おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】162回 妖怪人間ベム/田中 憲

妖怪人間ベム-田中「うちの本棚」、今回取り上げるのは「はやく人間になりたい」のセリフも有名な『妖怪人間ベム』です。前回取り上げた『黄金バット』とは第一動画つながりともいえますね。

コミカライズ版『妖怪人間ベム』はオリジナル色の強い作品で、コミック版だけでも十分に楽しめる作品に仕上がっています。


  • 【関連:161回 黄金バット/一峰大二(原作・加太こうじ)】
     
    本作は第一動画制作による異国情緒溢れるホラーアニメ『妖怪人間ベム』のコミカライズ作品。アニメ版は韓国のテレビ局が制作に参加しており、キャラクターや背景など、それまで馴染んできた国産アニメとは一線を画する雰囲気が特徴でもあった。製作者の談によれば逆輸入といってもいいものだったという。

    そのコミカライズ作品は田中 憲によって講談社の「ぼくら」の別冊付録「テレビコミックス」に連載されたわけだが、田中 憲はのちの田丸ようすけである。単行本巻末の作者のコメントによれば、田中は東映動画の出身であり、アニメ作品のコミカライズに抜擢されたのもそのあたりの理由もあったのかもしれない。

    コミカライズ版『妖怪人間ベム』は、アニメ作品を元にしているが、当初はガリ版刷りの企画書程度の素材しか提供されなかったらしく、アニメ本編では採用されなかった妖怪人間たちの誕生エピソードが描かれるなどオリジナル色の強い仕上がりになっている。そのため、コミカライズ版でも途中から「人間になるため」に悪と闘っていることになるが、誕生エピソード自体は「悪と闘う妖怪人間」として生れたことになっている。

    ちなみに、アニメ版の設定では17~18世紀に作られた人工生命の細胞がのちに成長したものとされ、コミカライズ版では戦争中にドイツの科学者によって作られたことになっている。いずれにしろ人に作られたものであり、そのアイデアの元はホムンクルスにあると言っていいだろう。

    田中は白土三平に影響を受けたと語っていて、スピード感のある作画にその印象を残している。とくにベロの描写では、白土三平の少年忍者を彷彿とさせる感がある。

    アニメ作品ではヨーロッパ風の町並みなども印象に残るが、コミカライズ版では主に日本を舞台にしていて、山間部での描写が多い。

    前述したようにオリジナル色の強い本作は、アニメ作品のイメージ通りではないが、妖怪人間を主人公にしたアナザーストーリー的に楽しめる作品と言っていいだろう。

    コミカライズ版連載当時は、雑誌掲載後に単行本化するという流れは確立しておらず、本作も単行本にまとめられたのは2002年。実に34年を経てからである。最初のB6版単行本には携帯ストラップの「おまけ」が付いていた。

    初出/講談社「ぼくら」(昭和43年8月号~昭和44年4月号・別冊付録「テレビコミックス」)
    書誌/講談社・B6版(2002年5月23日)
           文庫版(2010年)

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 31年の歴史に幕……講談社の幼児誌「げんき」が休刊を発表
    商品・物販, 経済

    31年の歴史に幕……講談社の幼児誌「げんき」が休刊を発表

  • 仮装用卒塔婆にまさかの情操教育 弟の本気がホラーすぎた
    インターネット, おもしろ

    仮装用卒塔婆にまさかの情操教育 弟の本気がホラーすぎた

  • 危険なテレビ裏に突撃する我が子 近寄らせないために「化け物」を仕掛けた結果
    インターネット, おもしろ

    危険なテレビ裏に突撃する我が子 近寄らせないために「化け物」を仕掛けた結果

  • 【体験レポ】「落とし物:黒い封筒」を開封してみた 自宅で本当に心霊現象が起きる?一夜のゾク体験
    エンタメ, 映画

    【体験レポ】「落とし物:黒い封筒」を開封してみた 自宅で本当に心霊現象が起きる?…

  • 怨念渦巻く家で、ナダルと村重杏奈が「リフォームホラーハウス」に挑む
    TV・ドラマ, エンタメ

    一軒家を魔改築する「リフォームホラーハウス」、MBSテレビで放送

  • 主人公(プレイヤー)
    ゲーム, ニュース・話題

    転生したらハムスターだった件 三姉妹に甘やかされる恋愛ゲー「ハムコイ」爆誕

  • 愛犬の誕生日に“狂気のケーキ”を手作り ホラーすぎて家族が悲鳴
    インターネット, おもしろ

    愛犬の誕生日に“狂気のケーキ”を手作り ホラーすぎて家族が悲鳴

  • 家中に出没する「謎の生き物」……10歳息子の力作に仰天
    インターネット, おもしろ

    家中に出没する「謎の生き物」……10歳息子の力作に仰天

  • ホラー映画のワンシーンにしか見えない
    インターネット, おもしろ

    仄暗い廊下の奥から老女が迫る……!「トラウマ級」の鬼ごっこ写真

  • 車の中に潜んだペニーワイズ!売りに出したあとで気づいたうっかりミス
    インターネット, おもしろ

    車の中に潜んだペニーワイズ!売りに出したあとで気づいたうっかりミス

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      人気アニメ「呪術廻戦」に酷似したスマホゲーム「特級呪術師」が配信され、SNSで物議を醸しました。公式…
    2. 「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      東映は12月25日、11月に発表していた新番組「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」について、202…
    3. テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」を提供するEmurasoftは12月23日、公式サイトのダウン…

    編集部おすすめ

    1. 宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚歌劇団は12月26日、宙組が東京宝塚劇場で上演している公演について、主要な出演者の体調不良により公演の実施が困難な状況が続いているとして…
    2. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    3. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    4. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    5. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト