おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第百四十回 ねこまんまのジョージ/ジョージ秋山

【うちの本棚】第百四十回 ねこまんまのジョージ/ジョージ秋山「うちの本棚」、今回ご紹介するのは作者をモデルとした主人公が登場するジョージ秋山の『ねこまんまのジョージ』です。猫好きには気になるタイトルかもしれませんが、猫マンガではありません(笑)。


  • 【関連:第百三十九回 電撃ハリキリ娘ピンチー/ジョージ秋山】

    ジョージ秋山が、流行した歌謡曲をモチーフに、やくざ者の主人公「ねこまんまのジョージ」を描いていく作品。基本的にはギャグ作品といえるのだが、はんぱ者の主人公が関わる登場人物たちとの交流に、心の温まる展開やセリフがあり、言ってみれば映画「寅さんシリーズ」のようなもの。主人公の服装も寅さんを意識しているのは明確だろう。

    とはいえ、各話ごとにテーマとなる流行歌を置いたことで、全エピソードを通しての設定は主人公がやくざ者であること以外には縛られていない。強いて言えば一話、二話で主人公の家族が登場するところが連続したストーリーといえるところだろう。三話では主人公自体が登場しない、エピソードに合わせた独立した話しにもなっている(とはいってもその外見は作者をモデルにしているところは同じなので「もうひとりの、ねこまんまのジョージ」と言ってもいいかもしれない)。

    四話以降はぐっとギャグ作品の傾向が強くなっていて、主人公のビジュアルも開始当初に比べギャグ作品のキャラクター的に若干の変更がされているようだ。

    各話ごとに流行歌が設定されてはいるものの、その歌詞に沿ったストーリーということではなく、歌詞の内容のエッセンスを取り出して作者が自由に物語を描いているところから、カバー袖には「ジョージ秋山式日本の歌新解釈篇」とも書かれている。本作前後には落語をモチーフにした『名作落語全集』という作品も描かれている。

    ジョージ秋山作品の復刊や未刊行作品の単行本化などではシリアスな作品ばかりが取り上げられる傾向が強い印象があるが、作者の作風からいえば本作のようなギャグ作品にジャンル分けされるようなものも得意分野であることは事実で、再刊行の機会に恵まれないのは惜しい気がする。

    書 名/ねこまんまのジョージ
    著者名/ジョージ秋山
    出版元/双葉社
    判 型/新書判
    定 価/350円
    シリーズ名/バワァコミックス
    初版発行日/昭和50年11月10日
    収録作品/涙の連絡船、おふくろさん、喝采、月の法善寺横丁、傷だらけの人生、雪の渡り鳥

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 【うちの本棚】第百三十九回 電撃ハリキリ娘ピンチー/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十九回 電撃ハリキリ娘ピンチー/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十八回 ざんこくベビー/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十八回 ざんこくベビー/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十七回 黒ひげ探偵長/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十七回 黒ひげ探偵長/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十六回 コンピューたん/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十六回 コンピューたん/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十五回 灰になる少年/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十五回 灰になる少年/ジョージ秋山

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第十九回 ザ・ムーン/ジョージ秋山

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…
    2. Gmailを受診している画面

      Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

      Gmailの仕様変更により、外部メールを取り込むPOP受信機能が2026年1月より利用できなくなりま…
    3. イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)

      仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)の劇場公開40周年を記念したイベント「清水 ビー・バ…

    編集部おすすめ

    1. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    2. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    3. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    4. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    5. パラマウントのプレスリリース

      まるで三角関係?Netflixと“婚約発表”したワーナーにパラマウントが求婚 関係を分かりやすく解説

      アメリカの映画製作・配給会社であるパラマウントが12月8日、同じくアメリカのメディア企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)を1株…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト