「うちの本棚」、今回取り上げるのはやまと虹一がコミカライズを担当した石森章太郎原作の『アクマイザー3』です。
「月刊少年マガジン」で2回だけ連載された、前後編の読み切りに近い作品ですが、内容面、作画面、ともに水準の高い佳作といえるでしょう。
本作は『秘密戦隊ゴレンジャー』と同じ集団ヒーローものの特撮テレビドラマ『アクマイザー3』のコミカライズ版で、原作は石森章太郎、コミカライズはやまと虹一が担当した。今回取り上げた「月刊少年マガジン」版は2回だけの連載だったが、同じ講談社の「テレビマガジン」など他の媒体でもコミカライズされていて、やまと虹一は複数の媒体で作画を担当していた。
ちなみに、やまと虹一のコミカライズ作品は本作のほかにも石森章太郎原作のものがいくつかある。またダイナミック・プロに所属していた時期もあり、本作もそうだが、絵柄的には石森というより永井 豪に近い印象がある。
内容は、地球内部の地下にあるアクマの世界から、地上の侵略が始まるが、アクマと人間の混血であるザビタンは、そんなアクマに反逆し、イビル、ガブラのふたりのアクマ族とともに地上侵略を阻止するために闘うというもの。もっとも主人公として動くのは、そんなアクマの侵略やザビタンたち「アクマイザー3」の存在を知り、協力する一平という新聞記者である。
それにしてもアクマ族が人類以前に地球に誕生していた種族であり、地下世界にその生存圏を求めていたのが地上への復帰を決意し、人類を奴隷とするため侵略を開始するというのは『デビルマン』と『ゲッターロボ』を足したような設定だ。主役であるザビタンたち「アクマイザー3」がもともとアクマ族であり、裏切るというのも『デビルマン』同様といえる。同じ東映系作品だから、と言ってしまっていいのだろうか。
やまと虹一のコミカライズはストーリー重視で、作品として読みごたえのある仕上がりになっている。その分、特撮作品的な主役ヒーローの必殺技などの印象が薄いのは否めないが。
テレビドラマでも描かれた、仲間を裏切って人類に味方するというザビタンの苦悩も、2話で少し触れられていて、全2回で終了してしまっているのが残念な作品だ。
これまで単行本化のチャンスに恵まれていない本作であるが、内容面、作画面、両方ともに高水準の仕上がりなので、単行本化されることを期待している。
初出/講談社「月刊少年マガジン」(1975年11月号、12月号)
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)