初は女性の作家さんが描いてるのかなと思いました。

そういう部分で、女性ファンが多いのかな?
その辺は多分、自分の実体験みたいなものが出てきてるんだろうなと。
『ちぃ』はほとんど苦労なく描けるので楽といえば楽ですよね。

――料理のレシピは毎回、考えるのは苦労されないですか?

いや、そうでもないですね。
考える方が楽ですよね。逆にちゃんと調べて描くより、創作で考える方が自分で勝手に考えられるから(笑)
元がちゃんとあると調べないといけないですからね。

――本当に『ちぃちゃん』に出てくる料理を作ってくれて紹介しているサイトもありますよね。

あれ見てます。ツイッターでフォローしていただいているんで。
あれは、すごいなと思いますもん。あの人すごいですよね。

――学生さんの回のハンバーガーのやつを揚げてとか。

頭の中でやってるんで、よくちゃんと作ったなと。

――『ちぃちゃん』のモデルのお店ってないんですかね?

デビューした時に、小料理屋さんに行って。その時に見たのがなんとなくこんな感じかなと思って使ったけど。
その後、色々行ってみると意外とあの店かわってたんだなと。そこは本当に民家みたいなお店だったんで。

――キャラクターのモデルはいますか?

ネタに合わせてというか。最初の時のネタで出てきたキャラだけでなんか回せそうだなと思って。特に考えずに。
後半、一回、四コマ二本やってくれっていわれたときにキャラ増やしましたけど。
また10年経ったらまた増やしたらいいやぐらいなもんで。

――『ちぃちゃん』、キャラクターが生き生きしていて、みんなでフォローし合ってるところもあって、嫌味がないですよね。

俺の心の綺麗な部分だけで描いてますからね(笑)
たまに、ちぃが金金いいすぎですって怒られますけどね。

――みづはの建物、綺麗ですよね。

本当に当たり障りの無いデザインにしようと思って。テント張りの屋根があって。ドアがあって。あんま大きくない方がいいなと思って。

――細部が細かいですが、デザイナーをされていたのでしょうか?

全然。社会人生活0ですから僕。
ストーリィ漫画を描いてたせいでしょうか。

――ギャグは毎回、最後に落とさないといけない部分があると思うのですが、良く思いつきますよね。

最初の1~2年はよくわからないでやってたと思うんですが。
慣れてくるとなんとなくこう脚本と一緒なんだなと、ちょっと分かってきた気がするんで。
最初の前ふりみたいのを受けて、意外なことをやればいいのかなと。
ある程度のルールが見えてきたんで、あんま苦労しなくなったって感じですかね。

――去年は振り返ってみていかがでしたか?

去年は忙しかったなあ。
1年間多分ずっと100ページ超えみたいなスケジュールだったから。ああ、100ページ超えるとキツイなと分かりましたね。
月80ぐらいが楽なんだなと……やってみて分かりました。

――お忙しいところ、ありがとうございました。

大井昌和先生

【プロフィール】
大井 昌和(おおい まさかず)。
『ちぃちゃんのおしながき』『おくさん』『起動帝国オービタリア』など、多くの著書や連載を持たれている人気漫画家。

【リリース情報】
竹書房から『ちぃちゃんのおしながき』9巻が2012年12月1日に発売中。

【オフィシャルサイト】
http://d.hatena.ne.jp/ooimasakazu/
【ツイッター】
https://twitter.com/ooimasakazu

(インタビュー:川上竜之介)