おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】182回 恐怖のミイラ/楠 高治(原作・高垣 眸)

恐怖のミイラ「うちの本棚」、今回はモノクロテレビ時代の伝説のホラードラマ『恐怖のミイラ』のコミカライズをご紹介します。作画を担当したのは楠 高治。桑田次郎のアシスタント時代には『8マン』の最終回を代筆していました。

【関連:181回 ウルトラマンタロウ/石川 賢】

恐怖のミイラ


  • 本作はモノクロテレビ時代のホラードラマ『恐怖のミイラ』のコミカライズ作品である。作画を担当したのは、桑田次郎のアシスタントとしても知られる楠 高治。楠は『遊星仮面』などのコミカライズも手がけていた。
    連載は講談社の「少年クラブ」1961年9月号~12月号付録。テレビドラマは全14話で、ホラージャンルのテレビドラマの先駆とも言われている。

    ストーリーの概要は、考古学者の板野博士が、助手の牧村とともにミイラを復活させる薬を完成させるが、復活したミイラによって博士は殺されてしまう。またミイラは博士の娘・汀(なぎさ)を、自分の生きていたときの女王パトラと思い、何度となく汀を求めて襲ってくる。
    ミイラから汀を守る板野博士の妻の弟・雄作(コミカライズ版ではこの辺の関係がイマイチ説明不足である)が主人公とも思えるが、雄作、ミイラ、汀とストーリーの進行によって視点が移っていくところもある。
    単に蘇ったミイラが超人的な力で街を恐怖に陥れるというだけではない、哀愁を帯びた展開があるのもこの作品のミソ。戦前から人気のあった高垣 眸が原作を担当しているのがストーリーに深みをもたせた理由だろう。
    楠の作画は、初期の桑田次郎と言われたら信じてしまいそうなくらい似ているが、人物の描写(特にポーズや表情)などに漫画的な画一的なものがあって二次元的。ただコマ割りやテンポなどはよく、中だるみなく一気に読める。ラストも余韻のある感じでまとめてあるが、コマ割り的にはあっさりしていた。
    併録の『ジロー』は楠のオリジナル。ウィキペディアによると『旋風児ジロー』が正式タイトルのようだ。初出は「少年クラブ」の1961年3月号。
    こちらはより桑田次郎の作品に近い雰囲気。内容は当時の日本映画で流行っていた無国籍もの的な作品で、西部劇のような現代ドラマ。短編としてよくまとまっていて、佳作といえる。
    原作ドラマは特撮やホラーのマニアを中心に評価も高くいのだが、そのコミカライズ版である本作は埋もれている感が強いのが残念である。

    初出:講談社「少年クラブ」1961年9月号~12月号付録

    書 名/恐怖のミイラ
    著者名/楠 高治(原作・高垣 眸)
    出版元/サン出版
    判 型/新書判
    定 価/450円
    シリーズ名/COMIC PET
    初版発行日/昭和56年10月3日
    収録作品/恐怖のミイラ、ジロー、表紙ギャラリー

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】183回 ジャガーの眼/たつみ勝丸(原作・高垣 眸)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】165回 遊星仮面/楠 高治

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 善意の通報が“誤報”に変わるAI時代 女川町のクマ騒動が示した危険性

      善意の通報が“誤報”に変わるAI時代 女川町のクマ騒動が示した危険性

      宮城県女川町が11月26日、公式Xで発信した「クマ出没情報」が、後に「生成AIによるフェイク画像」に…
    2. 派手なピンクに「マヂでアゲ」……道端に突如現れた「ギャルすぎる工事看板」が話題

      派手なピンクに「マヂでアゲ」……道端に突如現れた「ギャルすぎる工事看板」が話題

      「とても茨城県」というつぶやきとともに、Xに投稿された一枚の写真。そこには、一般的な工事現場のイメー…
    3. この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      学生時代、入りたくても入れない「聖域」のような場所だった職員室。その風景を再現し、自由に探索できる展…

    編集部おすすめ

    1. ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応

      ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応

      バーチャルタレント事務所「ホロライブプロダクション」を展開するカバー株式会社は公式Xにて11月25日、同社のバーチャル空間プロジェクト「ホロ…
    2. エビの代わりに「パイの実」投入!ロッテ公式が送るエビチリアレンジに目を疑う

      エビの代わりに「パイの実」投入!ロッテ公式が送るエビチリアレンジに目を疑う

      ロッテは自社商品の各ブランドサイトで、アレンジレシピを公開しています。その中に「パイの実」をエビチリソースと卵で炒め合わせた「チリ玉パイの実…
    3. 100tハンマー

      伝説のコンビを追体験 40周年「シティーハンター大原画展」上野で12月28日まで開催

      「シティーハンター」連載開始40周年を記念した原画展「シティーハンター大原画展~FOREVER, CITY HUNTER!!~」が、11月2…
    4. 宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      11月22日午前、X(旧Twitter)のトレンドに「宙組公演特別メニュー」が一時浮上し、ファンの間で大きな話題となりました。きっかけとなっ…
    5. ミラノで開催「IQOS Curious X Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      ミラノで開催IQOS X SELETTI「Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      フィリップ モリスが、イタリアでイベント「Sensorium Worlds」を開催。今回は、この壮大なイベントの模様とともに「IQOS To…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト