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【うちの本棚】第百三十五回 灰になる少年/ジョージ秋山

【うちの本棚】第百三十五回 灰になる少年/ジョージ秋山今回の「うちの本棚」は、アニメ映画『アシュラ』が公開中のジョージ秋山作品から『灰になる少年』をご紹介します。トラウマ作品としても知られる本作、単にホラーというジャンルに納まらない魅力があります。


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    この作品は、ジョージ秋山流の吸血鬼モノといっていいと思うのだが、巨大ロボットモノの『ザ・ムーン』がそうであるように、この作品も単に吸血鬼をテーマにした、といえないジョージ秋山作品ならではの哀愁がただよう佳作である。

    初出は73年の「週刊少年ジャンプ」で、おぼろげな記憶で、床屋かどこかで初出の一部を読んだような気がする。その後、大都社で単行本が刊行された際、「あ、あの作品だ」と思ったのでたぶんどこかで見ていたのは確かだと思う。

    ひと口に吸血鬼テーマのホラーと言い切れないミステリーやサスペンスが作品全体を覆っていて、主人公の少年が、殺人事件の犯人を父親だと信じ、自分も殺されると思って逃げ回ったり、不気味な怪物に襲われたりと、ストーリーがどこに向かっていくのか予想できないところがあるのは、ジョージ秋山作品の特徴と言っていいかもしれない。

    すでに『銭ゲバ』や『アシュラ』といった社会派作品も手がけた後でもあり、企業の社長である少年の父親が、公害問題で悩んでいたりする描写があったりもして、社会問題や、少年にはわからない社会の現実や大人の世界といったものが描かれている点で、この作品がジョージ秋山の代表的短編作品として知られるようになった要因になっているのではないかと思う。けっこう「トラウマ作品」として本作を挙げる人も多い。

    もっとも同時に、この時期にはギャグ作品、コメディ作品も手がけていて、個人的にはまだジョージ秋山=ギャグ漫画作家というイメージは強かった。

    現在は文庫版や電子書籍で読むことのできる本作ではあるけれど、大都社版のB6サイズが迫力があっていい。ジョージ秋山作品はあまり大判の単行本で刊行される機会がないのだけれど、本作や『ザ・ムーン』など、A5判などで刊行してくれないだろうか。

    書 名/灰になる少年
    著者名/ジョージ秋山
    出版元/大都社
    判 型/B6判
    定 価/450円
    シリーズ名/スターコミックス(5)
    初版発行日/昭和50年10月30日
    収録作品/灰になる少年

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
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