おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第九十五回 王(キング)アラジン/石森章太郎

「うちの本棚」、今回は石森章太郎が『鉄人28号』を描いたらこうなる、という雰囲気の『王(キング)アラジン』をご紹介いたします。豊富なアイデアを次々に放り込んだエンターテインメント作品。なかなか気軽に読める機会がないのが残念です。

本作は「少年画報」1961年5月号~1962年3月号に連載された、石森章太郎の作品。同時期には代表作でもある『幽霊船』や名作『竜神沼』なども発表されている。


  • 内容は、石森章太郎が『鉄人28号』を描いたらこうなる、といったもので、ランプから現れる謎の巨人(実はラピア星人)アラジンとアラジンを自由に操ることのできるランプ、そしてアラジンにエネルギーを与える銃の奪い合いがストーリーの基本軸となっている。現代のフランケンシュタインとも言うべきマッドサイエンティストによって作られたロボット(人間の脳を使っているのでサイボーグというべきかもしれないが)も登場し、アラジンとの戦闘シーンも描かれている。このあたり、鉄人とブラックオックスという印象をどうしても受けてしまう。

    本作の時点で石森は、人間が宇宙人によって造られたものであるという設定を持ち込んでいる。また宇宙人たちの思惑から外れ、戦争を繰り返すロボット(地球人)を星ごと消滅させようということまで宇宙人は述べ、主人公の説得によって100年間だけ猶予を与えられることになるのだが、これは横山光輝の『マーズ』にもつながる印象を持った。

    ビジュアル面では初期のまるっこい絵柄が基本になっているがアラジンや、主人公の友人となる新聞記者など頭身の高いキャラクターも描かれ、過渡期といってもいいかもしれない。

    ちなみにアラジンのデザインをのちの『ゴレンジャー』の原型と指摘している人も複数いるようなのだが、作者的にはそういう思惑もなく、単純に考えられた物ではなかったかという気がする。あえていうならゴレンジャーのデザインが安易すぎたということではないだろうか。

    単行本は本書のほか、石ノ森章太郎萬画全集で刊行されている。

    2巻に収録された『赤い魔神』は「中学生の友一年生」1960年5月号~12月号に連載された作品で、火星人の侵略を描いたもの。似たような設定の作品が石森にはいくつかある。

    書 名/王(キング)アラジン・全2巻
    著者名/石森章太郎
    出版元/双葉社
    判 型/新書判
    定 価/各350円
    シリーズ名/パワァコミックス
    初版発行日/1巻・昭和50年5月10日、2巻・昭和50年6月10日
    収録作品/1巻・王(キング)アラジン(アラジンあらわる!、アラジンのランプとエネルギー・ガン、アラジンよ おれのどれいよ!、国立科学研究所、エネルギーガン いずこ)
         2巻・王(キング)アラジン、赤い魔神

    (文:猫目ユウ / https://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】189回 アクマイザー3/やまと虹一(原作・石森章太郎)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】180回 変身忍者 嵐/石川 賢(原作・石森章太郎)

  • 【名作映像案内】第7回 宇宙からのメッセージ
    コラム, 雑学

    【名作映像案内】第7回 宇宙からのメッセージ

  • Sπ(エスパイ)/石森章太郎
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第九十九回 Sπ(エスパイ)/石森章太郎

  • 気ンなるやつら/石森章太郎
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第九十八回 気ンなるやつら/石森章太郎

  • 【うちの本棚】第九十七回 怪人同盟/石森章太郎
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第九十七回 怪人同盟/石森章太郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第十五回 ミュータント・サブ/石森章太郎

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    2. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. 床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      頭をぐりぐり動かしながら、床の上を滑っていく1匹のワンちゃん。飼い主さんが「モップ機能つき生ルンバ」と呼ぶビションフリーゼ・せとくんの動画が…
    2. 工場労働者2138人、1万時間の作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場労働者2138人、1万時間の手作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場向け自動化ロボットの研究開発を行うテクノロジー企業、Build AIが、工場労働者2138人による合計1万時間の作業映像をオープンソース…
    3. お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      「解体しながら飲む」が合言葉。童話でお馴染みの「お菓子の家」を、そのまま大人向けに置き換えたような、その名も「つまみの家」がXに登場しました…
    4. 作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業中に「猫」と「たき火」の癒やしを感じながら集中できる……そんな新感覚のゲーム「たき火と猫」のSteamストアページが公開されました。本作…
    5. アカウント1の投稿

      【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ※この記事は前編からの続きです。前編では、Temuを名乗る複数のアカウントを調査する中で見えてきた構図をお伝えしました。ここからは、Temu…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト