「うちの本棚」、今回は石森章太郎が『鉄人28号』を描いたらこうなる、という雰囲気の『王(キング)アラジン』をご紹介いたします。豊富なアイデアを次々に放り込んだエンターテインメント作品。なかなか気軽に読める機会がないのが残念です。
本作は「少年画報」1961年5月号~1962年3月号に連載された、石森章太郎の作品。同時期には代表作でもある『幽霊船』や名作『竜神沼』なども発表されている。
内容は、石森章太郎が『鉄人28号』を描いたらこうなる、といったもので、ランプから現れる謎の巨人(実はラピア星人)アラジンとアラジンを自由に操ることのできるランプ、そしてアラジンにエネルギーを与える銃の奪い合いがストーリーの基本軸となっている。現代のフランケンシュタインとも言うべきマッドサイエンティストによって作られたロボット(人間の脳を使っているのでサイボーグというべきかもしれないが)も登場し、アラジンとの戦闘シーンも描かれている。このあたり、鉄人とブラックオックスという印象をどうしても受けてしまう。
本作の時点で石森は、人間が宇宙人によって造られたものであるという設定を持ち込んでいる。また宇宙人たちの思惑から外れ、戦争を繰り返すロボット(地球人)を星ごと消滅させようということまで宇宙人は述べ、主人公の説得によって100年間だけ猶予を与えられることになるのだが、これは横山光輝の『マーズ』にもつながる印象を持った。
ビジュアル面では初期のまるっこい絵柄が基本になっているがアラジンや、主人公の友人となる新聞記者など頭身の高いキャラクターも描かれ、過渡期といってもいいかもしれない。
ちなみにアラジンのデザインをのちの『ゴレンジャー』の原型と指摘している人も複数いるようなのだが、作者的にはそういう思惑もなく、単純に考えられた物ではなかったかという気がする。あえていうならゴレンジャーのデザインが安易すぎたということではないだろうか。
単行本は本書のほか、石ノ森章太郎萬画全集で刊行されている。
2巻に収録された『赤い魔神』は「中学生の友一年生」1960年5月号~12月号に連載された作品で、火星人の侵略を描いたもの。似たような設定の作品が石森にはいくつかある。
書 名/王(キング)アラジン・全2巻
著者名/石森章太郎
出版元/双葉社
判 型/新書判
定 価/各350円
シリーズ名/パワァコミックス
初版発行日/1巻・昭和50年5月10日、2巻・昭和50年6月10日
収録作品/1巻・王(キング)アラジン(アラジンあらわる!、アラジンのランプとエネルギー・ガン、アラジンよ おれのどれいよ!、国立科学研究所、エネルギーガン いずこ)
2巻・王(キング)アラジン、赤い魔神
(文:猫目ユウ / https://suzukaze-ya.jimdo.com/)