おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第九十七回 怪人同盟/石森章太郎

【うちの本棚】第九十七回 怪人同盟/石森章太郎「うちの本棚」、今回は石森章太郎の『怪人同盟』をご紹介いたします。最初の単行本刊行時には描かれていなかった番外編を収録した完全版のメディアファクトリー版。突然与えられた超能力を3人の少年たちがどう使っていくのかが見どころです。


  • 『怪人同盟』は秋田書店の「冒険王」に1967年3月号~8月号にかけて連載された。また番外編の『怪奇植物園』は同誌1979年8月号に掲載された。単行本は当初1967年に、秋田サンデーコミックから1967年連載分を収録したものが刊行され、その後同単行本は1976年に秋田漫画文庫で文庫化された。この刊行年からわかる通り番外編は単行本刊行後に発表されたもので、単行本収録は今回取り上げたメディアファクトリー版が初収録となった。

    作品年表で見ると「少年マガジン」での『サイボーグ009』連載終了と同時に本作の連載がスタート、また同じ「冒険王」では5月から『009』の連載が始まっている。内容の割りに短命に終わったのは『009』復活の余波と見るべきとの本書解説の見方は正しいだろう。ちなみにこの解説では本作品の3人の主人公が持たされた超能力を『009』のメンバーに当てはめて、『サイボーグ009』を別の角度から描こうとしたと見ているが、ボクとしては機械的な改造ではないという作品中の記述から考えると、純粋に超能力を扱った作品として構想していたのではないかという気がしている。

    全体として主人公がごく普通の少年たちであり、ある日突然超能力を持ってしまったというところから、関わる事件も身近な殺人事件や誘拐事件が多い。3話では「ジキルとハイド」のように薬によって変身するというSF的なエピソードが描かれるが、むしろこれが例外といってもいい(このエピソードはモノクロアニメ版の『サイボーグ009』にも使用された)。何者かはわからないが3人の少年たちに特別な能力(変身、怪力、予知)を与え、3人はそれを地球人が試されていると感じる。このあたりの設定は平井和正・桑田次郎の『エリート』に通じるだろう。

    実は石森作品を最初に読んだのがこの『怪人同盟』だったと思う。秋田サンデーコミックス版を偶然手に入れ、その面白さにのめり込んだ。また普通このような能力を持った主人公たちを登場させればタイトルは「超人同盟」でもいいところを「怪人同盟」とした点に作者のセンスも感じてしまう。単行本カバーの表紙にも使われた大きくタイトルをデザインしたイラストも、崩れかけたコンクリートのような文字の印象が強く「怪人同盟」というタイトルの怪しさを引き立てている。
     ところで主人公の3少年のうち、特に主体となって描かれるのは変身能力を持った竜二だ。そう、その後描かれる「リュウ」シリーズにこの主人公も属していたのではないかと思うのである。

    書 名/怪人同盟
    著者名/石森章太郎
    出版元/メディアファクトリー
    判 型/A5判
    定 価/1000円
    シリーズ名/ShotaroWorld(015)
    初版発行日/1998年3月1日
    収録作品/怪人同盟(4話)、恐怖植物園(番外編)

    (文:猫目ユウ / https://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】189回 アクマイザー3/やまと虹一(原作・石森章太郎)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】180回 変身忍者 嵐/石川 賢(原作・石森章太郎)

  • 【名作映像案内】第7回 宇宙からのメッセージ
    コラム, 雑学

    【名作映像案内】第7回 宇宙からのメッセージ

  • Sπ(エスパイ)/石森章太郎
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第九十九回 Sπ(エスパイ)/石森章太郎

  • 気ンなるやつら/石森章太郎
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第九十八回 気ンなるやつら/石森章太郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第九十五回 王(キング)アラジン/石森章太郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第十五回 ミュータント・サブ/石森章太郎

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…
    2. Shuffle Town

      キーボードを叩くと家が出現!文書に「町」を作るフォント「Shuffle Town」が面白い

      手書き風の文字だったり、ホラー風の文字だったり、一風変わった文字を簡単に使用することができるデジタル…
    3. “すっぱいペヤング”が爆誕!?超大盛りハーフ&ハーフシリーズ最新作を実食

      “すっぱいペヤング”が爆誕!?超大盛りハーフ&ハーフシリーズ最新作を実食

      まるか食品は11月4日、「tabete だし麺×ペヤング超大盛やきそばハーフ&ハーフすっぱゆず」を発…

    編集部おすすめ

    1. アカウント1の投稿

      【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ※この記事は前編からの続きです。前編では、Temuを名乗る複数のアカウントを調査する中で見えてきた構図をお伝えしました。ここからは、Temu…
    2. ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

      ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

      ヤマト運輸株式会社は、11月10日から「宅急便当日配送サービス」の提供を開始し、併せて新たに「同一都道府県内運賃」を導入すると発表した。午前…
    3. 1回1万円の「大人のセボンスター」カプセルトイ登場 女児ゴコロときめく本格宝石入り

      1回1万円の「大人のセボンスター」カプセルトイ登場 女児ゴコロときめく本格宝石入り

      株式会社KARATZが、カバヤ食品の玩具菓子「セボンスター」45周年を記念したジュエリー企画「大人のセボンスター」第3弾を発表。11月5日に…
    4. 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」

      嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現時点なし」

      人気グループ「嵐」の公式SNSをめぐり、偽アカウントの出現が相次いでいることを受け、所属する株式会社嵐の四宮隆史社長が11月4日、自身のX(…
    5. ヒャダイン氏おすすめ 「ブロッコリー×ごはんですよ×ねぎ油」レシピ作ってみた

      ヒャダイン氏おすすめ 「ブロッコリー×ごはんですよ×ねぎ油」レシピ作ってみた

      音楽クリエイターのヒャダイン(前山田健一)さんが、Xで紹介した超手軽レシピ。それは「ブロッコリーを桃屋『ごはんですよ』と『ねぎ油』で和えたら…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト