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【うちの本棚】157回 Hey! ギャモン/板橋しゅうほう

【うちの本棚】157回 Hey! ギャモン/板橋しゅうほう「うちの本棚」、今回は板橋しゅうほうの『Hey! ギャモン』を取り上げます。

板橋しゅうほうの代表作のひとつであるとともに異彩を放つSFアクションコミックで、サイボーグマンのギャモンや相棒のT乱歩、毬花、マンダリンといった登場人物たちも生き生きと描かれた傑作。個人的にも板橋作品中一番のお気に入りです。


  • 【関連:156回 セブンブリッジ/板橋しゅうほう】
     
    本作品は『アイ・シティ』終了後「月刊スーパーアクション」に連載されたもので、板橋作品としては異彩を放っていると言っていいだろう。

    主人公のギャモンはサイボーグマンであり、当初は機械化された肉体に関して不安や畏れも吐露していた。このあたり、板橋としては平井和正の『サイボーグブルース』を自分なりにやってみたかったのではないかと言う気がする。けれど中盤以降はアクション重視の痛快な作品へと展開していく。そのきっかけとなったのは、マンダリンという女性キャラの登場だろう。ビジュアル的にも、このマンダリンは他の板橋作品には登場しない(というか、登場しつつもあまり活躍しなかった)キャラといってよく、ギャモンの愛する毬花(まりはな)という女性キャラを押し退けて、後半はヒロインとして活躍している。個人的にもマンダリンあっての『Hey! ギャモン』という気がしていて、このキャラクターの登場がなかったらどうなっていただろうかと思ってしまう。

    ギャモンは元軍人だが(そこでサイボーグ手術を受けたという設定)、現在はトレジャーヒッティング、つまり宝探しを仕事にしている。T乱歩(とらんぷ)という相棒は予知能力などを持っていて頼りになる少年。ストーリーの基本はふたり(時には毬花が加わって3人)での宝探しである。

    時代設定はあいまいで、宇宙旅行が容易であり、地球人のほかにも知的な宇宙人と友好関係にある時代である(でも記憶媒体として登場しているのがフロッピーだったりもする。このあたりは85年当時の状況としていたしかたないのかもしれないが、すでにCDもあったわけだし、板橋としては脇が甘かった気がしないでもない。もっともフロッピー自体が大容量になっているようではあるが)。

    実を言うと、板橋作品の中ではこの『Hey! ギャモン』がもっとも好きな作品である。適度に肩の力が抜けているというか、楽しんで描いていたのではないかと思われる点もそうだが、やはりマンダリンというキャラクターが個人的にお気に入りというのが大きな理由かもしれない。

    単行本はアクションコミックスで全3巻でまとめられたあと、全2巻のDX版でも刊行された。

    最初の単行本のカバーではアニメ調の彩色が施されていて、『アイ・シティ』に続いてアニメ化も目論んでいたのではないかと想像してしまう。いや実際、アニメ化してほしい気もする作品ではある。

    初出:双葉社「月刊スーパーアクション」1984年10月号~1986年6月号

    書 名/Hey! ギャモン(全3巻)
    著者名/板橋しゅうほう
    出版元/双葉社
    判 型/B6判
    定 価/各480円
    シリーズ名/ACTION COMICS
    初版発行日/第1巻・1985年11月28日、第2巻・1985年12月28日、第3巻・1985年9月28日(この第3巻の発行日は単純な誤植と思われる)
    収録作品/Hey! ギャモン

    Hey!ギャモン-01 Hey!ギャモン-02 Hey!ギャモン-03

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
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    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
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