【うちの本棚】第百三十七回 黒ひげ探偵長/ジョージ秋山「うちの本棚」、今回ご紹介するのはジョージ秋山の『黒ひげ探偵長』です。作者本人をモデルにしたと思われる、漫画家兼探偵の「黒ひげ」が活躍するギャグ作品です。


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初期のジョージ秋山の単行本の中でレアな部類に入る一冊。ジャンプ関連の作品は本書のほかも入手の難しいものがあり、ファンやコレクター泣かせともいえるだろう。

本作の主人公「黒ひげ」氏は、探偵と漫画家を掛け持ちしているという設定で、漫画家としても人気作家で、締め切りに追われながら探偵として事件を解決する(というか、いつのまにか解決してるという雰囲気でもあるのだけれど)。タイトルにも「探偵長」と付いてしまっているので、ハードボイルドな雰囲気のカットが各話に必ず挿入されたりもするのだけれど、全体としては「漫画家」黒ひげがメインになっているといっていい。

ビジュアル的に見ても、主人公の黒ひげは、ジョージ秋山本人をモデルにしていると思われるし、単行本の著者近影でお馴染みのサングラス姿も共通していたりする(もっとも、本書のカバー袖に掲載されている著者近影ではサングラスをかけていない、満面の笑みをたたえた珍しい写真を見ることができる。この写真だけでもジョージ秋山マニアは本書を入手するべきかもしれない)。

基本的にはギャグ作品であり、探偵としてのシリアスなハードボイルドシーンも、ギャグを活かすためのスパイスとなっている。が、後半になるとしだいにペーソスが含まれだし、最終話では、人気漫画家もいずれ飽きられるという自戒のようなエピソードが描かれている。『パットマンX』や『ほらふきドンドン』といった長期連載作品があった一方で、単行本全一巻程度のギャグ作品が多かったジョージ秋山は、案外ギャグだけを描き続けることができなかったのかもしれない。その方向性が『デロリンマン』となり、『よたろう』になっていったのではないだろうか。

ジャンプコミックスは巻末にタレントや著名人の推薦文が掲載されていたが、本書のそれは「コント55号」の萩本欽一であった。

書 名/黒ひげ探偵長
著者名/ジョージ秋山
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/ジャンプコミックス
初版発行日/1970年4月30日
収録作品/黒ひげ探偵長 全14話

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/