「うちの本棚」、今回はモノクロテレビ時代の伝説のホラードラマ『恐怖のミイラ』のコミカライズをご紹介します。作画を担当したのは楠 高治。桑田次郎のアシスタント時代には『8マン』の最終回を代筆していました。
本作はモノクロテレビ時代のホラードラマ『恐怖のミイラ』のコミカライズ作品である。作画を担当したのは、桑田次郎のアシスタントとしても知られる楠 高治。楠は『遊星仮面』などのコミカライズも手がけていた。
連載は講談社の「少年クラブ」1961年9月号~12月号付録。テレビドラマは全14話で、ホラージャンルのテレビドラマの先駆とも言われている。
ストーリーの概要は、考古学者の板野博士が、助手の牧村とともにミイラを復活させる薬を完成させるが、復活したミイラによって博士は殺されてしまう。またミイラは博士の娘・汀(なぎさ)を、自分の生きていたときの女王パトラと思い、何度となく汀を求めて襲ってくる。
ミイラから汀を守る板野博士の妻の弟・雄作(コミカライズ版ではこの辺の関係がイマイチ説明不足である)が主人公とも思えるが、雄作、ミイラ、汀とストーリーの進行によって視点が移っていくところもある。
単に蘇ったミイラが超人的な力で街を恐怖に陥れるというだけではない、哀愁を帯びた展開があるのもこの作品のミソ。戦前から人気のあった高垣 眸が原作を担当しているのがストーリーに深みをもたせた理由だろう。
楠の作画は、初期の桑田次郎と言われたら信じてしまいそうなくらい似ているが、人物の描写(特にポーズや表情)などに漫画的な画一的なものがあって二次元的。ただコマ割りやテンポなどはよく、中だるみなく一気に読める。ラストも余韻のある感じでまとめてあるが、コマ割り的にはあっさりしていた。
併録の『ジロー』は楠のオリジナル。ウィキペディアによると『旋風児ジロー』が正式タイトルのようだ。初出は「少年クラブ」の1961年3月号。
こちらはより桑田次郎の作品に近い雰囲気。内容は当時の日本映画で流行っていた無国籍もの的な作品で、西部劇のような現代ドラマ。短編としてよくまとまっていて、佳作といえる。
原作ドラマは特撮やホラーのマニアを中心に評価も高くいのだが、そのコミカライズ版である本作は埋もれている感が強いのが残念である。
初出:講談社「少年クラブ」1961年9月号~12月号付録
書 名/恐怖のミイラ
著者名/楠 高治(原作・高垣 眸)
出版元/サン出版
判 型/新書判
定 価/450円
シリーズ名/COMIC PET
初版発行日/昭和56年10月3日
収録作品/恐怖のミイラ、ジロー、表紙ギャラリー
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)