おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第十五回 ミュータント・サブ/石森章太郎

「うちの本棚」、第十五回目となる今回は石森章太郎(石ノ森章太郎)の代表作のひとつである『ミュータント・サブ』をご紹介いたします。
『サイボーグ009』で「サイボーグ」の認識を広めたのと同じように『ミュータント・サブ』で、石森章太郎は「ミュータント」という言葉や超能力の認識を広めたような気がする。

  • この作品、まとめて読んだというより、バラバラに読んでいた気がする(もちろん単行本で、なのだが)。それぞれが独立した短編としても読めるので、それでもまったく問題はないのだが、改めて通して読んでみると共に初出を見てみると、ほぼ月一ペースで「連載」されていたことがわかる。特に「少年サンデー」掲載のものは、独立した短編ではあるが、「ぼくら」、「少年マガジン」のものより登場人物などが共通していて、時系列として連続している。また「少女」版で未完に終わった最初期のアイデアは「X指令編」にほぼ流用されている(もっともこの作品は、初出当時「ミュータント・サブ」ではなかったようだ。また絵柄的に、以前に描かれて未発表になっていたものを「冒険王別冊」に掲載したのではないかとも思える)。

    交通事故に遭った少年サブは、事故を起こした車に乗っていた少女マリの血を輸血される。病院のベッドで目覚めたサブは、それまでの自分にはない能力が身についていることに気がつく。そしてマリの母が、自分の母と同じく、広島で被曝してた事実を知り、自分の血をマリにも輸血すると、同じように超能力に目覚めるのだった。

    そしてサブは、超能力を使ってさまざまな事件を解決し、また同じような能力を持つ「仲間」を探し求めるのだ。
    「少女」版では、輸血による能力の発現というものはなく、生まれついての超能力者だった。
    「キャプテン・サブ編」は東映動画の『海賊王子』のキャラクターが登場する(というより、『海賊王子』をサブに置き換えている)。
    「少年マガジン」掲載の3作は、超能力者である自分を孤独に感じ、仲間を求めるという、他の作品より大人向けに仕上げられている。

    本作は石森章太郎(石ノ森章太郎)の代表作として知られるもののひとつではあるが、結果的に、2年ほどの間に集中して描かれた作品ではあるが、一貫したストーリーというものではなく、「サブ」というキャラクターを使った読み切り連作になっている点で、どこか捉えにくい作品になってしまっているような印象を受ける。

    初出:[少女版]「少女」昭和36年9月号~昭和37年1月号
       誕生編 昭和40年1月「少年サンデー増刊」
       設計図X編 昭和40年2月「少年サンデー」
       秘密調査員0号編 昭和40年3月「少年サンデー増刊」
       けものの町編 昭和40年5月「少年サンデー」
       ロボット城編 昭和40年6月「少年サンデー別冊」
       暗殺脳波編 昭和40年8月「少年サンデー増刊」
       白い少年編 昭和40年12月「少年サンデー」
       幽霊編 昭和41年1月「少年サンデー」
       雪と火のまつり編 昭和41年1月「少年サンデー別冊」
       10人のサンタクロース編 昭和40年12月~昭和41年1月「ぼくら」
       雪魔人編 昭和41年1月~2月「ぼくら」
       キャプテン・サブ編 昭和41年3月「ぼくら」
       スイッチピッチャー・サブ編 昭和41年4月「ぼくら」
       原始少年サブ編 昭和41年5月「ぼくら」
       スパイハンター・サブ編 昭和41年6月「ぼくら」
       エッちゃんとサブ編 昭和41年7月「ぼくら」
       X指令編 昭和41年12月「冒険王別冊」
       闇の叫び編 昭和42年春「少年マガジン増刊」
       超人の里編 昭和42年夏「少年マガジン増刊」
       魔女の条件編 昭和42年秋「少年マガジン増刊」
    書誌:コダマプレス・全2巻
       虫プロ商事「石森章太郎選集」全3巻
       サン・コミックス・全3巻
       サン・ワイドコミックス・全2巻
       サンリオ・「少女版ミュータント・サブ」全1巻
       双葉文庫名作シリーズ 全2巻
       角川書店・石ノ森章太郎萬画全集・全4巻

    ※第7回講談社漫画章受賞作品

    ■ライター紹介
    【猫目ユウ】
    ミニコミ誌「TOWER」に関わりながらライターデビュー。主にアダルト系雑誌を中心にコラムやレビューを執筆。「GON!」「シーメール白書」「レディースコミック 微熱」では連載コーナーも担当。著書に『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』など。

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】189回 アクマイザー3/やまと虹一(原作・石森章太郎)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】180回 変身忍者 嵐/石川 賢(原作・石森章太郎)

  • 【名作映像案内】第7回 宇宙からのメッセージ
    コラム, 雑学

    【名作映像案内】第7回 宇宙からのメッセージ

  • Sπ(エスパイ)/石森章太郎
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第九十九回 Sπ(エスパイ)/石森章太郎

  • 気ンなるやつら/石森章太郎
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第九十八回 気ンなるやつら/石森章太郎

  • 【うちの本棚】第九十七回 怪人同盟/石森章太郎
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第九十七回 怪人同盟/石森章太郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第九十五回 王(キング)アラジン/石森章太郎

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 【実食】コメダ珈琲店の「ドデカメンチバーガー」は名前に偽りなし バンズからはみ出す“肉の暴力”

      【実食】コメダ珈琲店の「ドデカメンチバーガー」は名前に偽りなし バンズからはみ出す“肉の暴力”

      コメダ珈琲店は10月16日から「ドデカメンチバーガー」と「ドデカチーズメンチバーガー」の2種類のバー…
    2. 自宅に“機内”を再現!「飛行機オタク」が作り上げた最高の趣味部屋

      自宅に“機内”を再現!「飛行機オタク」が作り上げた最高の趣味部屋

      趣味を持つ人なら憧れる、好きなもので埋め尽くされた趣味専用の部屋。本、ゲーム、楽器、絵画、彫刻など自…
    3. 藝大卒の声楽家が1時間1000円で自分を貸し出す理由 フリー芸術家ならではの戦略

      藝大卒の声楽家が1時間1000円で自分を貸し出す理由 フリー芸術家ならではの戦略

      プロの声楽家として活動する傍ら、1時間1000円から自分の時間を「レンタル」している男性。キャリア豊…

    編集部おすすめ

    1. 鳥羽水族館、ラッコ配信で“飼育係モザイク化” カスハラ対策で映像方法変更

      鳥羽水族館、ラッコ配信で“飼育係モザイク化” カスハラ対策で映像方法変更

      三重県の鳥羽水族館は10月15日、人気配信「鳥羽水族館ラッコ水槽ライブカメラ」の映像内容を一部変更すると発表しました。今後は、給餌の際などに…
    2. 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)

      ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」を発売

      マクセルイズミ株式会社は、ストッキングやタイツなどの繊細な衣類にも対応する毛玉取り器の新モデル、「毛玉とるとる Pro(KC-NW825)」…
    3. キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンが、バンダイの「ガシャポン」とコラボレーション。歴代のカメラとレンズをミニチュア化した「Canon ミニチュアカメラコレクション」を…
    4. 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信社は10月9日、自民党本部での取材中に「支持率下げてやる」などと発言した本社映像センター写真部の男性カメラマンを厳重注意したと発表し…
    5. 「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      言わずと知れた人気コンテンツ「ちいかわ」。かわいくもハードなあの作品世界に入っていきたいと願う人は多いはず。筆者もその1人です。しかし二頭身…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト